マレビトと沖縄


わたしと沖縄との出会いは、1991年の秋のことです。

沖縄に最初に行ったのは、その当時在籍していた会社の社員旅行でした。
泊まったのは西海岸のリゾートホテルのひとつで、そこのプールで泳いだり、みんなと一緒にゴルフでもしていたら、多分「ふーん、こんなところか」程度で終わっていたかもしれません。ホテルのプライベートビーチの水は濁っていて、あまりきれいとは言えませんでしたし。フリータイムの日に、数名の同僚と一緒に、レンタカーのワンボックスに乗って、伊豆味のパイン園や海洋博記念公園を訪ねた帰り道、本島からかかっている橋に導かれるように渡った瀬底島のビーチが、ほとんどカルチャーショックともいえる体験をさせてくれた場所です。

わたしたちの目に入ってきたのは、サトウキビ畑の真ん中に、「ビーチ」という文字と矢印だけがペンキで書いてある一本の立て札でした。

その方向に車を走らせるうち、狭い島なのに道がわからなくなり、畑を歩いているおじいさんを呼び止め、「すいません、ビーチはどっちですか」と尋ねて、やっとたどりついたビーチは、本土の黒い砂浜しか見たことがなかったわたしには、ほとんど奇跡のような別次元空間。「プールのような」澄んだ青い水(すみません、たとえが貧困で)の中に、デパートの熱帯魚売場か水族館でしか見たことがない青や黄色の魚が泳ぎ、砂浜の砂はあくまで白い。前年グアムに行った同僚が、「グアムよりこっちのほうがよっぽどきれいだ」としきりに言っていたのを覚えています。

次に自分が沖縄行きを決めたとき、大学時代の友達を誘い、行き先はたまたま雑誌で見かけて心ひかれた竹富島に決めました。友達とわたしは、同じ大学の人類学科で、ともに民族学を学んだ仲。リゾートではない沖縄に触れ、ふたりとも忘れかけていた「民族(俗)の血」がムラムラと騒ぐのを覚え、以来文学、音楽、料理(もちろん泡盛も)を含めた広くて深い沖縄文化にどっぷりとハマってしまったのです。

沖縄にはたくさん島があって、それぞれが個性的な味わいを持っています。このところは波照間島にハマっていますが、できれば他の島々にもどんどん行ってみたいと思っています(これでほとんどライフワーク級の楽しみができたな、と思っている)。できれば毎年でも訪れたいところですが、お金と時間が必要なことですので、なかなかそうはいかないのが残念です。