ご質問 歯ぎしりについて


お答え 

1.歯ぎしりとは
 まず、言葉の定義から。きしむ【軋む】=物と物とがすれ合って、きしきし、みしみしなどと音を立てること。 歯と歯がきしむと歯ぎしりとなるわけですね。

 他人の睡眠を妨害してしまう可能性がありますが、自覚症状はなく、他人から指摘されて気ずく場合が多いでしょう。

2.歯ぎしりの種類
 歯ぎしりといっても3種類があります。グラインディング、クレンチング、タッピングの3種類です。


 グラインディング(grind=削る)は上下の歯を擦り合わせ、ギリギリキリキリ音を鳴るやつです。口の中を見ると歯が削れています(咬耗という)ので、すぐにわかります。
 クレンチングは、上下の歯を強く噛みしめ、音を出さないのが特徴になります。食いしばりとも言います。
 最後のタッピングは、歯を打ち鳴らすタイプの歯ぎしりで、

3.歯ぎしりによる悪影響

  他人に迷惑をかける。(これが一番でしょうね。)
 自分の歯が削れたり、欠けたり、割れたりすることがあります。
 歯だけでなく、歯槽骨、顎関節に負担がかかり、破壊がおきることもあります。具体的には、歯周病の進行悪化、顎関節の痛みなどです。


 知覚過敏やインプラントの失敗要因、腰痛・肩こりを引き起こす可能性も考えられます。酷い歯ぎしりのある人にインプラントをやってはいけませんね。

4.歯ぎしりの原因

1)主な原因は「ストレス」だと考えられております。

 ストレスもいろいろあります。精神的なストレスと肉体的なストレス、その両方が重なったもの。
 肉体的なストレスには、身体を使った後の筋肉の疲れと、不良姿勢による筋肉のアンバランスによるものがあると思います。
 過剰なストレスを受けている人ほど、歯ぎしりになる傾向が強いと思われます。子供のほうが出やすい感じがします。
 ストレスを上手に発散することができず、溜め込んでしまうと就寝中にストレスの影響で歯ぎしりや食いしばりを起こすと考えられております。

 ストレスをどうやって発散するか、原因に合わせて対応することが必要です。肉体的なストレスなら、入浴やストレッチなどが有効でしょう。

2)ストレス以外の原因
 「歯のかみ合わせの悪さ」はよく言われますが、これも色々あって、一本だけ伸び出している歯があれば、当然それを削るように顎は動きます。この場合は、咬合調整といって歯科医が対応できます。
 過蓋咬合(かみ合わせが深い)、奥歯のすれ違い咬合、交叉咬合(部分的な反対咬合)など不正咬合と呼ばれるものは早期接触により、歯ぎしりを誘発する可能性があります。(でも、すべてがそうとは限らない)

 歯科矯正の初期の段階では、早期接触が起きるため、咬みにくかったり、歯ぎしりが起きやすくなることがあります。


 エラ(下顎角)の張った人(Bachyo-facial Type)では歯ぎしりが起きやすいようですが、それだけが原因とは言い切れないように思います

 現在、虫歯治療中や詰め物が合っていない場合、歯を抜いた後、顎の筋肉バランスが悪いのも歯ぎしりの原因になると思います。
過剰な喫煙やアルコールの摂取、ある種の薬物摂取も歯ぎしりの原因となります。

5.歯ぎしりを予防する方法

 まず、原因を考える。原因をやっつけるのが基本です。

 自分でできることは、ストレス発散です。でも、酒を飲み過ぎると逆効果みたいです。あ、子供はストレス発散ができませんねえ。


 第一選択は歯科でしょうか。睡眠が絡むなら精神科、神経内科等で御相談下さい。多くの場合、歯科医を受診されると思いますが、歯ぎしりに対する理解は担当医一人一人で違います。

 原因療法ができない場合は、対症療法になります。具体的には「ナイトガード」です。歯にカバーをして音が出ないようにするわけです。薬局でも簡便なモノを売っているようですが、個人個人に合わせた正確なものを作るなら歯科医を受診されて下さい。市販品は歯にピタリとあっていないので、歯が変に動く危険性があります。

6.歯ぎしりの有効性

 ストレスで歯ぎしりが起こるわけですが、逆に言うと歯ぎしりを臼る事でストレスを発散させているわけです。歯ぎしりもしないで、ストレスを貯めるともっと酷い精神状態になることもあるわけです。

7)まとめ

 治療の前には予防だと思いますが、ストレスをためないといっても難しいですよね。
 歯の異常は歯科医で御相談下さい。原因を適切に判断して、患者さんが必要と判断したら、治療を受けて下さい。気をつけるべきは安易な咬合調整(歯を削る行為)です。基本的には不可逆的な治療(元に戻せない治療)は最後の手段です。

ほかにも、歯の矯正をする歯ぎしり矯正などもありますが、当たり前ですが、原因が他にある場合、歯科矯正治療で治るという保証はありません。個人的には、原因の一つを取り除くだけであるという認識です。


| Q&Aのコーナーに戻る | ホームに戻る |