ご質問:歯科矯正治療の難易度
お答え 実際に拝見しないとなんとも言えない部分があります。一般論として、以下に書きます。
1)垂直的な問題
前歯のかみ合わせに注目した時、正常咬合では、上の前歯が下の前歯に2〜3ミリかぶさる形です。前歯部開咬(かみ合わせが開いている)や過蓋咬合(歯ぐきを噛むほどかみ合わせが深い)では、難易度が高くなります。
2)前後的な問題
正常咬合では、上の前歯が下の前歯の2〜3ミリ手前に位置する形です。切端咬合だと、この距離がゼロですし、反対咬合ではマイナスで表します。上顎前突なら、6ミリを超えると学校検診で「不正咬合2」という基準です。正常から距離が増えるほど難易度が高くなり、骨格性といって骨の大きさや形から問題があるということになります。
3)歯の大きさと顎の大きさ
4人がけの長いすに普通の大人4人が座れるのが正常としましょう。
・3人がけの椅子に4人が座ったら?
・4人がけの椅子に太った大人が4人座ったら?
・4人がけの椅子に大人二人子供二人がすわったら?
座る人間の大きさ(=歯)と座る椅子の大きさ(=顎の大きさ)の問題です。椅子が小さくて、太った人がたくさん来ると大変ですね。お立ち頂かなくてはなりません。これが歯科矯正で抜歯をする理由になります。
大工さんを呼んできて、椅子を大きくする方法もあります。でも、成長期の子供の限られた症例だけです。床矯正で100%拡大して非抜歯なんてありえません。歯の大きさも顎の大きさもみんな違うんですから、違う治療法になるわけです。
4)機能的な問題
舌の大きさ、動き、習癖。鼻炎、扁桃腺炎など上気道の問題。悪習癖。姿勢。噛み癖。楽器。顎関節症場の有無、等々。
5)虫歯や歯周組織の問題
過剰歯、欠損歯。歯槽骨の厚み。歯周炎の進行度。
6)成長
成長の方向や量は、個人個人で違います。
まとめ
上記の1)〜6)を総合的に判断して難易度が判定されます。
あと、治療法でも難易度は変化します。抜歯症例を非抜歯で無理矢理やると難易度は上がります。無理があれば、歯根吸収や後戻りなどが起きやすくなります。
「歯が並べられれば、歯科矯正。」というわけでもないんです。そんなに簡単な仕事ではありません。専門医でない歯科医が、症例のどこまでを把握できるのでしょうか?
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