週刊朝日6月1日号の記事について

 追加(その2)

 タイトルは、「失敗しないオトナの歯列矯正」で、「デメリットをしっかり聞く、期待しすぎない・・・」というサブタイトルがついてます。

 ひとつずつチェックしてゆきましょう。

1.患者さんが矯正治療後悪くなった例

記事
私の感想、意見
 「予約制にもかかわらずいつも待たされ、診療は流れ作業で、細かい作業を歯科衛生士にさせるなど、程度の低い治療によって、口が開かなくなり、激しい頭痛や体重減などに悩まされた。」  文章の書き出しから、感情的になってます。患者数が増えれば流れ作業的に仕事をして効率を上げるのはあたりまえです。歯科衛生士ができる仕事は規定されておりますが、それを遵守していたかどうかは、この文章だけではわかりません。

 矯正治療後の症状に関しては、直接拝見しておりませんので、コメントできません。

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私の感想、意見
 「受け口で乱杭歯でだったので、25歳の時に矯正を始め顎の骨を切る手術もした。コンプレックスは改善されたが、すごく首がこるようになり、装置のせいか、虫歯も増えた、果たして良かったのか。」  反対咬合(受け口)を手術で治した場合、姿勢が変わります。手術前の状態とは異なる姿勢をとるため首がこるかもしれません。ストレッチ体操などで対応されれば良いでしょう。

 虫歯の増加に関しては、矯正装置により口腔内に汚れが溜まりやすくなりますが、歯科医側と患者さん側双方の努力によって防ぐことが出来ると思います。

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私の感想、意見
 「発音が不明瞭なのを近所の歯科医に相談したら、矯正を勧められた。目立たない矯正装置だと、200万円ぐらいかかると聞いた。高額なので絶対に失敗したくない。どこかいい矯正歯科を紹介してほしい。」  口は食物を食べる器官ですが、言葉を作る器官でもあります。歯並びや舌の運動は発音に影響を与えるのは明らかです。

 矯正に限らず、良いドクターを選ぶためには、自分で調べるしかありません。腕が100点満点でも、性格が悪くて通いたくなくなるようなドクターでは困りますね。

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私の感想、意見
 「前歯の歯並びがでこぼこしているので矯正歯科医に相談しているが、デメリットを聞いても『始めはちょっと痛いが、慣れれば大丈夫。』と言われるばかり、あとは装置の料金や支払方法の話ばかりで不安になっている。どうしたらよいか。」  デメリットについても、ちゃんと話を聞きましょう。世の中良いことばかりではありません。薬を飲んでも副作用があります。手術をすれば麻酔で死ぬことだってあります。歯科矯正治療においても、歯根吸収やう蝕歯周炎の危険性の増大など、良くないこともあります。

 メリットとデメリットをよく考えて、治療を受けるかどうかを、患者さん自身が決めてくださればよいと思います。

2.矯正治療をして本当に良かった

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私の感想、意見
 「金銭面では100万円程度かかりましたが、全ての装置と治療、必要な書類発行代も含み、リスクを含めてきちんと説明してくれる、すばらしい歯医者さんでした。」  担当医として、当然の対応だと思います。

 ま、そうでない人が多いのですが。

3.日本臨床矯正歯科医会の反論

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私の感想、意見
 「指摘されるように、中には患者さんに適切な対応をしていない歯科医がいることは承知していますし、同業者として非常に残念です。しかし、適切な矯正治療により噛み合わせが改善し、スムーズな咀嚼、発音の改善、口元に対する自身、口腔衛生や健康感が向上し、一生自分の歯で食べられる喜びを得て、多くの患者さんがクオリティオブライフ(生活の質)の向上を獲得されています。」  世の中には悪いやつもいます。ご指摘の件については、そういう事例も見聞きしております。歯科矯正治療の専門教育を受けていない歯科医でも、看板に「歯科矯正」の文字を書けるんですよね。

