近年、社会では特定の相手につきまとい行為をする、いわゆるストーカー行為が問題となっています。 残念ながら、現実社会の一部であるインターネット上でも、そしてこのfjでもこの手の話は起き、問題になることもあります。 彼らはその特定の相手の個人情報を集めていろいろなことを妄想し、エスカレートすると自分の妄想と現実世界との境界の区別が付かなくなり、相手に迷惑や被害を与えるのです。
ところで、これはfjとかインターネット上が特に危険だからこういうことに気をつけなければいけない、ということではありません。 逆に、いまだに「インターネットは仮想現実の世界だから」と、日常社会では公開していないような情報を不用意にばらまいているような場合に、面倒なことに巻き込まれることがあるようです。 たとえば、家の表札に自分の趣味や顔写真、誕生日や好みのタイプなどの個人データをおく人はほとんどいないと思いますが、自分のWebサイトにこのような情報をおく人は見受けられます。 同様にfjでも、そのような情報を不用意にばらまくべきではありません。これはfjももはや安全地帯ではなく、こういう問題に気をつけなければならなくなってしまった、ということではあります。
また、fj"だけ"で気をつけていても無意味です。 上の例でいえば、表札に書いていなくても家の塀や壁に書いてあれば同じというわけでして、たとえばシグニチャにURIを入れていたり、自分で管理しているWebサイトにのせているメールアドレスがfjでつかっているものと共通だったりする場合などで不用意な個人情報の公開を行っていると、全文検索エンジンなどで調べられることにより、せっかくしている対策も無意味になる場合があります。
ということで、意味のある対策を行うためには、fjに限らず、広く自分がインターネット上に公開しているデータについての注意を払うことが必要です。そのため、この文章ではfjという枠をはずして、あえてインターネット上で公開する情報一般について、気をつけるべき点をあげていきます。
さて、具体的につきまとい行為をするような相手を防ぐには、そして実際につきまとわれた時には、いったいどうすればよいのでしょうか。
まずはできるだけ防ぐためのことを考えてみます。 この手の問題を避けるには、基本的には公開している情報は、何かしら悪用されるかもしれない、という性悪説的思考で物事をすすめる必要があります。こちらに何の落ち度もない場合ですら、相手は忍び寄ってくるかもしれません。
そのための究極の対策方法というのは、実はどこにも情報を発しない、というものです。 誰かが勝手にあなたの情報を流さない限り、情報がインターネット上を流れることはないでしょう。
とはいえ、それではあなたにとって必要な情報のやりとりもできません。 実質的には、そのデメリットとメリットを比べて、メリットがあるなら使えばいいということです。
もちろん、デメリットになりそうなことは、工夫によって減らしたり、対応したりできるものもあります。
まず原則として、不用意な個人情報の開示はしない、というのは重要です。 といっても、どこまで公開していいかは時と場合による話なのですけど。 たとえば、あなたがオークションサイトを使用するなら、多くの場合住所なり電話番号なりの情報も相手に知らせなければならないでしょう(場合によっては、局留めなどの方法もありますけど、その場合は相手に何らかの方法でこちらを信用してもらう必要があります)。
違法なことをしない限り、 (電話帳に名前を載せている場合はそう限りませんが) 実名を出しているだけでは変な相手から何らかのはたらききかけがメール以外で直接くることはほとんどないでしょう。 といっても、名前が女性(か、女性であることを想像させるもの)の場合は変なメールがそうでない場合に比べてきやすいかもしれませんが、それは残念ながらハンドルをつかっていても送ってくる人は送ってきます。
また、メールアドレスを偽る、というのも最良というわけではありません(確かに、メールはこなくなるかもしれませんが)。 不快かもしれませんが、メールは届くようにしておき、もしも特定の相手から嫌がらせのメールがきたときも削除せずに保存しておくと、後々に相手の行動について必要な部署に伝えるときに添付すると、(具体的に伝えやすくなるので)適切な対応をとってもらいやすくなり、役に立ちます。
また、自分が管理している掲示板にその手の書き込みがあった場合も、ログを保存しておくとか、相手方IPアドレスを保存しておくことにより、問題の解決がしやすくなります。
一方、たとえば自分のWebサイトに、自宅の住所なり電話番号なりを記載していたりするとかなり危険です。 この手の情報は伝える必要のある、最小限の範囲にしか知らせない方がよいでしょう。 もしあなたが、そういう情報を載せてしまったために無言・いたずら電話などに悩んでいるなら、そちらを消したあと、NTTなどに相談して電話番号を変更してもらうとよいでしょう。 それでもかかってくる場合は、情報の漏れ口は別のところ、と問題を切り分けることもできます。 最近は(もっぱら注意のためではなく、出会い系サイトへのお誘いspamをさけるために)少なくなりましたが、携帯電話で電話番号の一部をメールアドレスとして使う設定にしている場合はかえた方がよいでしょう。
特定のメーリングリストでは、参加者以外へも情報を提供するために、メーリングリストでの議論そのままの内容を公開している場合があります。 そのような場合、多くの場合はそのメーリングリストの運営ポリシーによって公開されている旨(たとえば加入時などに)伝えられているはずなのですが、もしあなたがそれに気づかず、さらにメール用とそれ以外でシグニチャを使い分けていて、メール用の方にはより詳しい個人情報が入っていた、という場合には意図しない範囲に、意図しなかった情報が流れてしまうかもしれません。 あなたがその相手に伝える必要のないと考える相手にまで、個人情報を知らせる必要はないのです。
しかし、これらの対策をしていても被害にあってしまったらどうすればよいでしょうか。 これは基本的にケースバイケースなのですが、とりあえずはいくつかの一般的な方針をあげておきます。
まず、毅然とした態度をとる、ということです。 相手に妄想癖のある場合、こちらが完全に否定してもまだ勘違いした行動を続ける場合すらありますので、明確に意志を伝える必要があります。
もしも不快なメールが何度も届いた場合、きっぱり不要である旨を伝えましょう。 それでも続く場合、自分と相手のプロバイダの担当部署にメールを添付して、その旨を伝えましょう。 たとえば自分のプロバイダでは、その相手からのメールをいっさい受け取らずに拒絶する設定をしてくれるかもしれませんし、相手のプロバイダは二度とそういうようなことをしない、という言質をとってくれるなり、アカウントの抹消なりという対応をしてくれるでしょう。 もちろん、二度としないといいながらもさらに続くようであれば、再度連絡をとりましょう。 さらに繰り返される場合は、警察の担当部署にCc:などで同報するとよいかもしれません。
また、多くのニュースリーダやメーラでは、特定の相手からの記事なりメールなりを受け取らない設定にすることができます。
誰かに相談する、というのもできるならした方がよいです。 1人で悩むよりも、よい解決方法が見つかるかもしれませんし、相談することによって多少の心の余裕ができるかもしれません。
もしも物理的に(たとえば自宅周辺を訪れるなど)つきまといを始めたら、警察に通報しましょう。 現在は「ストーカー行為等の規制に関する法律」が制定されていますので、相手の行動がこの法律に触れるなら、自分だけで悩む必要はありません。 もちろんこの法律は、脅迫や執拗な性的嫌がらせが続く場合も適用されますので、しかるべき条文を読んで判断しましょう。
繰り返しになりますが、この手の問題は、いくら本人が気をつけても、相手によっては関係なしにつきまとい行為を行ってくる場合があります。 普段から不要な個人情報は流さないように注意しつつ、つきまとわれた場合は、自分だけで対応するのではなく、公的な手段を使いましょう。