『損してるのかな・・・・』 1998.8.8.
先日『ゴジラ/GODZILLA』を観に行ったときのことです。
観終わって、「なんだかな〜」という気持ちを抱いたまま劇場を出ると、
20歳前後の3人ほどの女性のグループの会話が耳に入ってきました。
「すっごく面白かったね〜」
「こんなにドキドキしたの久しぶり!」
「私も!私も!」と、みんな興奮状態。
・・・・・ああ、なんて幸せな人たちなんでしょう。
彼女たちと私とでは、きっと映画に対して“求めているもの”が違うため、
観終わった時の感想が変わってくるのでしょうが、
あんなにあからさまに喜んでいるところを見てしまうと、
逆になんだか彼女たちが羨ましくなってしまいました。
同じお金と時間を払って観ていても、彼女たちは100%それを堪能出来たわけです。
偏った目を持って観ることしか出来ない私って、
何だかすごく損しているように思えて来ました。
『週間THE MOVIEの悲劇』 1998.6.28.
『週間THE MOVIE』という本を知っていますか?
3月3日の創刊号は1960年の映画の特集、以後第2号は1961年、第3号は1962年と、
1週間に1冊づつ発行され、映画の歴史を1年ごとに紹介しているものです。
1冊500円でページ数は30ページ余りと、ちょっと高い感じもしますが、
上質の紙を使ったオールカラーという、ちょうど映画のパンフレットのような形状で、
内容が非常に濃いため、私は創刊以来、毎号購入しています。
もちろん保存版にするべく、全号大切にとってあります。
先日、いつも買うところとは違う書店でこの『週間THE MOVIE』を買おうとした時のこと。
レジのお姉さんに「袋にお入れしますか?」と尋ねられました。
たまたまその本が入る大きさのカバンを持っていた私は、無駄になる袋を断りました。
すると何を考えたのか、そのお姉さんは「では、おシルシしておきます」と
書店名の入ったカラーのセロテープの方に手を伸ばしかけたのです。
「え?」と思った私は、とっさに「あ、それやめて下さい」と言ったのですが、時すでに遅し。
「え?」と言いながら、お姉さんは私の『週間THE MOVIE』にそのテープをペッタリ・・・・。
それを見て「あ・・・」と呟く私に、
お姉さんは「私、何か悪いことしました?」とでも言わんばかりの表情で私を見ました。
仕方ないので黙ってそれをもらって帰り、
「雑誌扱いかよ〜」と嘆きながら、家で慎重にそのテープを剥がした私だったのでした。
価値の分からない人には、どうでもいいことなんでしょうね。
今度どこの本屋でも「袋にお入れしますか?」と尋ねられたら、
間違いなく「お願いします」と言おうと決心しました。
『思い出の劇場・その2』 1998.6.8.
去年まで「桑名」という町に住んでいました。
この町に「桑名キネマ」という映画館がありました。
その名前から想像出来る通り、見るからに古い劇場で、上映されている映画はいつも
ロードショーから3ヶ月ほど遅れてやってくる日本映画か、子供向けのアニメか、ポルノでした。
この町は名古屋まで電車で20分。
たった20分で、最新の映画を最新の設備で観られる場所に住む人々が、
どうしてこんな古めかしい劇場で3ヶ月遅れの日本映画を観ると思われましょう。
それでも「桑名キネマ」は頑張っていました。
なぜなら「桑名キネマ」はこの町でたった一つの映画館だったからです。
3年前、外資系シネコンの「ワーナーマイカル・シネマズ・桑名」が出来るまでは・・・・。
8年間住んだこの町で、ちょうど3年前、私は1度だけこの「桑名キネマ」に行ったことがあります。
名古屋で見逃した作品が、3ヶ月遅れでこの劇場にやってきたからです。
1階と2階で違う作品を上映しているこの劇場では、
私の観たい作品は1階で、2階ではポルノを上映していました。
変なオジサンに混じってチケットを買うと、1階の劇場には私ひとりきりでした。
座り心地が悪くきしむシート、汚れたスクリーン、最悪の音響、土曜の真っ昼間に観客ひとり・・・・。
きっとほとんど毎日、誰も観客のいない状態で「桑名キネマ」は映写機を回し続けているのでしょう。
映画が始まるまでの時間、200以上もある座席のど真ん中にポツンとひとりで座って、
私はかつてこの劇場が満員の観客で埋まっていた日と、
今観客のひとりもいないまま上映を続けている姿を、対比して想像していました。
出口で支配人とおぼしき人と会話を交わしました。
「面白かったですか?」と聞かれたので、私はとりあえず「はい」と答えました。
「次は“マークスの山”をやるからね、また来て下さいよ」と、その人は言いました。
私はにっこり笑って「はい」と答えましたが、きっともうこの劇場に来ることはないだろうと思っていました。
