ぎいちの戯言 その16:医療における逆陶太
現在の歯科医師は、それほど儲かる仕事ではありません。保険診療を中心にしていれば、保険点数が増点しない限り収入は増えないわけです。ご存じのように政府の医療財政は逼迫しているため、2002年にはマイナス改正がされました。それ以外にも、点数の包括制などで締め付けが厳しくなっているのが実情です。
保険診療での収入が減った分を、埋め合わせしようという力学が働きます。具体的には、「自費治療」という保険外治療です。保険治療では、使うことができる材料の取り決めがあります。前歯の白い歯は保険治療ではプラスティックしか使えません。長期間色が変わらない、天然歯と同じ輝きをもつ歯はセラミック製なのですが、これは自費治療(保険外治療)となります。
景気の良い時は、この自費治療で歯医者さんは息をついだわけです。
しかし、最近は景気が悪いのでこういった審美歯科も、少し大変になってきております。そこで、歯科矯正治療やインプラントなど専門知識が必要で、これまで手を出してこなかった分野にまで手を出してくるようになりました。
治療技術も知識もなく、自分で勉強するのも嫌な歯科医は、アルバイトを大学の医局から呼んでやってます。こういった所は1週間に1回とか、1月に一回の「矯正の日」があるわけです。
または、生半可な知識でシロートの歯科矯正治療をやる人もおります。
いずれの場合も、保険診療で施設の維持費を出しておりますから、アルバイトに数万円を渡せば、あとは儲けとなります。よって、非常に身入りが良いわけで、「どこでもやっている」状態になっています。(苦笑)
私たちのような専門医は施設の維持費も料金にのっけてますから、値段だけ比べられると、絶対に負けます。
で、表題の「逆陶太」です。
治療技術や、治療内容が明らかに勝っていても、値段という経済的な要素により、専門医が負けて消滅してゆく可能性があるわけです。東京のある先生は、「最盛期の3分の1」と、涙しております。
逆陶太が起きれば、最終的に困るのは患者さんです。本当の意味での専門医が消えて無くなってしまうわけですから。シロート矯正の歯科医も困りますね。後始末をしてくれる所がなくなっちゃいます。