第十九話 ライン河のめぐり逢い 脚本/曽田博久 演出/遠藤勇二 作画監督/札木幾夫

 ルンルンたちが乗り込んだ貨物列車はライン河が流れるドイツのケルンに到着しました。ルンルンは河のほとりで飛んできた帽子を拾います。それはライン河を往来する船の船長であるミューラーの帽子でした。ミューラーはルンルンに礼を言うと、帽子を受け取って去っていきます。ルンルンはヌーボとキャトーが不思議に思うほどの興味をあらわして彼の後を追うのでした。その様子をうかがうトゲニシアとヤボーキーはミューラーが七色の花の手がかりを握っていると思い込みます。夜、酒場にいるミューラーを憧れの表情で外からのぞき込むルンルン。酒場の主人や客から娘が待っているとからかわれたミューラーは外にいたルンルンに娘でもなければ知らない顔だと告げます。ルンルンは涙を流して泣き出してしまいました。理由を尋ねるミューラーに対して、ルンルンはミューラーの顔やしぐさが今は亡き自分の父親を思い出させるのだと話します。そして、一日だけでも父親として振る舞ってほしいと願い出ます。ミューラーはそれを快く引き受けました。
 翌朝、マインツまでライン河を上る船に同乗することになったルンルンは花の鍵でセーラールックにドレスアップして、ミューラーの待つ船にやってきました。ヌーボとキャトーも乗船して、ミューラーが操舵する楽しい船旅が始まりました。七色の花探しとはまったく関係ない事を知ったトゲニシアたちはルンルンたちへの妨害をくわだてます。トゲニシアたちはルンルンたちの乗る船に無理やり乗船をすると、操舵室で楽しく語らうルンルンとミューラーの前に現れ、ミューラーには妻と子供がいるばかりか酒浸りで家族に暴力をふるっていると話します。ショックを受けたルンルンは操舵室を飛び出しますが、勢い余って河に落ちてしまいました。ヌーボとキャトーに続き、トゲニシアたちに舵を任せたミューラーがルンルンを助けようと河に飛び込みました。
 夕日が射す河のほとりにある無人の小屋で暖を取るルンルンたちとミューラー。ミューラーは家族との関係について、自分の娘が心を開いてくれないことやそれによって夫婦仲も悪くなり酒の量が増えてしまったことなどをルンルンに話します。そんなミューラーにルンルンは、自分が幼い頃、母親の死によって心を閉ざし、口もきけない過去があったことを話します。その頃のルンルンを献身的に支え育てたのがルンルンの父親でした。ルンルンが五歳の時、登山中に嵐に見舞われた二人は洞窟に逃げ込みます。ルンルンの父親は体の冷えきったルンルンを抱きしめて一夜を明かしますが、嵐が去った翌朝、帰らぬ人となってしまいました。しかし、ルンルンは冷たくなってしまった父親に叫ぶように呼びかけることで、言葉を取り戻すことができましたのでした。話を聞いたミューラーはルンルンと父親との関係に感動します。ミューラーに一日だけの父親役に感謝するルンルン。ミューラーは家族との関係を修復することをルンルンに約束するのでした。小屋から出るルンルンたちの前に、ヤボーキーが舵を取るミューラーの船が戻ってきました。舵取りがおぼつかないため、ヤボーキーはトゲニシアと一緒に河に落ちてしまいました。無人となった船に急ぎ乗り込むミューラー。船の舵を取り戻したミューラーは操舵室の窓からルンルンに向かって晴れやかに別れを告げ、ルンルンも河のほとりから笑顔で見送りました。  ケルンに戻ったミューラーが家族への土産を考えているとセルジュが現れ、ルンルンからの託けとして彼に花の種を渡します。ミューラーが家の周りに撒いた種から花が咲くころ、ミューラーは初めて我が子からパパと呼ばれるようになりました。その花はゼラニウムの花でした。ミューラーはその花を見るたび、今の幸せを噛みしめ、ルンルンとの出会いを思い出すのでした。

 ゼラニウム(黄色)/偶然の出会い
(つづく)