それから数ヶ月後のある日、私はたまたま「桑名キネマ」の前を通りがかりました。
1階は“東映アニメフェア”、2階は3ヶ月遅れの日本映画の2本立てを上映していました。
夏休みもとうに終わった9月末の平日です。
きっといつものことのように、「桑名キネマ」は誰も観客のいないまま、映写機を回し続けているのでしょう。
立ち止まって入り口に貼ってあるポスターを何気なく観ていると、あの支配人とおぼしき人が出て来ました。
映画を観る気がなかった私は、逃げるようにその場を立ち去りました。
その時は、それが「桑名キネマ」の最後の日だなんて、夢にも思わないで・・・・。
翌日、新聞の映画欄で「桑名キネマ」のところには「休館」の文字がありました。
そして、しばらく続いた「休館」の文字は、いつしか「閉館」に変わっていました。
とても長い間、町にたったひとつの映画館としてその存在を守り続けてきた「桑名キネマ」は、
外資系シネコンが町に登場したことでその役目を終えたかのように、ひっそりと姿を消したのです。
その数ヶ月前もし足を踏み入れなければきっと気にもとめなかったであろう、
ひとつの歴史ある映画館の終わりでした。
あの時、入り口に立っていた支配人とおぼしき人は、いったい何を思っていたのでしょうか。
最後の日に、なぜ“東映アニメフェア”なんて上映しなければならなかったのでしょうか。
どうして、「今日で最後です」と貼り紙のひとつもしなかったのでしょうか。
映画が娯楽の中心だった時代、きっとこの劇場で思い出をつくった人は数多く居たと思うのに。
それは、あまりにも淋しい最後だったように思えました。
それからしばらくしてその前を通った時、劇場は跡形もなく消えていて、その跡は整地されていました。
“ニュー・シネマ・パラダイス”を初めて観たのは、その直後のことでした。
だから、この映画の映画館を壊すシーンでは、何とも言えない気持ちになってしまうのです。
ともすれば、私は壊れた劇場の跡でふざけていた若者と同じ立場であったのでしょうから。
1995年9月25日「桑名キネマ」最後の日、私はこの日付をはっきりと覚えています。
なぜなら、その日は私の誕生日だったからです。
そして「桑名キネマ」は私が一生忘れないであろう、1つの思い出の劇場となったのでした。
『思い出の劇場・その1』 1998.5.15.
学生時代、映画館でアルバイトをしました。
主な仕事は入り口でのモギリと指定席のご案内役です。
その劇場は客席が1000席以上もある大劇場で、
地元では最大級のスクリーンとキャパシティを誇っていました。
それでも、人気のお正月映画を上映中の冬休みは満席で、
私は立ち見の人たちが指定席に座る人の邪魔にならないように、人員整理もやりました。
バイト料は月並みでしたが、私は映画館でのアルバイトが大好きでした。
面白い作品を観たあとの人たちの顔は、みんなとても幸せそうで、
自分もお客さんを幸せな気持ちにさせるお手伝いが出来ているような気がしたからです。
学校を卒業するまでの、たった3ヶ月間のアルバイトでしたが、
私には忘れられない思い出となって、心の中に残っています。
2月の中旬、久しぶりにその劇場に行き「タイタニック」を観ました。
人であふれ返るロビーや満席の劇場を見ていると、
アルバイトをしていた当時の自分が思い出され、懐かしい気持ちになりました。
そして、大スクリーンで観る「タイタニック」に大いに感動し、
劇場の方たちに見送られながら、私もとても幸せな気持ちで劇場を出ることが出来ました。
その劇場が、客席を600席と150席に2分割した
2スクリーンの劇場に全面改装されるというニュースを知ったのは、それから2週間後のことでした。
地元で最大級の劇場が姿を消してしまうこと自体、残念で仕方ないのですが、
それよりも、学生時代の思い出の劇場が姿を変えてしまうということが
私をとても寂しい気持ちにさせました。
そしてそれからすぐ、その劇場は改装工事のために休館となりました。
その劇場に代わり、「タイタニック」は別の劇場で上映を始めました。
私は好きな作品は2度3度と劇場に足を運んで観るタイプの人間です。
「タイタニック」も私にそうしたいと思わせるほど感動した作品なのですが、
ぜひもう一度観たいと思いながらも、なかなか劇場に足が向きませんでした。
自分でも何が私にストップをかけるのか分かりませんでしたが、
あれから2ヶ月が経ち、最近になってようやくその理由に気づきました。
きっと私の中で、「タイタニック」を思い出の劇場で最後に観た映画として
大切にとっておきたいという気持ちがあったからだと思います。
そしてその気持ちに気づいたと同時に、
私はもう一度「タイタニック」を観に行くことをやめました。
『映画に求めるもの』 1998.5.1.
