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Last Update = 2013.10.22
4月1日生まれの子どもの学齢

 あなたが小学生のとき、あるいはあなたがいま小学生のお子さんをお持ちだったら、4月1日生まれの人だけ上の学年で、4月2日生まれの人から下の学年になるのを不思議に思ったことはありませんか?
 なぜキリがいい4月1日生まれの人から学年が始まらないのでしょう。
 実は、学齢を定めている学校教育法にその謎を解くカギがあります。

学校教育法(昭和22年法律第26号)
第十七条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。〈後略〉
 保護者は、子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。
 〈第3項略〉

 ここでいう「満六歳に達した日」というのはどのような意味でしょうか。これを知るには、年齢の計算方法を定めた法律を見る必要があります。

年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号)
 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
 〈第3項略〉

 年齢計算ニ関スル法律第1項によると、年齢は出生の日から起算するということですから、例えば、平成20年4月1日生まれの人の年齢は、平成20年4月1日から起算することになります(民法には期間の初日が1日の途中から始まる場合はその日は算入しないという初日不算入の原則の規定があるのですが、年齢に関してはこの法律により出生の日(=初日)を算入することになります。つまり、午前零時に生まれても、午後11時59分59秒に生まれても、年齢はその出生の日から数えます)。
 そして、同法第2項によると、民法第143条の規定を準用するということになっていますから、これを見る必要があります。

民法第一編第二編第三編(明治29年法律第89号)
(暦による期間の計算)
第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

 年齢でいう満6歳というのは、出生から6年*1の期間が経過しているという意味です。年齢は年単位で計算しますから、民法第143条第1項により、暦に従って計算します。*1:現在では徐々に使われなくなってきていますが、刑事事件などでは現在でも満6歳のことを正式な表現を用いて「6年」と表記していることもあります。
 民法第143条第2項によれば、期間は最後の年においてその起算日に応当する日の前日をもって満了することになりますので、例えば平成20年4月1日生まれの人が満6歳になる場合、6年の「期間」(=満6歳)は、「最後の年」(=出生から6年目の平成26年)においてその「起算日」(=平成20年4月1日)に「応当する日」(=平成26年4月1日)の「前日」(=平成26年3月31日)をもって満了する、すなわち満6歳に達することになります。
 この「満了」というのは、その日(=平成26年3月31日)が完全に終わることで成立します。極めて観念的なことで分かりにくいのですが、3月31日の午後11時59分59秒の次の1秒が終わり、深夜「12時」*2になる瞬間に満了するのです。これはすなわち4月1日午前零時であり、4月1日の始まりとなるわけで、3月31日の深夜「12時」と4月1日午前零時は事実上はまったく同一の瞬間であるはずのものですが、あくまでも「満了」したのは「3月31日が終了したこと」によるものであり、「4月1日が開始したこと」によるわけではないので、「出生から6年が満了した日」=「満6歳に達した日」は「平成26年3月31日」ということになります。*2:ここで「午後12時」とせず「深夜『12時』」と表記したのは、この時刻は正式には「午前12時」と称するのが正しいとする説があるためです。

 そこで、再び前掲の学校教育法第17条を見ることになります。「満六歳に達した日の翌日」とは、先ほどの「平成20年4月1日生まれ」の例では、前述のとおり「満6歳に達した日」が「平成26年3月31日」ということになりますから、その「翌日」は「平成26年4月1日」です。
 さて、「翌日以後」というのは「以」という表記がありますから、当然「翌日」も含まれます。先ほどからの例の場合ですと、「平成26年4月1日以後」ということになります(当然「平成26年4月1日」が含まれます)。
 では、「平成26年4月1日以後」の「最初の学年の初め」とはいつでしょう?
 学年を定めている法令を見る必要が出て来ました。

学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)
第五十九条 小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
第七十九条 〈中略〉第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する。〈後略〉

 これによると、学年は「4月1日」に始まることになります。先ほどからの例ですと、「平成26年4月1日以後」の「最初の学年の始め」は「平成26年4月1日」ということになります。

 同様に、3月31日生まれと4月2日生まれも計算してみましょう。
出生の日(起算日)平成20年3月31日平成20年4月1日平成20年4月2日年齢計算ニ関スル法律第1項
6年目における起算日の応当日平成26年3月31日平成26年4月1日平成26年4月2日年齢計算ニ関スル法律第2項、
民法第143条第2項本文
6年の満了日(応当日の前日)
=満六歳に達した日
平成26年3月30日平成26年3月31日平成26年4月1日
満六歳に達した日の翌日平成26年3月31日平成26年4月1日平成26年4月2日学校教育法第17条
以後の最初の学年の始め平成26年4月1日平成27年4月1日学校教育法施行規則第59条

 保護者には前掲の学校教育法第17条により「最初の学年の初め」から子を小学校に就学させる義務が課されます。この例ですと、平成20年3月31日生まれや平成20年4月1日生まれの子どもの保護者は平成26年4月1日から、平成20年4月2日生まれの子どもの保護者は平成27年4月2日から、それぞれ就学させる義務を負うのです。
 この結果、4月1日生まれの人は、3月31日生まれまでの人たちと一緒に、4月2日生まれの人より上の学年として小学校に入学するのです。

 同様に、中学校の学齢について計算してみます。
出生の日平成20年3月31日平成20年4月1日平成20年4月2日年齢計算ニ関スル法律第1項
満十二歳に達した日平成32年3月30日平成32年3月31日平成32年4月1日年齢計算ニ関スル法律第2項、
民法第143条第2項本文
満十二歳に達した日の属する学年の終わり
=小学校の課程を修了した日
平成32年3月31日平成33年3月31日学校教育法施行規則第59条、
学校教育法第17条
小学校の課程を修了した日の翌日
=以後の最初の学年の始め
平成32年4月1日平成33年4月1日学校教育法施行規則第79条により準用する
学校教育法施行規則第59条
満十五歳に達した日の属する学年の終わり平成35年3月31日平成36年3月31日学校教育法施行規則第79条により準用する
学校教育法施行規則第59条

 よって、小学校及び中学校ではともに、一つの学年は4月2日〜翌年4月1日生まれの人で構成されることとなるのです。

注:文中では一般的な手続きの流れを基準としておりますので、事情によってはこれと異なることがあります。また、文中の事例は、当該年月日時点の法令に関わらず、本ページ作成時点の法令が適用されるものとみなして記載しておりますので、法令の改正等により異なる結果となることがあります。

〈関係法令〉
民法第一編第二編第三編(明治29年法律第89号〈官報4月27日号外〉)
・年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号〈12月2日〉)
・学校教育法(昭和22年法律第26号〈3月31日〉)
・学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号〈5月23日〉)

このページの沿革平成13年7月14日作成
平成25年10月22日改訂
条文最終基準日平成25年9月1日
条文確認典拠法令データ提供システム(総務省行政管理局)

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