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  Beat 13 《Farewell song》

 翌日、第一学生ホールのいつもの席に、ジャイブは肉まんを片手に学生新聞部発行の『学園天国』という学園新聞を広げて座っていた。そこには、昨夜のカタストロフィーの新入生歓迎ライブの火事に関する記事が、一面に取り上げてあった。出火の原因を、溢れんばかりの電気コードの一つが、何等かのはずみで暗幕に引火したのではないかと書いている。中々良い線を突いているな、とジャイブはほくそ笑んだ。しかし、その何等かのはずみが、悪魔の仕業とは夢にも思うまい。被害状況は、第二学生ホール全焼・カタストロフィーのメンバー全員行方不明。(焼死? 死体は現場から発見されず。)・観客達に死傷者は無し。(学生治安部・夜間警備研究会の活躍による所が大きい!)

『ふうん。まあ、こんな所だな。おおっ、旨いよ、この肉まん麗美は中華料理の天才だな。』

『そう、ありがと☆』

麗美は鳥龍茶を飲みながら返事をした。昨日の歓迎会で食べた中華料理は、お世辞にも旨いとは言えなかった。それを旨い旨いと言ってがっつく部の連中の味覚が信じられなかったのだ。

『ところでBJはどう?』

ジャイブは口をモゴモゴさせながらエリコトルに話しを振った。BJとは、学園非公認の『トゥルースアイ』と呼ばれる準クラブが発行している緑紙の新聞である。BJとはブラック・ジャーナリズムという新聞名の略である。エリコトルは麗美から貰った肉まんを奇麗に平らげてから返事をした。

『麗美さん、本当に美味しいですよこの肉まん。昨日の中華料理店のやつとは天と地の差ですね。さて、BJですが、相変わらず眉唾な事が沢山書かれてますね。』

由香里お嬢様、学園長と密談。シズマ重工が第二学生ホールの再建費全額負担! 引き代えに、カタストロフィーのメンバー全員失踪を黙認。

学園マフィア『ラビットアイ』が裏で手を引いていた?

謎の準クラブ『愉快犯心理研究会』の影?

由香里お嬢様、ヘビメタの次は賞金稼ぎにお熱? 賞金稼ぎ研究会に幽霊部員として入部を決意。多額の部費が振り分けられる模様。

『はあ、羨ましいですね。うちは、新入部員は麗美さんだけですから。余り期待出来ませんね。おや、部長が来ましたよ。』

エリコトルは新聞から顔を上げた。何時に無く、部長は上機嫌のようだ。

『皆、臨時収入が入ったのよ!』

そう言ってフリーシアは分厚い白い封筒をテーブルの上に置いた。

『50万よ☆』

缶コーヒーを飲んでいたジャイブが思わず吹き出した。

『なっ! 50万! 一体どうやって……。』

『それがね、正気を取り戻した由香里お嬢様に、これは貴方が預かり知らぬ出来事ですからお返ししますって、昨夜のサバトの写真とネガを渡したら、代わりにこの白い封筒を渡されたのよ。』

『それって揺すりって言いませんか?』

『何言ってるの麗美ちゃん。そんな気なんて全然無かったのよ。それに、くれるっていうんですから、断わるのも失礼でしょ。うんうん。』

『部長には叶わないよな!』

麗美・ジャイブ・エリコトルが同時に同じセリフを吐いた。
 しかし、この時、オカルト研の今年度の部費振り分けが、その額を遥かに上回る金額であろうとは、部員誰一人として予想だにしなかったのであった。

END 

 

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