最近ふと思いました。
“私は何故こんなに夢中になって映画を観続けるのだろう”
約2時間、私を架空の世界に連れて行ってくれるから?
それじゃ、ただの現実逃避ですよね。
でも、実際そうなのかもしれません。
毎日の生活の中では、本当に美しいものを見て感動できることってほとんどないし、
心から面白いと思える出来事に出会えることも滅多にありません。
“感動”“笑い”“爽快感”
普段の生活ではなかなか得ることが出来ないそれらを
映画は、いとも簡単に与えてくれるから
私は映画が好きなのです。
“映画に求めるもの”それは人それぞれに違うでしょうが、
私の場合は、良い作品を観たあとの心地よい余韻だと思います。
劇場を出たあとも、自分だけがまだ違う世界に居るような感覚が大好きで、
それを得たいがために劇場に通っているのかもしれません。
『先入観』 1998.4.12.
映画を観た時の印象って、先入観によって大きく変わりますよね。
例えば「ポストマン」。
これはまれに見るとんでもない作品でしたが、私は“とんでもない作品”だという前情報を入れていたので
かえってその“とんでもない部分”を、楽しんで観ることが出来ました。
もしこの作品に関してなにも情報を入れず、真っ白な状態で観に行っていたとしたら、
私の本年度ワースト1は間違いなかったでしょう。
でもこの作品を“とんでもない作品”として楽しんで観てしまった私は、
もう“ワースト映画”のものさしでは計れなくなってしまったのです。
予想通りに事が進む映画ほどつまらないものはありませんが、
逆に自分の期待しているものと全く違うものを見せられた時には、
許せない気持ちになってくることがあります。
例えば、近未来を描いた普通のSFだと思って観た「エスケープ・フロム・LA」が
ただの“アホアホ映画”だった時や、
夫婦愛を描いた感動作だと思って観た「ロザンナのために」がブラック・コメディだった時などは、
怒りさえ感じてしまいました。
当然私の中では評価が低く、ワースト映画の上位にランクされる訳です。
“アカデミー賞受賞”と聞いただけで、その作品にものすごく期待してしまったり、
前作が良かった監督の次の作品には、前作以上のものを期待してしまい、
決してその作品が良くない訳ではないのに、なんだかがっかりしてしまうこともありますよね。
全ての作品を公平な目で観るには、余計な先入観は捨てるべきなのでしょうが、
限られた時間とお金を使って観る映画です。
少しでも多くの情報を入手して、面白そうなものを厳選して観たいと思うのが事実です。
先入観に伴う作品の評価の不公平が出てくることは、仕方ないことなのかもしれません。
『ありがとうございます』 1998.4.4.
「まるこっちのページ」のご訪問者数が、1000人を超えました。
何度も来て下さった方、初めて来て下さった方、本当にありがとうございます。
私が目指しているページは、1000人の人がただ通り過ぎるだけのページではなく、
たまたま立ち寄ってくれた方が、ふと足を止めて下さったり、
出来るだけ多くの方が何度も繰り返して来て下さるようなホームページです。
そのために、これからも出来るだけたくさんの作品を観て皆さんに情報の提供をして行き、
良い作品を観た時の感動を分かち合いたいと思っています。
これからも「まるこっちのページ」をよろしくお願いします。
『チラシ考』 1998.3.28.
