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「この中の登場人物の中で、僕は誰に当てはまるのだろう…」 よく出来た友情物の映画に出会うと、僕は必ずそう考えてしまう。 この『オーシャン・トライブ』も、5人の若者の、苦悩、挫折、葛藤そして、再出発が非常によく描かれた秀作だ。 さらに、この映画は実際に存在したサーファー、「ボブ・クック」の話しをベースに仕上げた物である事も感動を深くする。 学生時代にサーフィンを通じて、親友だった5人が、再会する所が物語のスタートだ。 “学生時代の仲間が再会し、ドラマが始まる”といった点は、名作『セント・エルモス・ファイヤー』を彷彿させる。 この物語の再会した5人も、それぞれの道を歩みながらも、やはり悩みを抱え、生きている。 入院中のボブをサーフィンに連れ出し、元気づけようとする所で、4人が集まり、馬鹿騒ぎが始まる。 最初は順調そうに見えた4人も、やがてそれぞれに悩みを抱えている事が判明してくる。 妻の妊娠に戸惑い、自分が父親になる事への不安をかかえている主人公ノア。 俳優志望ながら、パッとせず、ポルノ映画の仕事もこなすランス。 父親の後を継ぎ、外科医になる予定なのに、血が恐いシュワルツ。 ドラッグに溺れ、刑務所に服役していた経験の持ち主で、バイオリン弾きのジェブ。 そして、癌に冒され、死を待つばかりのボブ…。 ウィル・ガイガー監督自身が、あるインタビューで次のように語っている。 「学生時代は仲が良くても、社会人になって距離が自然と発生してしまう。 登場するキャラクターは、久々の再会でも背伸びした自分を見せよう、見せようと必死になります。 実際はそうではない。 真の友達には偽りの自分を見せても何の価値もない。 むしろそれが、友人との距離を助長させていった原因だった…」 死の病にあるボブを勇気付ける為の、サーフィンの旅をしながら、5人はその事に気付き、素直な関係に戻って行く。 そう…、場所、設定は違えど、これは社会人の仮面を付ける事に慣れてしまった僕達の物語なのだ。 僕自身、そして同世代の男なら、必ず感じた事があるであろう、学生時代の友人との“奇妙な違和感”を痛いほど、思い起こさせてくれる。 「本当の友情って?」・・・。このテーマが全編に渡って貫かれているのだ。 夜、浜辺で寝ながら、ノアがボブに話しかける 「ボブ…、生まれてくる子供の名付け親になって欲しいんだ」 「名付け親って事は、その子の側にいて、面倒見てやらなきゃいけないんだろ?」 「だからこそ、お前に頼みたいんだよ」 「分かった、約束するよ…」 ノアも、ボブもその約束が到底、果たされる事が無い事を分かっている。 だが、2人はわずかな奇跡を信じて、そう約束を交わす…。 このシーンには、思わず目頭が熱くなった。 5人の旅はやがて、悲劇的な形で“終り”を告げ、ノアの新しい家族の3人シーンで“再生”を予感させ終結する。 確かに、キャラクター設定、ドラマティックな展開、イルカの使い方等若干、出来過ぎな印象もある。 特にラスト近くの海の中での“葬儀”は、少々大げさで、『グラン・ブルー』の影響をも感じた。 だが、若手監督が、ほぼ無名の役者を使って、撮りきったこの映画は見ていて嫌味がなく、終った後には、すがすがしさを感じた。 20〜30代の男性には、特にお薦めな作品である。 |