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私が過去に観た映画から、レベル4以上の評価をしたオススメ作品を紹介します。


パウダーすべてをあなたにマーズ・アタック!
〔FOCUS〕逃亡者君さえいれば/金枝玉葉戦火の勇気

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パウダー
1995年・アメリカ
主演:ショーン・パトリック・フラナリー メアリー・スティンバーゲン
監督:ビクター・サルバ
テキサス州の郊外の農家から、老人の死体が発見された。自然死だった。
駆けつけた保安官は、老人と一緒に住んでいたはずの孫息子を捜すが、
今まで誰もその姿をはっきり見たことはなかった。
地下室の暗がりにパウダーと呼ばれていたその少年(ショーン・パトリック・フラナリー)を見つけ、
保安官たちは息を呑む。
雷に打たれた母親の体内から生まれたその少年は、全身が真っ白で体毛が全く無かったのだ。
生まれてからずっと人目を避けるように地下室で生活し、学校にも通っていないパウダーだったが、
知識は全て本から身に付け、その本をまる暗記するほど優れた知性を持っていた。
青少年更正施設の校長・ジェシー(メアリー・スティンバーゲン)は彼を引き取ることにするが、
施設の少年たちは彼に好奇の目を向け、やがて彼をいじめ始める。
しかし、パウダーには超能力という特殊な力があり、それを見た少年たちはただ呆然と立ち尽くす。
パウダーは町の高校に通い始めるが、彼を理解していく人間が増える一方で、
普通の人間と違う自分に向けられた好奇の目と攻撃が、次第に彼を傷つけていく。

特異な姿と体質、そして超能力を持っているため、人々から好奇の目を向けられた悲しい少年の物語。
しかし純真で心優しい彼の本質に触れ、次第に人々は彼を理解して行きます。
『シザー・ハンズ』と『フェノミナン』を足して2で割ったような作品とも言えるでしょう。
私が一番好きなのは、狩りをして鹿を撃った副保安官に対し、
パウダーが鹿の断末魔の苦しみを自分の体を通して彼に伝えてやるシーン。
そして事の顛末を聞いた保安官が、彼の手を借りて意識不明の妻の言葉を聞くシーンです。
劇場では滅多に泣かない私も、このシーンでは涙が止まりませんでした。
『シザー・ハンズ』のエドワードが、最後に自分のいるべき場所に戻っていくように、
パウダーもまた、自分のいるべき場所へと帰って行きます。
“生きているものは全て繋がり、魂は万物に宿る”
という彼の思想における精神的ハッピーエンドだと、私は思うのです。

レベル4

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すべてをあなたに
1996年・アメリカ
主演:トム・エヴェレット・スコット リブ・タイラー
監督:トム・ハンクス
1964年アメリカ、ペンシルヴァニア州の田舎町エリー。
父親の電器店を手伝うガイ(トム・エヴェレット・スコット)は、
地元のバンドコンテストの当日に骨折したメンバーの代役で“ワンダーズ”のドラムを叩くことになる。
リーダーのジミー(ジョナサン・シャーチ)を中心にした4人組バンド“ワンダーズ”は、
そのコンテストに見事優勝、早速、町のライヴハウスに出演が決まり人気者になった。
彼らに目をつけた常連客ホレス(クリス・エリス)がラジオやテレビに売り込みを開始し、
やがて彼らは大物プロデューサー、ミスター・ホワイト(トム・ハンクス)とメジャー契約をする。
彼らはジミーの恋人フェイ(リブ・タイラー)を連れて、全米のツアーへと出掛け、
デビュー曲“That Thing You Do!”は、たちまちヒットチャートを急上昇するが、
やりたくない仕事までやらなければならない状況にジミーは苛立ち始め、
やがて4人のメンバーの気持ちがバラバラになってしまう。

