ぎいちの戯言 その15:学校歯科健診の感想


  小学校の学校歯科医を拝命しており、健診もお仕事のひとつです。歯科矯正に関して、気になった点だけを書いておきます。

1)治療時期の誤り

 歯ができあがる年齢は、人それぞれですが、あまり早い時期に治療を始めて歯に力をかけると、歯の根っこが痛みます。歯根吸収が起きたり、根っこの成長を妨げる危険性があります。

 逆に反対咬合などでは、治療が遅くなると手遅れになることがあります。反対咬合でしたら、遅くとも8歳までに専門医を受診されてください。治るものも治らなくなります。

2)治療方針の誤り

 小児歯科や一般歯科では、やたらと拡大装置を入れるのが好きみたいですが、限界というものがあり、誰にでもやれば良いというわけではありません。明らかに歯のはえる場所が足らない場合は、あきらめた方が本人の苦痛は少なくてすみます。

 努力して使って、その効果が表れてくれたよろしいですが、そうでない場合、子供さんは歯医者不信になります。

3)治療装置の誤り

 顎の成長を理解していない歯医者は、誤った治療装置を選択します。治るものも治りません。いや、かえって悪化します。専門教育を受けていない素人の治療でも、患者さんや保護者の方は分からないかもしれませんが、少し勉強して、少し経過を注意深く観察すれば、わかります。「あ、治らないな。」と。

4)歯みがき指導の徹底

 矯正装置が入りますと、歯みがきがしにくくなります。しかし、装置を入れたあとのケアを全くしていない歯科医院が多くあります。措置を入れることにより、口の中が汚れ、新たな虫歯を作ってしまいます。装置を入れれば矯正治療ではなく、トータルに患者さんを診て、歯科矯正治療なんです。

5)歯だけではない

 装置を入れることによる、精神的な苦痛。しかし、治る喜び。心の動きも読んでいかないといけません。語りかけ励ましも大事。

 舌べろの癖があれば、これも修正しなくてはいけません。舌小帯(舌べろのヒモ)が短ければ、長くしてあげる手術も必要です。悪習癖があれば改める。身体によいことは、どんどんお勧めする。(選択するかどうかは、ご本人や保護者が決めることです。)

 治療経過、予後などの情報も大事。分からなければ、ちゃんと質問すること。


まとめ

 適切な治療を適切な時期に行う。治る範囲をについては、あらかじめ説明を受け、その通りにならなかったら質問をする。ちゃんと答えられなければ、その程度の実力。治療は何でもそうですが、医者任せではなく、共同作業です。協力してやると、きれいで早く治ります。何年もダラダラやるもんではありません。

余分な治療、誤った治療は、歯だけでなく、子供の心をゆがめます。また、治療費、通院時間が結局無駄になります。勉強して、検討して、治療を受けるかどうか、決めて下さい。


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