NO.BIZ05-02 |
虹色ビジネスサプリ <人を育てる> |
◆私の一番の「メンター」が教えてくれたこと
私が30歳になったころに所属していた部署の部長に教わった最高の「教え」を紹介します。
自分が作成した業務改善に必要な提案書と稟議書の承認をもらうために部長のところへ行った時のことです。自分としては、
今回新しい取り組みを考えた提案は、本年度の予算外だったこともあり、部長にその内容を説明し、納得してもらったうえで
稟議書の承認印をもらうつもりでした。
「部長、本年度の予算外ではあるのですが新しい取り組みの提案書と、稟議書を持ってきました。」
すると部長は、 「おお、そうかわかった」と言ってほとんど内容を見ずにいきなりハンコを押してくれたのです。
さすがに私としては、自信作の提案書を持ってきたのに……これは無いよなあ…とカチンときたのです。
私は思わず部長に向かってこう言ったのです。 「部長って、いつも見ないでハンコを押すんですね」
すると、この部長さんは急に表情が変わって、私のことをにらみつけ、声の調子まで変わってこう言い放ったのです。
「いいか、失敗したら俺が責任を取る、という意味で俺はハンコを押しているんだ。何か問題があるか? それに見ていれば
わかると思うが、誰にでもこうしているわけじゃない。これは君が持ってきた案件だからこうしているんだ。俺の信頼を裏切
るなよ」
そう言われた私は、『……』『……わかりました…』と言って深々と頭を下げ、自分の席に戻る途中、「しびれた…!!」と
心の中で叫びました。と同時に、「穴があったら入りたい」というのはこういうことを言うんだと思いました。
この部長にとって、見ないでハンコを押すことは信頼の証。ハンコ一つ押す行為にも、こんなにすごい意味があるんだ。特に
今回の案件は、予算案として概要がすでに承認されているものではなく、予算外の新規の案件にもかかわらず、私を信頼して
くれていたんだということを気付かせてくれました。
そんなこともわからずに、部長にあんなことを言ってしまった自分を恥ずかしいと猛烈に反省しました。その後も、この部長
のもとで数年働きました。私のビジネスライフの中で断トツでNo.1のメンターの人です。
|