4.林歯科医院の院長先生の話

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私の感想、意見
 「安易な矯正の害は実例がたくさんある。それなのに、歯並びが悪いといって矯正歯科医に相談に行くと、矯正以外の代替案をほとんど示されず、ワイヤをつけて矯正治療しようとする。いわゆる成人の歯列矯正は保険適用外で、医療費控除も受けられない。それは、国としても歯列矯正を医療として認めていないからではないでしょうか。」  上にも書きましたが、治療よりもお金儲けというような悪いやつはいます。

 矯正専門医であれば、他の治療法もちゃんとお話します。(私はしてます。)

 成人の歯科矯正治療は医療費控除の対象となります。保険適用外なのは、厚生労働省が決めることです。お産も保健適用外ですね。もし、明日から「風邪は保険適用外。」と厚生労働省が言えば、明日から風邪が保険適用されなくなりますよ。きわめて政治的な問題なんです。

5.飯塚哲夫先生(埼玉県の歯科医)の話

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私の感想、意見
 「歯並びが悪いと虫歯が増えるなどと言いますが、果たして歯並びが悪いことが原因で虫歯が増えるのか、まだ科学的証明は何らされていない。そもそも不正咬合や正常咬合と言う定義自体があいまいなのです。大半の歯列矯正をしたいという患者さんには、歯並びが悪いのは見た目だけの問題であって、そのまま放置しておいても、身体に支障は無いと説明しています。」  成人における虫歯の発生率は、子供に比べて格段に低くなると思います。オトナで問題になるのは歯周病ですね。(問題のすり替えです。)

 歯周病は、基本的には歯ブラシで歯垢を取り除くのが一番の予防であり治療ですから、でこぼこの歯並びで食べカスが残り歯磨きしにくい歯並びよりも、きれいな歯並びのほうが有利だと思います。

 「歯並びが悪い。」ことによるコンプレックスは、精神衛生上良くありません。人前で笑えない人に、「身体に支障が無いから我慢しなさい。」と言えません。歯しかみない歯医者の言いそうなセリフですね。

6.澤トシ子先生(大阪の産婦人科医)の話

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私の感想、意見
 「歯列矯正で身体に何か不具合が出た場合、適切な処置をしてもらえずに歯科医院を転々とすることが多いのですが、転々とすればするほど歯を削られたり、外科的手術を勧められたりと、悪循環に陥ることが多い。これからは、患者側も医師に全てをお任せではなく、勉強をして知識をつけないとダメ。トラブルがあってから右往左往しても遅い。」  患者さんは、悪い歯医者にひっかからないためにも、勉強すべきだと思います。

 しかし、解剖学、生理学など基礎医学から、治療学など臨床医学まで全てを学ぶことは不可能です。また、臨床経験を重ねることも出来ません。

 テキトーな説明しかしないような歯科医を看破できる程度の知識を仕入れてください。

7.岸本達司弁護士の話

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私の感想、意見
 「トラブルが発生して裁判に持ち込んでも、医師はとたんに医学的な装いを凝らして責任を否定してくる。歯列矯正をしたために肩こりや吐き気が発生したとしても、その因果関係を裁判で証明するのは容易ではなく、その証明を手伝ってくれる歯科医師もほとんどいません。」  裁判で患者さんが勝訴するのは非常に難しいですし、その時間と費用はバカになりません。現実問題としては、裁判しないほうが得だと思います。

 私のところにも、素人同然の歯科医による矯正治療に不安を感じられて、転医されてきた方が何人かいらっしゃいます。あまりにひどいので、治療費の清算を要求しても無視されました。

 その時に、歯科医師会からプッシュがあったのは事実です。「歯科医師の間で穏便に済まそうとするのが良いことか、患者さんの幸せを第一に考えるのが良いことか?」と、電話してきた先生には意見しましたが。

