「恋素の発見」
「1998年9月19日。ハンガリーのブダペスト国立脳内麻薬研究センターで、アドレナリンの研究中に148番目の
新元素が発見、報告された。
それは大気中に含有され、呼吸によって人体内に摂取されるが、ある種のアドレナリン分泌時に摂取すると、
限られた条件下では前頭葉内で結合され、その化学反応によって起こる感情の変化が「恋愛」であるという衝
撃的な報告であった。
恋愛を起こす元素ということで新元素は恋素と名付けられ、大脳生理学会内は元より、世界文学家協会やバ
チカンをも巻き込む大論争を巻き起こしたが、様々な人種や年齢の男女による数千回に渡る実験が行われた結果、
学会は恋素の存在を正式に認めることとなり、プロジェクトチーム並びに最高責任者ヤン・スコリモフスキー博
士は20世紀最後のノーヴェル化学賞受賞者と成った。
「ハムレットのナイトライフ」で有名なイギリスの作家ロッド・マッキン・ジュニアは言語学上の「サピア・
ウォーフの仮説」に於ける、イヌイットが雪や氷に対して、白と銀のみならず、14色の表現を持っていることを
引き合いに出し、その中でも、「アザラシの胃の中のカキを食べて歌を歌うとピンク色の雪が振って海がピンク
色になる」という伝承について、これが恋素の存在を裏付ける証拠とした。従来これはオーロラと栄養の偏りに
よる急性の色覚異常とされていたが、調査の結果、南極の一部では恋素を大量に含んだ大気が発生することが確
認されたからである。
又、90年代に爆発的に流通したエクスタシーに代表されるラブドラッグや、ポピュラーミュージック和声学上
の周波数変化による感情の高揚等、周辺文化との関連研究は現在でも後を絶たず、恋素の発見は化学界のみなら
ず、20世紀最後にして最高の発見と成ったのである。」
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