第一話 ふしぎな訪問者 脚本/城山昇 演出/設楽博 作画監督/姫野美智
南フランスのとある小さな田舎町で言葉をしゃべる猫があらわれ、大騒ぎになりました。そんな町の騒ぎにも気にせず、子供たちは草ゾリを楽しんでいます。
帽子を被った年長の子が勢いよく滑っていると、坂の途中で寝ている犬を避けようとして、コブに乗り上げひっくり返ってしまいました。水溜りに顔から落ちたその子がドロをはらうため帽子を脱ぐと中から可愛くはねた金髪があらわれます。
「女の子だ!」
つい叫んでしまった犬に、仲間の子供たちは驚いて逃げ出してしまいましたが、女の子はやさしく接します。犬は彼女に花の子探しをしていることを告げます。彼女は疲れと空腹に倒れそうな犬を自分の家に連れて行くことにしました。
女の子の名前はルンルン。花屋を営むおじいちゃんとおばあちゃんの三人で暮らしています。自分の誕生日を忘れてるほど遊びに夢中だったルンルンはおじいちゃんたちにしゃべる猫の騒ぎを知らされます。ところが、ルンルンがしゃべる犬を連れてきたことでおじいちゃんたちの方が驚いてしまいます。
一方、町の人々からようやく逃げることができた猫は持っていた綿毛状のタンポポを吹き飛ばします。綿毛は不思議な光となって夕焼け空を飛んで行きます。猫は光を必死に追いかけました。あたりがすっかり暗くなったころ、光がある家の屋根の真上で止まり輝きを増しました。
「とうとう花の子を見つけたぞ!」
その家はルンルンの家です。猫は窓から中をのぞくと誕生パーティーの真っ最中でした。
パーティーでは素敵なドレスで着飾ったルンルンがおじいちゃんたちに祝福をうけていました。犬がヌーボと名乗ると、猫が入って来ました。キャトーと自己紹介した猫はヌーボに詰め寄ります。ルンルンこそが花の子だと言うのです。
遠い昔、花の精は人間となかよく暮らしていましたが、人間が次第にわがままになってしまったので、フラワーヌ星に移り住むようになりました。それでも何人かの花の精は地球に残り、人間と結ばれたのです。その子孫が花の子と呼ばれているのです。
ヌーボとキャトーはフラワーヌ星の国王の使者で、ルンルンを花の子として、この地球のどこかに咲いている七色の花をみつけてくれるよう頼みます。七色の花はフラワーヌ星の国王の戴冠式に必要な花ですが、花の子しか見つけられないと言うのです。花探しの旅に一度は喜ぶルンルンですが、後に残るおじいちゃんたちが心配でした。しかし、おじいちゃんたちは七色の花を見つけた人は幸せになれるという言い伝えをルンルンに聞かせ、ルンルンの旅立ちを歓迎します。キャトーはヌーボが持っていた国王からの贈り物をルンルンに手渡します。それは花の鍵という花の形をしたブローチです。ルンルンは花の鍵を胸につけ、ヌーボとキャトーがお供になって旅に出ることを承知します。
そのようすを家の外からうかがう人影がふたつ。美しい姿と鋭い眼差しを持つ少女はトゲニシア。そしてズングリとした体格の男はヤボーキ。フラワーヌ星からやって来た二人はルンルンの旅を追い、七色の花を見つけたところを横取りしようとしているのです。
翌日、ルンルンたちはおじいちゃんたちの見送りで旅立とうとしましたが、列車がなかなか発車しません。青年カメラマンが、線路脇に咲く花を撮影していたのです。カメラマンは撮り終えた花を線路から離れた場所へ移し変えてあげました。
「なかなか優しい人なのね」
ルンルンはそのカメラマンのことを気にかけるのでした。ルンルンたちの乗る列車にカメラマンも乗りこみます。そしてルンルンを追うようにヤボーキも……
ようやく出発した車内でルンルンはおじいちゃんたちに思いをはせます。ヌーボたちにからかい半分でたしなめられたルンルンは車窓から花畑に囲まれた小高い丘の一軒家が火事に見まわれているところを見つけます。ルンルンは列車を止めてもらい火事のことを告げますが、ヤボーキの口車に乗った乗客や車掌は消火の手伝いを断ります。しかたなく、ルンルンたちだけが列車から降りて、一軒家に向かいます。カメラマンもルンルンを手伝うために列車から降りると、列車は出発してしまいました。
家の前では若い女性が中に取り残された自分の夫と子供を心配しています。それを聞いたカメラマンは井戸の水を頭からかぶると、火の中に入って行きました。キャトーとヌーボはルンルンをかたわらの花畑に連れて行きます。
「ルンルン! 花の鍵を外して!」
「フタを開いてごらん」
花の鍵の中は鏡になっていました。ルンルンはキャトーたちに言われるまま、鏡の光を花に当て、火に強い服を念じました。すると、鏡の光が花からルンルンに当たり、ルンルンの衣装を銀色の防火服に変えました。ルンルンも火の中に飛び込んで行きます。中では親子を見つけたカメラマンが煙に巻かれていました。ルンルンはカメラマンたちを家の外に連れ出すことに成功します。再会した家族に安心するルンルン。そのとき、列車が戻ってきました。車掌や乗客たちが考え直してくれたのです。ルンルンは涙ながらに喜ぶのでした。
みんなの協力で火事はおさまり、ルンルンたちは再び列車に乗り込みます。
「あの人がいないわ……」
ルンルンは発車する列車の中でカメラマンの姿を探すのでした。
発車した列車を感謝の気持ちで見つめる若い夫婦にカメラマンが話しかけます。
「この花の種をまいて下さい。」
それは赤いバーベナの花でした。列車の窓から見える場所に咲くその花を見る若い夫婦と列車の乗客たちはルンルンの行いを忘れないのでした。
赤いバーベナ/一致協力
(つづく)
解説もどき
キャラクターデザインの姫野美智が作画監督を担当しているのはシリーズを通してこの第一話だけ。姫野は荒木作画と女性特有の描線との融合で「花の子ルンルン」の雰囲気作りに大きく貢献している。
ストーリーや演出面で言えば、ナレーションを上手く利用しているため展開がスピーディーであり、この一話でルンルンがどんな女の子かが(大雑把にだが)わかる作りになっていることには感心する。男の子と遊ぶ快活さ、言葉を話す動物を受け入れる心、自分の旅立ちで残ることになるおじいちゃんたちを心配するやさしさ、火事に見まわれた家を助けようとする行動力。かなり練られた構成だ。
火の手から親子を助けようとするシチュエーションは、物語を重ねて行く上で明らかになるルンルンと両親の関係を知ると憎い演出と言わざるをえない。
重箱のスミ……
誕生パーティーのシーンでは予告編と本編で若干の違いがある。パイロット版とかがあるの?
本編では「電車」って言ってるんだよね、パンタグラフがないけど。ディーゼル電気機関にしては駆動車両(運転席)と客車とが共用で電気設備のスペースが小さいゾ。線路から電力を取ってるんだとしたら、危ねぇなぁ……
「どんな火でも大丈夫」って…… 煙や酸欠にも強いんだろうか?