ご質問 歯科矯正治療に影響する力とは?


 お答え 歯科矯正治療において、矯正装置を使っていても治りが悪い場合があります。つまり、矯正装置の邪魔をする力が存在するわけです。

1)鼻閉(鼻づまり)、口呼吸

 アングル先生が有名なアングル分類を出した時に、U級1類(=上顎が下顎よりも前方に位置して、上顎前歯の唇側傾斜を伴う物)の説明の中に口呼吸を伴う、という一文を加えております。その後リケッツ先生も扁桃肥大による口呼吸を研究され、ハーボルト先生は人工的に鼻閉にしたサルを使って上顎前突になるという実験をされました。

 鼻閉(鼻が詰まっていて、口で息をしている状態)が続けば上顎前突(出っ歯)になる、というのは確かな事実です。

 歯科矯正治療においてセファログラムを撮影するのは、口蓋扁桃や咽頭扁桃の肥大を見つけるためでもあります。

 アレルギー性鼻炎なども含めて耳鼻科との対診が必要になります。

2)地球の引力

重力

。普段は意識してませんが、地球はあなたの身体を下に引っ張ってます。ジャンプしてもちゃんと地面に落ちてきますよね。

 下顎骨は両耳の前のくぼみ(顎関節窩)から靱帯でぶら下がっている骨ですので、顔を少し傾けただけでも顎先は地球の方向に向きます。つまり、頭を右に傾ければ顎先は右に揺れます。重力加速度1ニュートン(1N=980g/s/s)ですが影響は起立している間作用しますのでバカにできません。

3)悪い姿勢

 頬杖をついたり、スマホのやり過ぎは頭位をねじ曲げる力になります。また、噛み合わせに横方向から変形する力を与えます。勉強や仕事が終わったら、肩甲骨を内側に引き寄せて背スジを伸ばしましょう。

 この方面の研究で有名なのはベニソロ先生ですね。

4)寝姿

 ずっと片側だけ押しつけて寝ていると、下になっている方の歯列が潰れます。歯列左右の丸さ(湾曲)が違う場合、頬杖や寝姿の異常を疑います。8時間も同じ姿勢で寝ているとは思いませんが、少ない時間でも頭の重さは4〜5Kgありますから、影響は大だと考えます。

5)舌突出癖

 乳児型嚥下では舌を前に出して嚥下(ゴックン)をします。離乳期間を経て、成人型の嚥下(舌を前に出さないゴックン)に変わるのですが、これが上手く行かない人が存在します。(日本人の3割という説もあるぐらい)

 この癖があると、前歯部開咬や上顎前突になります。また歯列の幅の成長が悪いために前歯部叢生にも成ります。

 歯科矯正治療では形を変えながら、舌の機能(正しい成人型嚥下)を教えてゆきますが、思春期前に来ていただかないと治りが悪くなります。(成人してから治すのはかなり大変です。)

6)指しゃぶり

 指しゃぶりは幼児期では普通のことですが、4〜5歳でやめないと出っ歯の原因になります。親指を吸うことにより上顎前歯は前に出て、上顎骨も前方向に変形します。同時に下顎骨を後下方に回転しますので、ちょと見れば原因がわかる顔になります。また、このときにほっぺた(頬筋)は内側に作用しますので、上顎歯列の狭窄も生じます。変形の程度は、作用時間と吸う力の大きさに左右されます。隣の部屋でも聞こえるぐらいスゴイ音を立ててチュバチュバしてれば、影響は大になります。つまらない時にチョット指をくわえるぐらいと、一日中チュバチュバしているのでは後者の方が影響が大になります。

 指しゃぶりを止められないお子さんがいらしたら、歯科矯正専門医にご相談ください。治療開始は当院では6歳臼歯と上顎前歯が生えそろってからになりますので小学校に入学してからですね。

 


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