歯科矯正専門医としてのプライド

 治療というのは、解剖学や生理学などの基礎知識を土台に、治療学を学んだ後、患者さんを実際に診て経験を重ねて習得するものです。一朝一夕に身につくものではありません。

 大学での授業では、歯科矯正の基礎知識しか教えていません。治療学は一通りの事しか教えておりません。実習もわずかです。つまり、歯科矯正治療に関しては、知識も腕も未熟な状態で卒業できるわけです。私の師事した教授の言葉を借りれば、「歯科矯正治療をしたかったら矯正の医局に残りなさい!」です。大学の授業を受けただけで治療が出来ないのです。

 しかしながら、歯科医師免許を持っていれば、「歯科矯正」の標榜ができます。簡単に書くと、「看板に書ける」わけです。専門教育を受けていなくても、自由に看板に書けるわけ3です。我々にもプライドがありますから、専門教育を受けていない人とはいっしょにされたくありませんが、現行の制度では仕方ありません。

 で、どうするかと言うと、「○○矯正歯科医院」というように専門医で開業するわけです。経営的には、むし歯を削って日銭を稼いだほうがが生活は楽です。開業する時に銀行の融資係の人にさかんに勧められました。(笑)

 でもね、自分のプライドを捨てたくありませんからね。

 ヨソの歯科医院から転医してきた方は多いです。治療技術に不安を感じたり、治らないと思われた方たちです。ブラッシング指導も満足にされず、ワイヤーも変えていないで、矯正治療をしているフリをしていた歯科医と専門医の仕事ぶりは、かなり違うようですね。(あたりまえか?)

 最近多いのが、矯正専門医からの転医。2時間待たされて、5分も診療しない、担当医でない、女の人が治療している、そんな専門医からです。患者さんが待合室にたくさんいるから良いわけではありませんよ。ちょっと担当医が見ただけで、歯科衛生士でもない素人さんが5分ほど治療しているかのように振る舞って帰す、そんなので治りますか? 待合室にいる親はわからなくても、診療室にいる子供たちはよくわかっていると思いますよ。

 あと、学校歯科健診に行くと、訳のわからん装置が入っていたりします。治療技術が低く、治療経験も不足しているため、試行錯誤しながらやっているのが見てわかります。訳のわからない治療も多いですが、無駄と思われる治療もかなりあります。患者さん(ご両親も含めて)は、もう少し勉強して、だまされないようにしたほうが良いと思いますよ。無駄なお金と時間と我慢が費やされています。理にかなった治療は、話を聞けば誰でも理解できるはずです。「コレで治るの?」と疑問を感じたら、それはやはりおかしんです。


  ホームに戻る | 矯正専門医の良い点 |