ぎいちの戯言 その33:歯科矯正治療の保険点数  (平成20年3月18日加筆修正)


   外科矯正治療と口蓋裂の歯列不正に関しては、施設基準(後述)をみたす医療機関では、歯科矯正治療が保険適応になります。今回は、このことについて書きます。

  昨年(平成18年)4月の保険点数の改正(改悪!)で、マルチブラケット(歯にブラケットをつけて歯を動かす治療)の管理料(口の中の掃除をしたり、治療上の注意をしたりして、治療を管理してゆく技術料)の50点加算と上顎加算(上顎は見えにくいので、処置料に加算が500点x4回分あった)500点の廃止で、2600点 (2万6千円)の減収だったわけです。国民医療費がきついわけですが、こう言ったところにもしわ寄せが来ているわけです。

 さて、それ以前の顎機能検査、筋電図検査も診療行為に対して、点数が配分され ていません。簡単に言うと、検査をしても検査料がもらえないわけです。

 来年度、施設基準が変わり新たな検査機器が必要になるようです。最低でも250万円! それに見合った点数をつけて頂ければ文句 はございませんが。

 睡眠時無呼吸症候群の携帯用検査機器が帝人から150万円ほどで出ておりますが、保険点数が720点です。200人検査しても元が取れません。(セー ルスマンに聞いたら、あんまり売れていない様子。)個人の診療所では簡単 に買えるレベルじゃないわけですね。→個人の診療所では睡眠時無呼吸症候群(SAS)には手を出すな、 ということ???

 歯科矯正治療に置いて検査機器が最低でも250万円するとなると、上記SASの例から比例計算する と保険点数で1200点ですね。それでも200数十人検査しないとペイしません が。 →個人診療所では、外科矯正に手を出すな!ということ???

 はしごを掲げておいて、梯子をはずすような厚生労働省の政策は、今に始まった事ではありませんが、こんなことをしたら、外科手術前提の歯科矯正治療を健康保険で行う個人診療所はなくなるでしょう。(まあ、それが厚労省の狙い?) 以前は、自費で歯科矯正治療をやって、手術だけ保険というのは混合診療になるから、歯科矯正も保険に入れた経緯があるわけです。もし、矯正が自費になると手術も自費で受けなくてはいけません。(この通達もすでに出ています。)

 本人の意志とは関係なく(まあ、病気はみんなそうですが)、骨格性反対咬合になった人がいるわけで、その人がその顔貌によりいじめられたり精神的に参っている例もあります。御飯が満足に食べられないレベルの人もおります。

 治療後に「胃薬を飲まなくても良いようになりました。これが本当に噛めるっていうことですよね。」と笑顔で話してくれる、そんな方もいらっしゃいましたが、近い将来自腹で(保険=厚労省の助けを借りずに)治さないといけなくなりそうですね。

※施設基準=治療に必要な検査機器、人員(常勤の歯科医師、歯科衛生士)、院長の経歴(ちゃんと修行したかどうか)、学位論文、関連学会の所属(現在も勉強しているか)、間取り(診療する体制にあるか)などを書類にまとめ、審査を受けて認定されないといけません。この書類を出すだけでもかなり面倒です。

※外科手術を自費でやった場合、最低でも90万円かかるようです。

 患者さんのために外科手術対応の歯科矯正治療ができる施設でありつづけるべく、検査機器を揃えました。採算面から言えばはっきり言って不採算です。保険点数は、土地代の高い東京のど真ん中でも、ここ静岡でも、離島でも全国一律の点数(同じ治療費)です。広島東洋カープが選手の給料の安さを「東京と広島では物価が違うだろう。」と言い訳しましたが、地域や事情によって点数に差があっても良いのではないでしょうか?保険診療では、卒業後1年めが見ても卒業後10年目が診ても、点数は同じです。同じ診療行為でも、しっかり30分かけた治療と手抜きで5分で終わらせた治療の保険点数は同じです。お上が保険点数を決めているので仕方がないわけですが。


  ホームに戻る  | 戯言TOPへ戻る |