トム・ハンクスの初監督作品なのですが、彼は監督だけでなく、
脚本から主題歌の作詞・作曲までをこなしています。
内容はアマチュアのバンドがひょんなことからスターダムにのし上がり、
有頂天になっているうちに色んなものを無くしていることに気付くと言った
とっても単純なストーリーなのですが、私はこの作品が大好きです。
初期のビートルズが大好きな私にとって、ビートルズまがいのサウンドの主題歌
“That Thing You Do!”は聞いていて気持ち良いのです。
劇中のこの曲の録音シーンで、生のハンドクラップを入れるシーンなんて大好き!
デジタルミュージック全盛の今に、こういうアナログな音楽を聴くとホッとします。
トム・ハンクスがビートルズにオマージュを捧げたと受け取れるこの作品は、
劇中にも“ビートルズ”という言葉が何度が出てきます。
つまり、ワンダーズの前にはビートルズは確実に存在しているわけで、
ビートルズの真似事のような音楽をやって、一曲で消えていった幻のバンドという設定なのでしょう。
リーダー、ジミーの恋人役のリブ・タイラーもとっても奇麗。
彼女がラジオから初めてワンダーズの曲が流れたのを聞いて大喜びするシーンも大好き!
とにかく観ていてやたらハッピーになれる作品。おすすめです。

レベル4

onpu

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マーズ・アタック!
1996年・アメリカ
主演:ジャック・ニコルソン グレン・クローズ他 多数
監督:ティム・バートン
地球に火星からの訪問者が接近していることが分かった。
ホワイトハウスでは、大統領デイル(ジャック・ニコルソン)を中心に、
彼らにどう対処するかの討議が続けられた。
宇宙生物学者のケスラー教授(ピアース・ブロスナン)や
報道官のロス(マーティン・ショート)らの意見で、
大統領は彼らを友好的に迎え入れることにする。
しかしアリゾナ州の砂漠に降り立った火星人たちは、
歓迎の式典に参加した人々を皆殺しにしてしまった。
その光景をテレビの画面を通じて見ていた大統領は、
彼らに自分たちの意思が通じなかったのは文化の違いが原因だと信じ、
再び友好をはかるために彼らを議会へと招き入れることにする。
ところが火星人たちは議会でも大暴れし、
ついには世界各地に飛来してやりたい放題を始めるのだった。

人間たちが火星からの訪問者に徹底的に振り回されるパニックもの。
ばかばかしいと言えばそれまでなのですが、そのばかばかしさがたまらなく可笑しい作品です。
SF映画で出てくる宇宙人は何故か英語を話し、大統領はいつも英雄扱い、
そしてどんな危機に瀕しても、主人公は絶対に死なない・・・・。
そんなハリウッド映画の“お約束”を見事に打ち破っているのがこの作品の面白さなのです。
この作品に出てくる火星人はちゃんと“火星語”を話し、
それを英語に翻訳するのにお粗末な“宇宙語翻訳機”なるものを登場させる。
ジャック・ニコルソン扮する大統領は徹底的なアホで、
この大統領の馬鹿げた判断が、事をどんどん大きくして行く。
有名なハリウッドスターたちが次々とあっけなく殺されて行き、
ハリウッド“二番手”のような俳優たちばかりが生き残る・・・・。
監督のティム・バートンの感性に感服です。
ジャック・ニコルソン他、グレン・クローズ、ピアース・ブロスナン、
マイケル・J・フォックス、ダニー・デビート、ナタリー・ポートマン、パム・グリアーなど
多数のハリウッドスターがほぼ横並びの役柄で登場させていることが、
主役の“火星人”の印象をより引き立てています。
色んな映画を観ていれば観ている人ほど、この作品の面白さが分かるでしょう。
「ID4」が面白くないと感じた人に、特にオススメしたい作品です。

レベル4

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〔FOCUS〕
1996年・日本
主演:浅野忠信 白井晃
監督:井坂聡
盗聴マニアの金村(浅野忠信)が、テレビ局の取材を受けることになった。
その内向的な青年は、自分の小型の盗聴器を手にして、盗聴マニアの実態を生き生きと話し出した。
インタビューをするうち、ディレクターの岩井(白井晃)は、金村の私生活に興味を抱くようになる。
金村は自分の私生活へテレビクルーが入り込むことを強く拒むが、
岩井の頭の中には、もはや彼をどこまで裸に出来るかということしか無かった。
口八丁手八丁で金村をクドき、ついに盗聴器を載せた彼の車に同乗することに成功する。
色んな電波を傍受しながら車の中で取材を続けていた彼らは、
偶然ヤクザの拳銃の密取り引きの会話を聞いてしまう。
盗聴の取材中に舞い込んで来た大スクープとばかり、
金村やクルーの制止を振り切って、岩井はその拳銃の隠し場所へと向かう。
そして、岩井は“拳銃”という格好の小道具を得て、ヤラセを創作するべく金村を挑発する。