8.「歯列矯正に失敗しないために。」という設問に対する筆者(大波さん)の主張

1)インフォーム・ドコンセント(説明と同意)を徹底する

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私の感想、意見
 後悔しないためにも、不安な点は前もって医師の説明を受け、同意してから始めたい  歯科医師には説明の義務があるし、患者さんはそれを聞く権利があると思います。正常な判断をするためには、ある程度の知識が患者さんにも必要だと思います。
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私の感想、意見
もし、矯正が失敗した場合どう保障されるか。(以下、弁護士の意見が引用されている。)  治療の成功度といいますか、治療が上手くゆくかどうかというのは、ドクターの腕と患者さんの協力度によります。

 あと、ガンで死んだ場合は、皆さん治療費の返還訴訟をするんでしょうか?

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私の感想、意見
契約書を交わすようなことはまだまれだが、こうした形式も今後検討されていいのではないか。  契約書を交わすことが大事ではなく、治療の内容や予後(どの程度治るか)などの説明が重要。患者さんが、なんでも質問できるようなドクターの人柄も重要。

 証拠を残したいのなら、そのあとで書類にサインをもらうことですね。

2)デメリットを聞き出す

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私の感想、意見
(鶴田講師の談話)矯正による体の不具合については、まだはっきりとは解明されていませんが、歯並びが急激に変わったことにストレスなどが相乗して働き、頭痛や肩こりなどの不定愁訴が出やすいと考えられています。  歯科矯正治療の来院間隔は通常1月に1回です。この間の変化を注意深く観察し、悪い方向に向かえばそれを修正してゆきます。口の中だけしか見ていないとこの対応が遅れます。所詮、矯正医のレベルの問題だと思います。
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私の感想、意見
歯列矯正の本や、矯正専門開業医のホームページを見ると、矯正治療による審美的な利点に加え、不正咬合を放っておくと、食べ物がよく噛めずに栄養が取れなくなる、言葉が不明瞭になる、などと矯正に誘導する内容が目に付く。その反面、矯正によるデメリットにはほとんど触れられていないのが現状だ。  本を書くのは宣伝目的です。いわゆるバイブル商法と呼ばれるものです。

 デメリットは、歯根吸収や歯根露出ですが、治療目標の設定により軽減することが出来ます。しかし、ある程度の結果(高い目標)を設定すると、それなりのリスクが出てきます。

メリットとデメリット、プラス面とマイナス面を総合的に判断して、担当医と患者さんが治療するかどうか判断されれば良いと思います。

3)セカンドオピニオンを聞く

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私の感想、意見
(鶴田講師の談話)最近は、歯列矯正の材料や装置が進歩し、歯科医も楽に矯正治療が出来るようになりましたが、実際に如何に動かすかとなると、経験をつんでいないと難しい。残念ながら矯正治療を行うすべての歯科医が技術力を持っているとは言えない。できれば別の専門医をたずねて、セカントオピニオンを聞き、よく考えてから矯正治療に踏み切るのがいいと思います。  アメリカで考案された、ストレートワイヤーテクニックは治療の標準化が目的で作られましたが、日本では専門医でないものが矯正治療をやるための道具として使われている場合が多いわけです。鶴田先生の言わんとしている事は、「治療技術のない歯科医にひっかからないように、セカンドオピニオン(別の歯科医の意見)を聞いたほうが良いよ。」ということではないでしょうか?

4)期待しすぎない

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私の感想、意見
歯列矯正はけっして「万能」ではない。  自分の診療室を売り込むために、おいしい事ばっかり書いてある本やホームページがありますが、不妊がなおるだとか顔が小さくなるだとかは、たまたまそういった例がある程度で、因果関係は不明確です。よって、誰にでも必ずそういったことが起きるわけではありません。1のことを100倍に大きく話す輩はおります。それに騙されないように、少し勉強しましょう。

 治療には、限界があります。何でも出来るスーパーマンや神様は、少なくとも私の知っている歯科医友達にはおりません。(笑)

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