先日はパンフレットのことについて書きましたが、今回はチラシについて書きたいと思います。
皆さんは劇場の入り口でもらうチラシをどうされていますか?
チラシは自分の意志で買うパンフレットとは違い、自分の意志に関係なく劇場が勝手にくれるもの。
ましてや自分が興味のない作品のものなら、その場でポイっ!の人も多いのではないでしょうか。
ところがこのチラシ、ちゃんととっておくと後々結構面白いんですよ。
私が映画館に通い始めた頃のチラシを引っ張り出してきたら、色んなものがありました。
「E.T.」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「トップ・ガン」「ランボー」「インディ・ジョーンズ」など
現在も人気のある作品のものや、現在“スター”と呼ばれている人の代表作のチラシを持っていると、
それだけでなんとなく嬉しくなってしまったり、
聞いたこともないようなB級っぽい映画に、有名な俳優が出ていたのを発見出来たり・・・・。
そこで私の持っているちょっと前の映画のチラシから面白かったものをひとつご紹介しましょう。
「キッドナップ・ブルース」 主演:タモリ一義
“タモリ一義”ってねぇ・・・・(^^;)。10年以上前のものでした。タモリが若い、若い。
きっとその頃、森田一義氏は役者としてそう名乗っていらっしゃったのでしょう。
別に私はこの作品を劇場に観に行った訳でも、タモリに興味があった訳でもありません。
たまたま観に行った映画館の入り口でもらった、ただそれだけです。
でもこんなチラシ、今だに持ってる人は珍しいですよね、きっと。
ディカプリオのデビュー作のチラシでもあるまいし、このチラシに価値があるとは思いませんが、
なんとなく珍しいものを持っているという満足感があります。自己満足の世界です。
皆さんも今は何の価値もなさそうなチラシでも、ちゃんととっておくと
数年後には面白いものになっていて、こんな自己満足を味わえるかもしれませんよ。
『パンフレット考』 1998.3.17.
最近、あまり映画のパンフレットを買わなくなりました。
・・・・というより、“面白い”と思えた作品でも、それが直接“パンフが欲しい”という気持ちに
結びつかなくなったような気がします。
私が映画館に通い始めたのは、“学生”の前売券が1000円だった頃でした。
当時のパンフレットの値段は300円から400円。
映画を観たあとは、たとえその映画がつまらなくてもパンフを買って帰りました。
何か映画を観た“記念”のように思っていたような気がします。
おかしなものですが、当時買ったパンフを引っ張り出すと、
観た記憶すらないような作品のパンフまで出てくるのです。
当時はちょうどビデオデッキが家庭に普及し始めた頃で、
レンタルビデオ店もまだわずかしかなく、もちろん衛星放送も始まっていません。
今なら劇場公開から半年もすれば、レンタルビデオでまたその作品に出会えるし、
お気に入りの映画をビデオテープ、LD、DVDなどでいつも手元に置き、
好きな時に取り出して観ることだって出来ます。
だけどその頃は、パンフレットこそがお気に入りの映画を自分の手元に置いて
その作品の感動に再び出会える、唯一の手段だったのです。
だから、大好きだった作品のパンフレットは何度も読み返し、
他のどんな作品のパンフよりもボロボロになっているんです。
“面白い”と思えた作品が、直接“パンフが欲しい”という気持ちに結びつかなくなったというのは、
私の中でパンフレット自体の持つ価値が下がってきたからなのでしょう。
『ごあいさつ』 1998.2.26.
はじめまして。“まるこっち”こと、まるこです。
オープンしたばかりの私のホームページに来て下さって、ありがとうございます。
私は“何もかも上手くいってジ・エンド”という映画はあまり好きではありません。
かと言って、悲しいだけの結末も好きではありません。
私が好きな映画は、状況的には決してハッピーエンドではないけれど、結果的に良かったなって思える映画。
私はそれを自分で“精神的ハッピーエンドの映画”と呼んでいるのですが、
そういう、ちょっと“毒”のあるハッピーエンドの映画が好きなのです。
このページでは、私が観た色んなジャンルの映画を紹介していきたいと思っています。
かなり勝手なことを書いていますが、大目に見てやって下さい。