ご質問 親知らず(第三大臼歯)の抜歯は、歯科矯正治療後の安定のために必要ですか?


お答え    下顎の第三大臼歯(親知らず)は、横向きにはえてくることが多く、レントゲン写真を撮影してみると、いかにもその前のほうに位置する歯を押して、前歯部叢生の再発の原因になっているように見えます。

 この説が本当に正しいのか、検証した実験があります。下顎の第一大臼歯と第二大臼歯の間に圧力センサーをセットして、第三大臼歯の押す力を測定したものです。結論から言って、下顎前歯部叢生の原因になるほどの力は発生しておりませんでした。

 私としては、第三大臼歯が前歯部叢生の再発の直接的な原因とは考えておりません。二次的、三次的には、まだ研究が進んでいないところで原因になっているかもしれません。ですから、「疑わしきは、抜歯する。」という先生の意見を完全に否定することはできません。

 歯科矯正治療で、抜いて欲しいと思うのは、矯正治療前の状態で小臼歯から大臼歯まで全部あるいは一部が、近心傾斜(前のほうに倒れている状態)の場合です。理由は、「歯というものは骨に対して垂直に立っているのが理想」だからです。手前に倒れた状態の歯を直立させるためには、後ろに場所が必要です。この時に第三大臼歯があると、それが「つっかえ棒」の形になって、邪魔をするので抜いて(どいて)欲しいわけです。

 第三大臼歯の抜歯は手術になりますから、当然それなりの不快症状(痛み、腫れ、他)があります。患者さんに、納得して同意してもらわないと始まりません。最終的な選択は、患者さん自身がすることです。情報は正しく仕入れて、正しい判断をされてください。

 虫歯もなく、正常に萌出している第三大臼歯は抜く必要はないと思います。かみ合う歯がなくて、挺出(伸び出してきて)噛みにくくなったのなら、その時はこの限りではありませんが。



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