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1. 「新案」 シャープに見える!!
   火星、木星、土星、観察に青色バックライト

プロローグ

木星観察装置にいくまえに、基礎勉強。
眼は色を見分ける能力があります。
「青い紙」と感じるのは、青色を反射し、その他の色を吸収しているからです。
「白い紙」は全ての周波数の色を反射しているわけですね。
小学校のお絵描きの時間に、絵の具の三原色は、「赤」「青」「黄」と習いました。
3色合成すると「黒」になりましたね。
これは、正しくは「マゼンタ」 「シアン」 「イエロー」です。
一方、光の三原色は、「赤R」「青B」「緑G」で、
これら3色合成すると「白色光」になります。



これから先の話に於いて、判りやすくする為に、
木星の茶色に見える縞や大赤斑を「赤」、
フェストーンや縞の輪郭に見える灰色の部分を「青」、
帯の部分を「白」、として進めます。


木星は太陽の光を反射しているものですが、
それは、部分的に様々な色の光を発しているとも言えます。
その光を望遠鏡を使って眼で観察しているわけですね。
縞や大赤斑のコントラストを上げるには、「青色フィルター」が有効です。
色フィルターは特定の周波数の光を透過や吸収するものです
大赤斑の「赤い光」は「青色フィルター」を透過してこないので、
暗くなってコントラストが上がります。
しかし、逆にフェストーンの「青」は見にくくなります。
なぜなら、帯の「白」部分が「青色フィルター」によって、青色の光のみ透過され、
「青い帯」の中の「青いフェストーン」状態になるからです。
数字で表すと、
「フェストーン」は太陽からの青色光を「1」反射し、
「帯」は赤色「1」青色「1」緑色「1」を反射しているとして
「青色フィルター」を通すと、「フェストーン」と「帯」は同じ青色になってしまいます。

(ことわり 説明の単純化の為に、厳密には実際と違うものです)

フィルターの弊害として、シャープネスと光量が落ちるということがあります。
たとえ一枚のフィルターにおいても反射や屈折現象が起きているのです。
縞の中の白斑を観察していて、そのことは確認しています。
天頂プリズムも使いたくないですね。
でも、楽な姿勢で観察出来ることも「見え方」に影響するかもしれません。

木星や土星を観察するとき、何倍で見ていますか?
100倍〜300倍で見るのがシヤープですね。
でもちょっと明るすぎて「白とび」状態と感じませんか。
良い望遠鏡ほど背景は暗く、視野中心にある小さな木星との明暗差は大きいものです。
眼は部分的に極端に明るい中のさらにその表面模様を見極めようとガンバッテいるのです。
倍率を上げて拡大すれば眼にやさしい明るさとなりますが、像がボケてしまいます。
眼にやさしいコントラスト、且つ、表面模様が見やすいコントラスト

づづきは次回に。


青色ライティング装置GA4利用

これが何故効果があるのか、理屈は後にして、その構造を紹介します。



ガイド用GA4の照準スクリーンを取り外し、
下からの青ライトが視野一面を照らすように改造しています


赤色LEDライト部を取り外し、 その替わりに、
ペンライト(単5X2本)の豆球をブルー高輝度LEDに取り替えて、
さらにブルーフィルムで光の拡散と減光をほどこし、光量調節ボリゥムを取り付けて、
LEDライト部ソケットに差し込んで使っています。
3倍バローレンズ部は取り外してあります。
アイピースは10mm以下の短焦点を使えば、視野全面を照らすことができます。

明るさは暗いぐらいから明るく眩しいくらいまで調節出来るほうが良いでしょう。
標準装備の赤色LEDライトを青色に取り換えて水銀電池での使用では光量不足でした。

この装置は、もちろん望遠鏡の性能をUPさせるものではありません。
しかし、表面模様が楽にシャープにに見えるようになりまた
カラー合成の効果、カラー情報量の効果、網膜の光感度調節の効果、脳の錯覚、など、
複雑に関係していると思われます。

最初にGA4を使うことによる弊害を述べておきます。
ひとつには、内径が細いうえ内部形状が複雑で反射光が起きやすいこと。
ひとつは、ハーフミラーによってゴースト像が発生するかもしれないこと。
しかしながら、そんなデメリット以上に、”見やすくなる”メリットが大きいです。


