ご質問:「ストレートワーヤー・テクニック」とは?
お答え 歯にブラケット(Bracket,あるいはブレースBrace)を付けて、歯並びにあったワイヤーを縛り付けることにより、歯に力を加え動かしゆこうという治療方法は、20世紀初頭にアメリカのアングルさんが考えだしたものです。
まず、リボンアーチという現在のベッグ法のブラケットが考案され、その後でエッジワイズ法のブラケットが開発されました。エッジ=角がある、という意味です。
アングルさんの考案したブラケットでの治療方法では、ワイヤーを曲げないといけませんでした。一人一人違う歯の大きさ、歯の角度、顎の大きさ、上下の顎の位置関係などを総合的に考えて、針金に縦横の曲げ(Bend)と捻り(Torque)を入れて行く作業です。まあ、ある意味職人芸の世界なんです。
で、この職人芸を無くす方法を考えた人がおりました。アンドリュースという人です。アメリカの自動車産業を見るまでもなく、大衆に均一のものを提供するには標準化した装置で、標準化されたマニュアルに則って作業をしてゆけば良いわけです。アンドリュースさんは、正常咬合の人間の歯型を調べて、まず正常咬合に必要な条件を6つ上げ、これを達成するために必要な歯の標準的な(平均値ですけど)インアウト、歯軸の傾き、捻れを調べました。このデータを元に、職人芸で針金を曲げなくても済むようにブラケット自体に厚みと捻れを組み込んだわけです。この厚みと捻れの数値(データ)をセットアップと言います。
この後に続く、ロス、アレキサンダー、リケッツ、デーモン等々、日本人なら小坂先生のセットアップがあります。
しかし、日本で売れているブラケットは白人用のブラケットが多いようです。日本人用ではないので、日本人の歯並びとしては不自然な感じに仕上がります。上顎前歯が立った感じですね。日本人はもう少し斜めです。あと、日本人の前歯はシャベル状切歯と呼ばれる厚い歯でして、白人の平べったい歯とは全然違うので、ストレートワイヤーなら微調整が必要になります。
患者さんは、全員違うわけですから、平均値のセットアップで作ったブラケットで全部が上手くゆくわけがありません。多くの場合、微調整が必要になります。その微調整ができるかどうかが、腕の問題なんですけどね。「ワイヤーを入れ替えるだけで治る。」症例も確かにありますが、ごくごく稀なお話しです。
ちなみに、ストレートワイヤー用のブラケットを使わない治療方法は、スタンダードテクニックと言います。患者さんの口の中を診て、一人一人に合わせてワイヤーを曲げてゆきます。
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