ぎいちの戯言 その40:学校歯科健診における不正咬合の取り扱い
日本学校歯科医会というところで健診基準を出し、文部科学省が広めているはずですが、検診結果を調べてみると、学校歯科医ごとにバラツキが激しいのです。
このバラツキを小さくするべく研修会用の資料を作っております。
歯列咬合については、一応専門ですから、一家言と言わないまでも、「これは治したほうが良いな。」という基準があります。しかし、学校歯科医会の基準では、「これは手術でもしないと治らないよ。」というものがあります。不正咬合の種類別にコメントを書いておきます。
1)上顎前突症(出っ歯):
、前歯の前後的な距離が8ミリ以上で、判定「2」(受診を勧める)になるわけですが、7歳の8ミリ15歳の8ミリでは意味が違います。年齢の要素は考えず前歯の前後的な距離だけで決めるのは困りものです。治るものも治りません。
2)前歯部反対咬合:
連続3歯以上の反対咬合(下の前歯が上の前歯の前に出た状態)があれば、健診基準は「2」です。これは、妥当な線ですが、0ミリ、つまり正常被蓋と逆被蓋の中間は「2」でありません。歯科矯正治療をする人間としては、0ミリ(切端咬合)も反対咬合の範疇です。
2)前歯部開咬:
、健診基準では前歯に6ミリ以上の上下的な隙間が存在すれば「2」です。しかし、0.1ミリでも開咬は開咬で食物をかみ切ることができません。前歯部開咬の人に「ラーメン食いに行こう!」と誘っても、本人は嫌いな食べ物ですよ。
4)前歯部叢生
歯の幅の4分の1以上が重なっていれば「2」です。例外は犬歯がはえる以前では「1」と判定することです。妥当な線だと思います。
5)正中離開
上顎の中切歯間の隙間のことですが、健診基準では6ミリ以上開いていれば「2」です。1ミリでも正中離開だと思いますが。
例外=犬歯萌出以前では「0」判定です。
6)喪失歯の疑い
上記の正中離開の原因のひとつに側切歯の先天欠如(生まれながらにして歯がない)がありますが、6ミリ以上開いていないとチェックできないことになります。レントゲン写真を1枚撮ればわかることですが、虫歯でも歯肉炎でもない状態は健診の対象外となっています。