青色ライティング装置クリップライト利用



ホームセンターで見つけたLEDクリップライト(ブルー)を使います。
そのままでは明るすぎるので、青セロハンを被せたり、ボリゥムを付けたり工夫しましょう。
ニュートンだと接眼部内で中央遮蔽に重なる位置でアイピースに向けてLEDを光らせます。
明るすぎる場合は、筒先から主鏡に向けて光らせるなど角度を変えてみます。
口径や拡大倍率によって、最適な青ライトの明度が違ってきますのでいろいろ試してください。
シャープに見える低めの倍率で使うのが効果的です。
縞模様の輪郭がクッキリし、フェストーンが青くハッキリ見えてくるでしょう。


月と青色バックライト

月を青色バックライトで見てみましたが、これも見やすくなりますね
ちょうど、ディスプレイ画面の色温度を上げたように青みがかります。
今お使いのディスプレイの色温度はいくらに設定されていますか。
室内灯との関係もあるでしょうが、9000°と6000°を切り替えて
みてください。どちらのほうが鮮やかにかんじますか、どちらのほうが
画面に映った情報を認知しやすいでしょうか。 個人差もあるでしょうし、
関西人関東人でも違うかもしれません。

三菱やNECのディスプレイにはファインピクチャーモードの機能があります。
これは輝度、彩度、色相を調整し、色温度を9300°に設定されます。
それに似た感じになります。

眼は、青い光のほうが鮮明に解像度高く感じ見ることが出来るのかも
しれません。カラー心理学では、青色は集中力が高まるといわれています。
キャッチャーミットは青色のほうがコントロール良くなる結果もあります。
月面の細かな模様を凝視するときに、青系色のほうが良いのではないで
しょうか。

地球上から月を観察する場合、本来月から発せられた青色光は大気中で
拡散してしまい、赤系に偏った月を見ています。 色情報が偏ってしまい、
同系色トーンで見ているようなものです。(極端な言い方ですが)これに、
減衰した青色光を補充し、カラーバランスを調整してやることで色情報が
豊富になって識別能力が高くなります
。まあ、もともと色の少ない
月面世界ではカラフルになるわけではありませんが。


明るさについて

まず基本的な疑問が生じますね。
ライトで照らして木星が眩しく白飛びしないのか?
NDフィルターで減光したほうが見やすいのでは?
背景は暗いほうが良い望遠鏡というのが常識なのに?

確かに常識の逆をいく装置です。木星が白飛びすることはありません。
何故なら、眼の明順応作用があるからです。
太陽から遠距離にある木星表面は地球表面より当然暗いですね。
昼間の地上風景を望遠鏡で見ても、眩しくて白飛びすることは無いですね。
木星表面はもっと暗いのです。人間の眼は100万倍もの光度変化に
対応出来る感度調整機構を持っています。一瞬眩しいと感じても、
数秒〜数分の間にその明るさに順応してしまいます

ですから、木星表面の模様が真っ白になってしまうことはありません。
後々に説明する作用などによって、逆にコントラストが上がって見えます。
月を見ていて、眼を逸らしたときに残像が黒く見えることがありますね。
月を投影していた網膜上の視神経のみが明順応した為です。
背景を明るくすることによって、木星本体との明度差が少なくなります。
木星本体だけが眩しい状態が無くなります。
背景も適度に明るくしてやることによって、より自然に眼に負担無く、
細部まで見分ける能力をフルに発揮出来る明度に調整してやるのです


木星観察とは、背景を暗くして木星の輪郭形状を観察するのでは無く、
本体内の模様を観察するものなのです、欲しいのは本体内のコントラストです。
とはいえ、鏡筒内での迷光、スパイダーの光条、鏡面での乱反射、などなど、
背景を明るくしてしまう要因のほとんどは木星本体の像にも影響を及ぼし
悪化させてしまいます。
当然のことながら、木星観察に於いても背景の暗いコントラストの高い
望遠鏡ほど良く見えるのです。