TV局の行き過ぎた取材やヤラセが生んだ悲劇を描いた、非常に怖い作品です。
金村という男を取材する一台のTVカメラが映し出す主観映像のみで構成され、
全編のほとんどがワンシーン、ワンカットで撮影されているという、変わった手法の作品です。
特にオープニングの取材シーンは、10分もの長回しをワンカットで撮影されていて、
浅野忠信の異様なまでもの自然な演技が手伝って、
芝居を見ているのかドキュメンタリーを見ているのか、分からなくなってしまうほどです。
欲望にかられた人間や、窮地に立たされた人間の心理描写も見事だし、
内向的な青年が“事件”をきっかけに豹変する姿を演じる浅野忠信が上手いです。
彼の作品は色々観ましたが、この作品がベストと言っても過言ではないでしょう。
脚本、演技、映像と、どれを取っても文句の無い作品です。
もうひとつこの作品を観て感じたことは、金村のような盗聴マニアが世には氾濫している恐ろしさです。
彼らはそれを“盗聴”とは言わず、“傍受”だと言います。
彼らはそれを悪用するわけではなく、ただ他の人に聞かれていると思っていない会話を盗み聞くことを楽しみ、
それを聞くことの出来ることに優越感に浸っているのです。
悪いことをしている意識は全く無く、
「聞かれてマズい電波を流す方が悪い。聞かれたくなければ流さなければいい」と開き直るのです。
彼らは誰も傷つけず、自らの楽しみのために盗聴を繰り返し、
盗聴されている人は、聞かれていることを知らず平穏に暮らす・・・・。
“面白い”というよりは、色んな意味で考えさせられる作品です。

レベル5

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逃亡者
1993年・アメリカ
主演:ハリソン・フォード トミー・リー・ジョーンズ
監督:アンドリュー・デイビス
シカゴの医師キンブル(ハリソン・フォード)の妻が自宅で殺された。
キンブルは自宅に侵入していた“片腕の男”ともみ合ったと警察で証言するが、
警察は彼が保険金目当てで妻を殺したと断定、
裁判の結果、キンブルは第一級殺人容疑で死刑の判決を下される。
妻殺しの濡れ衣を着せられたまま彼は拘留されるが、
護送中のバスの中で、脱走を企んだ他の囚人たちと警察官が争い合いになり、
そのはずみでバスは谷に転落してしまう。
大破したバスから脱出したキンブルは、怪我を負いながらそのまま逃亡し、
本当の犯人である“片腕の男”を単独で捜し始める。
一方、逃亡したキンブルを執拗に追いかける連邦保安官ジェラード(トミー・リー・ジョーンズ)は、
彼の足跡を辿るにつれて、“片腕の男”の存在とキンブルの無実を確信し始める。

この作品のジャンルはサスペンスになるのでしょうが、
すごくしっかりとした人間ドラマが出来ています。
それは、キンブルとジェラードという二人の人物像が、きちんと描かれているからだと思います。
キンブルが転落した護送バスの中から、怪我をして動けない警察官を運び出すシーンや、
掃除夫になりすまして入り込んだ病院で、怪我をした子供を手術室に運ぶシーンは、
彼が“真の医者”であることを感じさせ、自然に彼に肩入れして作品に入り込んでしまうのです。
またキンブルの頭の良さもこの作品を面白くさせていますし、
彼が医者であるからこそ、その頭の良さが不自然に見えません。
ジェラード保安官も脇役でありながら、その断片的な出演シーンだけで
彼がどんな性格の人物なのかがよく分かります。
ジェラードを演じたトミー・リー・ジョーンズが、
この役でアカデミー助演男優賞を受賞したのも充分に納得出来ますし、
この作品の続編としてジェラードを主役とした「追跡者」という作品を作ろうという
企画が持ち上がるのも、分かる気がします。
ラストの車の中でのキンブルとジェラードのシーンが感動的です。
最後の最後で泣いてしまった作品です。

