ご質問:歯科矯正治療では、なぜブラケットをつけるのですか?


お答え  歯に力をかけると歯は動きます。例えば、指しゃぶりを続けていると、指が歯を押す力で出っ歯になります。

 歯科矯正治療では、この力を上手くコントロールすることで、歯を意図する方向に動かしてゆきます。

 

 さて、野球のボールでも四角の箱でも、ポーンと投げると「回転しながら」飛んでゆきます。これはどういう事かというと、投げた力が遠くへ飛ぶ力と回転する力の2つに分かれるからです。簡単に言うと、前に進む力+重心を中心とした回転力が生じるわけです。

 歯科矯正治療で、歯に力をかけた場合は、歯の重心(だいたい歯根3分1ぐらいのところ)を中心とした回転移動になります。歯科矯正の用語としては、「傾斜移動」と言います。

 傾斜移動が起きるのは上の図のように、

1)ブラケット装置をつけて、断面の丸い針金を入れた場合、

2)床矯正装置

3)リンガルアーチ

4)マウスピース矯正(2025年3月3日追記)

で起きます。傾斜移動は、非常に簡単に起こすことが出来る移動で、早ければ1週間ほどで動きますので患者さんを驚かすには効果的ですが、力をかけるのをやめればすぐに戻ります。

 安定性させるためには歯体移動が必要になります。 以下に説明しますね。

 歯の位置を安定させるために、歯の根っこを動かさないといけない場合があります。この場合、ブラケットを付けて、断面が四角の針金をパチンと入れます。すると、

 上記の傾斜移動+トルク(ひねり)により、歯の根っこごと、平行に動かしてゆきます。傾斜移動で生じる回転に対して、逆方向のひねりを加えることにより、この移動を実現しております。で、この移動方法が出来るのは、「ブラケット+断面が角のワイヤー」の組み合わせだけなんです。

 だから、三次元的に歯をコントロールしようとする矯正歯科医はブラケットを付けて、歯科矯正治療をするのです。

 なお、この治療をするためには大学などでの専門教育(カリキュラムと実習)が必要であり、日本矯正歯科学会ではこの修練を行った人間を本当にやったかどうか調べて認定医を出しているのです。 

#このページを最初に書いたのは2012年月23日でした。その頃は、マウスピース矯正なんて眼中になかったわけで。

※後戻りが起きる原因には、成長、筋肉の力、習癖、歯周繊維(歯の周りのコラーゲン繊維)など、歯の移動様式の他にもいろいろあります。


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