ぎいちの戯言 その71:早期(小児期)における出っ歯の治療は無駄か?


 読売新聞の医療ルネサンスという特集で、2016年10月20日の記事。Yahooニュースなどでもとりあげられておりましたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか? 今回のネタは、以下です。

・出っ歯の早期矯正は不要…永久歯後でも効果同じ

というのが出てます。

 詳細はこちらから、PDFで読めます。

 一番最初のページに「一般歯科医師編」と、かいてありますから、専門教育や研修を受けていない歯科医師向けであることはわかります。

 が、Yahooニュースや読売新聞を読んだだけの一般人には、混乱を与えるだけでしょう。現在使っている装置の効果がないということは、時間とお金の無駄を意味しますから。

 上記PDFの突っ込みどころとしては、文献がすべて外国のものであることです、白人と日本人(黄色人種)では頭の形、成長パターン、成長量が違いますし、花粉症など歯科以外の要素もあります。そして、結論づけの文章では「我々の経験から」とか書いてありますが、日本人を診た感覚で判定してます。

 日本人を長期的に追ったデータがないので、白人のデータの論文を使ったのでしょうが、ガイドラインを名のるほどの内容でしょうか?

 私の症例を張っておきます。第1期治療で歯列の拡大をして、咬合高径をあげてから、第2期治療では非抜歯でマルチブラケット法で治してます。

初診時(2013年3月25日)

上顎前突症+前歯部叢生+過蓋咬合

つまり、出っ歯では並びガタガタ、かみ合わせも深い

右の写真のように、真横から見ると出っ歯がよくわかりますね。

保定半年(20165月30日)    

 個人的な見解、考え方ですが、正常な成長を邪魔している要素、鼻呼吸障害であるとか、上の症例なら上顎側切歯の口蓋側転位(内側にはえている)による下顎前歯のロック(この位置でしかか咬めない状態)があれば改善してあげたほうが良いと考えます。

 普通の病気でもそうですが、ある程度なら自然治癒といって元に戻る力が身体にはあります。しかし、あるレベルを超えると自然に元に戻りません。ここで、医師、歯科医師の出番になり医療を加えることで元の状態にもどせます。肺炎で死にそうになっても、自然治癒を期待しますか? 何もしないで治ったら、奇跡ですが、奇跡はそうあるもんじゃありません。

 専門性って、その手助け(医療)の必要性を的確に判断できるかどうかだと思います。そして、治療の引き出しをたくさん持っていて、症状によって適切な治療法を選択できるかどうか何です。とりあえずやってみようとか、金儲けのために訳のわからない装置をいれたりはしません。

 あと、上記PDFでは機能的な問題については言及してません。評価基準がないため、評価できないのが本当ですが、口を閉じられることで口輪筋が発達しますし、舌が正しく使われることで歯列の自然な拡大が起こります(歯科矯正治療で拡大した場合、それが舌によって維持されます。)

 上の症例のように、第1期治療をやることで、第2期治療が簡単に終わるようになったり非抜歯治療が可能になったりすることもあります。この辺は、見通しがどこまでみえているかですが、これも専門性の問題になってきますね。

 


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