青色バックライト装置がこれら像を悪化させる要因とは根本的に異なる点は、
青色光は視野全面に均等に作用すること、木星本体を形成している光線が
屈折や散乱して像がボケるものでない
こと、などです。


色フィルターは引き算、青色バックライトは足し算

色フィルターによる木星観察は、木星から送られてきた情報量を減らして
単純化することによって見やすくする方法
と言えます。
極端な例を想像してみると、濃い青フィルターを使ったとします、
木星からは赤い光情報も緑の光情報も送られてきているのですが、
それらを削除して全面青色と黒色の濃淡だけの像になってしまいます。
光量も大幅に減ってしまいます。光の屈折散乱により像のボケが起きます。

GA4バックライトの場合もハーフミラーによる像のボケはあります。
通常の天頂プリズムすら使いたく無いのは以前にも書きました。
バックライトは視野全面を均等に照らすものです。
青色バックライトは、情報を加え、あるいは加工し、識別しやすくするものです。
木星からの情報は生かされています


数字で表してみましょう。
色A (赤3 青2 緑1)
色B (赤2 青2 緑1)
が隣り合ってくっついていたとします。
ナローバンド青フィルターではABとも 青2 の同色になります。
青バックライト1を加えた場合は
色A (赤3 青3 緑1)
色B (赤2 青3 緑1)となり、
色は変化しますが色の違いは残ります


背景や帯など、白く見えている部分について

明るい惑星や月など極度に明るい対象を望遠鏡の視野内に納めると、
その周囲背景も白っぽくなりますね。
”白く明るくなった”ように感じていますが、実は白く無いのです。
視野を明るくしている光源は惑星から射し込んでくる光です。
惑星が発している色を平均化したと同系色の背景色となります。
木星は茶色い部分が多く、また、大気の散乱で青色が減衰しています。
その結果、本来の木星像より全体的に茶色系(赤系)になります。
なのに、背景や帯などが白く見えるのは、「色の恒常性」という知覚作用
が働くからで、少しぐらい着色していても脳は白と思い込んでしまいます

蛍光灯の昼光色と白色、ブラウン管の色温度、夕日の風景、
本当は色の変化があるにもかかわらず無意識に過ごしてしまっています。

色バックライトを照らすと、視野内の暗い部分ほど青色の影響を
多く受ける
ことになります。まず背景が鮮やかな青色となります。
このことは後でフェストーンの見え方に影響します。
帯の部分は少しだけ青色光の影響を受けます。先の理由により
茶色系に偏っていた帯の色を白色あるいは僅か青系にします。

解りやすく誇張した表現をしますと、
 バックライト無しでは、木星を(背景も含めて)茶色系の濃淡で模様を見ていた。
 モノカラーで観察の典型が色フィルターである。
 青色バックライトを照射して、充分な青色光が加わり”
 色のコントラスト”でも模様を見分けることが出来るようになった
のです。
「赤系の背景」「赤系の帯」と「赤系の縞」のコントラストよりも、
「青系の背景」「白い帯」と「赤系の縞」のほうが識別能力が上がるわけですね。


フェストーンなど灰色に見える部分について

縞の茶色に比べて、無彩色に見えるフェストーンなどは淡く見辛いものです。
また、本来の青みが失われてもいます。
青色バックライトを照射すると、より鮮やかな青色となり、
無彩色の灰色よりも視認性向上します


視野背景が濃い青色であることで、木星表面の青系の部分が
より青色に着色して感じられます。 
テレビに映った人物の髪の毛が(実際は灰色なのに)濃い黒色に見えるのは、
フレームが黒色であることと周囲映像との対比による錯覚であることは
ご存じのとうり。 これと似た効果があります。

縞の縁をなぞるように、灰色の筋や塊まりが存在しています
これが鮮やかな青色となることで、「赤系の縞」「白い帯」の間にあって
輪郭が強調されたようになります。

青色バックライトを使うことで、木星像がシャープに見えるのは
それぞれの部分が独自の個性的な色で輝きだしたからです。
特に、赤と青という補色に近い関係の対比強調がうまれたことです。