レベル5

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君さえいれば/金枝玉葉
1994年・香港
主演:アニタ・ユン レスリー・チャン
監督:ピーター・チャン
ウィン(アニタ・ユン)は、女性人気歌手ローズ(カリーナ・ラウ)の大ファンの女の子。
ある日彼女は、ローズのプロデューサーで恋人でもあるサム(レスリー・チャン)が主催する
新人男性歌手発掘オーディションのポスターを見かける。
会場に行けばローズとサムに会えると思った彼女は、男装をして参加するが、
オーディションでまともな人材に出会えなかったサムは、どさくさでウィンを合格にしてしまう。
女性であることを隠しながら、ウィンはサムのマンションに同居してレッスンすることになり、
そこで彼女は、理想のカップルと信じていたサムとローズの関係が、
表向きほど上手くいっていないことを知る。
サムと生活を共にするうちに、ウィンはサムのことを好きになってしまうが、
サムとローズの仲を壊したくない彼女は、自分が女性であることを告白出来ないジレンマに苦しむのだった。
一方、ウィンと同居し始めてから生活に張りが出てきたサムは、
知らず知らずのうちにローズよりウィンに惹かれている自分に気づき、
自分がゲイなのではないかと思い悩む。

香港のスターが共演する、奇妙な三角関係を描いたラブ・コメディです。
特にウィンに持ち上がった“ゲイ疑惑”のくだりはとても面白く、
ついにはウィン自身の口から“僕はゲイなんだ”と言わせてしまい、
それをサムが立ち聞きしてショックを受けるという辺りは、コメディとしてとても上手く出来ています。
しかしただのコメディにとどまらず、ピアノを弾くサムにウィンが恋をしてしまう瞬間や、
自分が女性であることを告白出来ないせつなさ、
ウィンの不思議な魅力にどんどん惹かれて行く自分に思い悩むサムの気持ちなどが、
とても丁寧に描かれています。
存分に笑わせて最後にホロリとさせる、そんな作品です。

レベル4

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戦火の勇気
1996年・アメリカ
主演:デンゼル・ワシントン メグ・ライアン
監督:エドワード・ズウィック
湾岸戦争の最中、米軍のサーリング中佐(デンゼル・ワシントン)は味方の戦車を誤認して攻撃し、
親友のボイヤー大尉を死に追いやってしまった。
サーリングはワシントンに戻るが、軍は彼の仲間への砲撃の事実を隠し、
彼に軍のセレモニーや名誉勲章を扱う部署での事務職を命じる。
サーリングが最初に与えられた仕事は、湾岸戦争の救出ヘリのパイロットで
戦地で勇敢に戦って戦死したウォールデン大尉(メグ・ライアン)の名誉勲章授与に関する調査だった。
親友を殺した罪の意識から抜けきれぬまま、サーリングは彼女の調査を始める。
しかし、彼女と一緒に行動していた部下たち一人一人に当時の状況を聞いてみると、
彼女の死について、皆それぞれに違う証言をするのだった。
戦地で一体何があったのか。彼らは何を隠しているのか。
調べるほどに疑問は深まる一方で、調査にのめり込み過ぎたサーリングは担当から外されてしまう。
しかし納得がいかない彼は、孤立無援になりながらも、独自にその死の謎を解明しようと決意する。

基本的に“戦争もの”は苦手な私なのですが、この作品はちょっと違いました。
まず、一人の女性士官の“死”をめぐるミステリーになっていること。
そしてその裏には2つの人間ドラマが描かれていることです。
一つはウォールデン大尉の“死”にまつわるドラマ。
そして、もう一つはそれを調査するサーリング中佐自身のドラマです。
自分が犯した過ちに悩みながら、真実を隠すことで心の傷をより深めているサーリング中佐。
彼は自分と同じように真実を隠そうとするウォールデン大尉の部下たちに出会い、
彼らもまた、真実を隠すことによって心の傷を深めていることを知ります。
そしてその真実を追求していくことにより、
サーリング自身も真実を伝えることの重要さに気づいて行くのです。
感動的な作品でした。

レベル5

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