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Last Update = 2022.9.15
行政文書開示請求をしてみた話・福島第一原発3号機の爆発は水蒸気爆発だった?

 東日本大震災(平成23年東北地方太平洋沖地震)の甚大な被害のうちの一つに福島第一原発(東京電力株式会社福島第一原子力発電所)の事故があるが、その中でも2011年3月14日に発生した3号機原子炉建屋の爆発はひときわ衝撃的であった。
 この爆発は、一般的に「水素爆発」が起きたと報道されており、東京電力も事故当初から「水素爆発が発生した可能性が考えられます」と公表している。
 しかし、筆者は、たまたま行政文書開示請求をした陸上自衛隊の公文書の中に「水蒸気爆発」との記載を発見した。
 この記載が、陸上自衛隊が公文書作成当時の2011年8月30日に至ってもこの爆発を「水蒸気爆発」であると見立てていたということを表すものなのか、それとも単なる誤記なのか、筆者が知るすべはない。
 とはいえ、このままではこの史料が滅失してしまうことは想像に難くない。
 そこで、後世においても客観的な検証ができるようにするため、ここに紹介することとした。

 まずは問題の公文書を見てみよう。

 この公文書は、陸上自衛隊大宮駐屯地業務隊長作成の平成23年8月30日付け「公務災害発生報告書」(大宮駐業第1205号)という3枚からなる書面であり、筆者が行政文書開示請求により2012年に開示を受けたものである。
 なお、筆者はこれとほぼ内容の大宮駐業第1206号と大宮駐業第1207号の開示も受けている。
 ちなみに筆者がどうしてこんな行政文書開示請求をしたのかというと、当時、福島第一原発の事故に起因した労働災害(労災)や公務災害に関心を抱いたので、関連する公文書があるのではないかと思ったからである。

公務災害発生報告書
(法定第3号)
1 災害の概要
原子力災害派遣中の福島原子力発電所3号機建屋の水蒸気爆発による■■■■■■■■■■
2 災害を受けた者
所属(駐屯地) 中央特殊武器防護隊(大宮)
ふりがな ■■■■■■■■■■
官職 氏名 ■■■■■■■■■■
生年月日(年齢) ■■■■■■■■■■
3 補償を受ける者
現住所 ■■■■■■■■■■
ふりがな
氏名(続柄) 本人
生年月日
4 災害の内容
発生日時 平成23年3月14日(月)11時01分頃
発生場所 (福島原子力発電所3号機付近)
傷病名
 傷病名:■■■■■■■■■■
 傷病の部位:■■■■■■■■■■ 程度 ■■■■■■■■■■
(病名決定にかかる医療機関名)
 (放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター病院)

 1枚目の「1 災害の概要」欄に「3号機建屋の水蒸気爆発による」という記載が見られる。

(3)災害発生の状況
 平成23年3月14日(月)■■■■■■■■(以下「被災者」という。)は、中特防行原命第1−8号(23.3.140910@)に基づき、福島原子力発電所緊急事態対処のため、福島第1原子力発電所に対する給水支援給水隊 ■■■として参加した。
 1000頃、集結地である大熊町役場から福島第1原子力発電所ゲートに到着し、ゲート係員から進入許可を受け、中央特殊武器防護隊長(以下「隊長」という。)の乗車する小型車両(操縦手:■■■ 車番03−5276)、水タンク車1号車(車長 ■■■■ 操縦手 ■■■■ 車番31−1047)、水タンク車2号車(車長 ■■■■ 操縦手 ■■■■ 車番31−1066)(以下「車両」という。)の順番で同発電所敷地内に進入した。
 第3号炉へ向かう途中、管理事務所において、当初装着していた防護マスクから防護性能の高い専用防護マスクに交換し、機密点検を実施し、1030頃、普通乗用車に乗車した東京電力社員に続いて、前記車両編成の順番で第3号炉建屋へ向け前進した。
 1100頃、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■第3号炉建屋内で水蒸気爆発が発生し、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■したことにより受傷した。

 2枚目の「6 災害の発生の状況」の「(3)災害発生の状況」欄に「第3号炉建屋内で水蒸気爆発が発生し」という記載が見られる。

(5)災害発生の原因
 本災害は、福島第1原子力発電所第3号炉建屋内で水蒸気爆発が発生した際、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■したことにより発生したものと思料する。

 2枚目の「6 災害の発生の状況」の「(5)災害発生の原因」欄に「福島第1原子力発電所第3号炉建屋内で水蒸気爆発が発生した際」という記載が見られる。

 この公文書は、1枚目の下部に「保存期間:10年」と記載されているので、本稿を執筆した2022年の時点では、既に廃棄されてしまっている可能性が高い。

 なお、政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会は、平成24年7月23日付け最終報告書において、「3号機R/Bの爆発は、1号機と同様に、水蒸気爆発や粉じん爆発であった可能性について否定され、可燃性ガス爆発によるものと考えられる。」(Uの2の(5)のaの(b)(69ページ))、「3号機のプラント関連パラメータによれば、3号機R/B爆発前後で、原子炉圧力及びD/W圧力の低下が認められるため、例えば、爆発の影響で圧力容器や格納容器に貫通する配管の一部が破損したことなどが考えられるものの、爆発後も、依然として、原子炉圧力及びD/W圧力が大気圧の数倍となる数値を示しており、圧力容器又は格納容器内で、3号機R/B上部を粉砕するほどの水蒸気爆発が起こった可能性は否定される。」(脚註146(69ページ))として、水蒸気爆発を否定している。「1号機と同様に」とあるので、1号機についての記載を参照してみると、「まず、水蒸気爆発は、水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化して発生する爆発現象であるが、〈略〉圧力容器下部プレナムに残った水や格納容器下部ペデスタル部に溜まった水に溶融燃料が落下して水蒸気爆発が起こる可能性については否定できない。しかし、圧力容器内や格納容器内で水蒸気爆発が生じ、本件のようなR/B上部を粉砕するような爆発が生じた場合には、1号機プラント関連パラメータによれば、〈略〉原子炉圧力及びD/W圧力のいずれも大気圧の数倍高い圧力を保持していたことと整合しない。また、圧力容器や格納容器内で水蒸気爆発が起こり、R/B上部もろとも粉砕するような爆発に至った場合には、付近の放射線量も飛躍的に上昇すると考えられるが、そこまでの現象は認められない。したがって、1号機R/Bの爆発は、水蒸気爆発によるものではなかったと考えるのが自然である。」(Uの2の(3)のaの(b)(47ページ及び48ページ))としている。参考にされたい。

このページの沿革令和4年9月15日作成

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