色というのは、適度な光量があってこそ”鮮明に微妙な違い”を感じる
ことが出来るものです。 暗闇の中では色は見分けにくいですよね。


茶色く見える縞模様や大赤斑について

縞模様や大赤斑はかなり赤成分が多く、青色バックライトと混ざっても
青い縞になることはありません。ボリューム全開で最大光量を照射した
ときにマゼンタ色になるぐらいで、通常のバックライト光量では、
やはり茶色の域です


バックライトを照射すると、明るく薄い色になるのではという心配も
いりません。眼の感度調節が働いて、適度な濃さになります

縞模様の中の渦や濃淡が見やすくなります。
これは、バックライトによって眼の能力発揮に最適な明るさに
なったことと、濃淡に色の変化が加わったためと思われます


青色バックライトの色は、 暗い部分ほど影響が大きく青くなる。 
元々青色に近い部分ほど影響が大きく青くなる

従って、背景は青くなり、フェストーンが青くなります。
明るい帯は多少別の色が照射されても影響が少なく、
縞は赤や緑成分が多く、多少青色が照射されても茶色に見えます。

眼は何万色というごく僅かな色の違いでも見分けることが出来ます。
しかしまた、脳は横着なところもあって、似た色は同一グループとして
知覚します
。 
ノーマルでは、縞模様も帯も背景色も同系色のようなものでした。
青色光を合成することで、白い部分は白グループに、青い部分は
青グループに、赤い部分は赤グループに、きちんと区分けしてやることで、
識別能力がアップするのです


チューリップ、スミレ、タンポポ、ユリ、こんな花壇はフルカラー写真なら、
一瞬見ただけでどんな花が咲いているか見分けられ、印象的で、
頭に記憶が残りますね。
でも、セピア調写真では、じっくり見ないと判りません。
眼や脳を最大限に能力発揮させる、それが青色バックライトです。
情報を増やすのが青色バックライトで、減らすのが色フィルターです


鈴木その子さん

夜、駐車してある自動車のヘッドライトが点灯しています、
あなたはヘッドライトのガラスのデコボコ模様がみえますか。
では、これが昼間の場合はどうでしょう。ヘッドライトが眩しいとは
感じません。周囲が明るく輝度差が少ないからですね。

視野内の黒背景に浮かぶ小さな木星。多くの人は明るいと感じて
減光フィルターを使ったりします。
暗順応した眼のままでで見るには眩しさが防げて見やすくなったように
感じます。しかし、模様を見分けるには解像度が落ちたように感じる
こともあります。

人間の眼の解像力を上げるには充分な明るさが必要です。
そこで、逆転発想で、視野背景のほうを木星の明るさに近づけよう
というのがバックライトです。
視野全体が明るいので眼は10秒位で明順応します。
眩しさがやわらぎ、眼の解像力が発揮されます

昼間のヘッドライトを想像してもらえばよいでしょう。

先日亡くなられた鈴木その子さん、ご冥福をお祈り致します。
想像してください。
1.夜、暗闇の中でフェイスライトで照らされたその子さん。
2.昼間、同じ明るさのフェイスライトで照らされたその子さん。
どちらのほうが怖くないですか?..そういう問題じゃナイッてば!

デジカメやCCD撮影がポピュラーになってきました。
撮影後、パソコンでの画像処理で、カラー補正をすると思います。
青色バックライトは、青色増強補正のような効果があるといえます。
木星像を三色分解して青色トーンカーブのみを下駄上げ増強して
再び合成した像(実際とは少し違いますが)そんな感じに見えます。
眼視観察に於いても、カラー補正して見やすくしようというわけです。

強めに青色バックライトを照射すると、縞模様内の濃淡がきわだって
見えてきます。 
暗い部分ほど青色が付きやすいという原理から、
縞模様内の茶色の明暗差だけだったのが、色彩差も加わったため
だと思われます。

アイピースによっては、ゴーストやフレアと呼ばれる邪魔な光線が
発生して、視野内を飛び回ったりして気になります。
バックライトはこれら邪魔な光線を見えなくしてしまう効果もあります
結像はシャープだけどゴーストが派手に発生するといったアイピースの
粗隠しができます。



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