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「便利な言葉」を捨てろ
NO.BIZ03-21
虹色ビジネスサプリ <覚悟を決める/自分を磨く>

 ◆「便利な言葉」

 「ボキャブラリーを増やせ」というアドバイスは良く見かけるが「ボキャブラリーを減らせ」というアドバイスは少ない。  ビジネスにおいては「ボキャブラリーを減らす」ことの方が重要であると言えるかもしれない。例えば「自己実現」。自己  啓発に関わるものにはしばしば出てくる言葉であるが、その正体はよくわからない。大抵はおざなりな文脈で使われる。   「自分で目標を立て、達成することが重要だ」         ↓   「なぜならそれは自己実現だからである」         ↓   「偉い心理学者がいて、自己実現は最もレベルの高い欲求だと言っている」         ↓   「だから自己実現は素晴しい」  こんな具合である。一体「自己実現」って、いったい何でしょう?  少々乱暴に説明すると(偉い心理学者=「マズロー」の言う)自己実現とは、   <1> 正しいこと・善いこと・美しいことのようなものに何らかの価値を見出し   <2> 私利私欲とは無関係に実行する  ことであり、単なる目標達成とは根本的に違います」。(実際のマズローの著書ではここまで明確な定義はしていない)た  だし、「自己実現」という言葉を「目標を立て、達成すること」と同じ意味として捉えること自体は特に問題ではありませ  ん。問題は、「自己実現」を批判無しに「良いこと」と捉えてしまいがちなことです。この批判無しに「良いこと」と捉え  てしまうこと。これが「便利な言葉」の最大の問題点である。別に「自己実現」という言葉に限らない。「マーケティング」  ・「オンリーワン」・「差別化」・「戦略思考」これらの「便利な言葉」は無批判に「よいこと」とされてしまいがちであ  り、ひいては思考停止を生み出します。  「便利な言葉」とは話し手も聞き手もよく意味がわかっていない言葉のことです。どちらも意味がわからないからなんとな  くその場の雰囲気で曖昧に判断されそこで思考がストップする。例えば「わが社はオンリーワンを目指す。」などと言えば  聞こえはいいが、大抵の会社は既にオンリーワンである。ただそのオンリーワンであることが顧客に対して何のアピールに  もなっていないことが大半です。オンリーワンだから良い、というものではないのです。真剣な議論であってもただのおし  ゃべりであっても「便利な言葉」が登場したときには思考停止のスイッチが押されます。これを防ぐ方法は一つ。意味のわ  からない言葉はわかるまで使わないことです。  わかるは「分かる」と書く。ほかの言葉と「分けられる」、つまり似たような意味の言葉と区別して使えるようになるまで  はできるだけ使わないようにすることが肝心だ。自己実現と単なる目標達成はどう違うのか?差別化とセグメンテーション  はどう違うのか?マーケティングとセールスはどう違うのか? これらの「便利な言葉」を区別できるようになることが重  要なのは当然だが区別できるまではこれらを使わないということが最も重要なのです。  「便利な言葉」を使わなくては伝えられないことなどはありません。「便利な言葉」を使って相手を煙にまきたいシチュエ  ーションは頻繁にあるかもしれないが、言葉は“力”ではない。むしろ言葉は“刀”である。あなたの思考のもやもやを明  快に切り分ける“刀”それが言葉である。「判断」と「理解」という漢字の成り立ちを考えてみて欲しい。「判断」は刀で  半分に断つと読める。「理解」は刀で牛とその角を整然と切り分けると読める。言葉という“刀”がなまくらでは判断力も  理解力もダメになってしまうのです。  まずボキャブラリーを減らせ。あなたのボキャブラリーから「便利な言葉」をなくすのだ。意味を理解していない「便利な  言葉」などはあなたの言葉の切れ味を鈍らせるだけです。  あとは「便利な言葉」の本当の意味を理解して徐々に「便利な言葉」をボキャブラリーに取り戻していけば良いでしょう。  そのとき、「便利な言葉」はコケおどしの模造刀から切れ味鋭い刀に変わります。  
 

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