いつからでしょう。こんな私になったのは・・・。
何かに脅え、周りの物全てを拒絶する臆病な私。
呪術を学び、他人を見返そうと思いました。でも、私の心が満たされる事はありませんでした。えも言われぬ寂しさだけが募る、空しい日々だけが流れていったんです。


自分が嫌でした。
小さくて、臆病で、弱い自分が。そんな自分を変えようとしない。変わる為の1歩が踏み出せない。
いっそ、自分で命を絶とうと思った事もありました。でも、思うだけ。思っても、それを実行する事も出来ない。


子供の頃、理由の無いいじめにあいました。
私は何もしていないのに、皆が私をいじめるんです。
・・・いえ、本当は何か理由があったのかもしれません。ただ、それを認めたくなかったんです。認めてしまうと自分が消えてしまうような、そんな言い知れない怖さから逃げていたんです。


「人は皆、何らかの意味を持って生まれてくる。この世に必要の無い人間はいない」
小さい頃、両親に良く言われました。でもそんな言葉、信じられませんでした。
「必要が無い人間だからいじめられる。私が生まれてきた意味は、人にいじめられる為・・・」
いつの頃からかそんな風に考えるようになり、自分がどんどん嫌になって行きました。


でもそんな時、あの人に出会ったんです。
あの人は私に教えてくれました。人を信じる事、人を愛する事、そして、未来へ歩き出す為の勇気を・・・




ブルーブレイカー
オリジナルショートストーリーACT.4

サージュ編「勇気を、ありがとう・・・」





あの人に初めて出会ったのは、私が呪術の勉強の為、ルーインの古代遺跡に行った時でした。
ちょっとした手違い(ホントにちょっとだけなんです。信じてください・・・)で、遺跡を半分ほど吹き飛ばしてしまったんです。 その時の爆発に巻き込まれたのがあの人でした。

(きっといじめられる・・・)
そう思って、私一生懸命に謝ったんです。でもあの人は怒りませんでした。
それどころか、「呪術ってすごい威力だね。こんなのを使えるってことは、きっと君もすごいんだろうな」って言ってくれたんです。

私嬉しかった。だって、生まれて初めて人に誉められたんです。
今にして思えば、私はこの時からあの人にひかれていたのかもしれません。
なんて、ちょっと恥ずかしいですけど・・・

それからは、彼がいつも一緒にいてくれました。嬉しい時も、寂しい時も、そして辛い時も。

だから、あの時は本当に心細かった。あの、見た事も無い世界で1人になった時は・・・


その日、私達は2人きりで冒険をしていました。ルーインからラーワに向かっていたんです。
そんな時、あいつが・・・あのマジックマスターが私達の前に現れたんです。
マジックマスターは、彼に勝負を挑んできました。
もちろん、彼は受けて立ちました。

そして、2人の勝負に決着が着こうとしたその時、2人の戦いの衝撃が、次元の扉を開けてしまったんです。

その様子をただ見ているしかなかった私は、抗う事すら出来ずにその穴に吸い込まれて行きました。
漆黒の闇にも似た、その穴の中に・・・


気がついた時、私は1人でした。

そこは、全てが死に絶えた世界でした。人が・・・いえ、人を含めた全ての命が死に絶えていたんです。
そこにある物・・・それは不思議な金属で作られた、無機質な建物。
それはさながら、全ての生命の為に建てられた、墓標のようでした。

私は途方に暮れました。こんな見た事も無い世界に1人きり。帰る術さえもわからない。
(このまま、ここで死んじゃうのかな・・・彼に会えないで・・・)
そんな事を考えてふと空を見上げた時、私は不思議な物を見ました。
空一面に広がる、無数の光(それが、「星」と言う物と知ったのは、ずっと後の事です)。それはまるで、 空に散りばめられた、宝石のようでした。キラキラと力強く、そして美しく輝いていたんです。

その光を見た時、私は思いました。
(この輝く物を、彼にも見せてあげたい。もう1度彼に会いたい。だから、絶対に虚空の道に戻ってみせる)
って・・・

昔の私なら、考えられない事でした。
今にして思えば、私そんな風に考えられるようになったのは、彼のおかげだと思います。

そして、その時気づいたんです。
彼が、どれだけ私の支えになっていたのか。
自分が、どれだけ彼を愛しているのかに・・・


数日後、私は呪術を利用して、何とか虚空の道に戻る事が出来ました。
もちろん、彼に会う事も・・・



私、変われると思います。
たとえ、私の思いが伝わらなかったとしても、彼に貰ったこの勇気があれば・・・


だから、ケインさん。

あなたに言わせて下さい。

ただ一言


「勇気を、ありがとう・・・」


って・・・


サージュ編・完



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