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碎啄(そつたく)の機微


 親鳥は、雨の日にも風の日にも何日もかけて卵を抱いて暖めます。やがて孵化(フカ)の時期を迎えると、卵の中の雛が一生懸命、内側からコツコツと卵を叩きます。しかし、卵の殻は硬く、なかなか割ることができません。その一瞬に集中している親鳥は、息を合わせるように外側から、雛がコツコツと叩いている一点をめがけてコツコツと叩き、卵を割るのを助けます。

 この内側から雛がコツコツと叩くのを「碎」と呼び、外側から親鳥がコツコツと叩くのを「啄」と呼んでいます。親鳥の「啄」が一瞬でも間違うと、中の雛の命が危なくなります。早くてもいけないし、遅くてもいけません。さらに場所がズレていてもいけません。本当に大事な一瞬であり、一点となります。

 大事な一瞬は、何も親と子だけではありません。班の中の仲間同士でもあります。本当に大事な一瞬を逃してしまったがために気持ちのすれ違いを招き、お互いの気持ちが通じなくなってしまうこともあります。仲間が、自分では気付かずに何か悩んでいることがあるかもしれません。あるいは、気付かずに道からそれて行ってしまう時かもしれません。その一瞬を見極めて力になって上げられるのが、やはりスカウト仲間なのではないでしょうか。

 何が今大切なのか、今どういう時期なのかを心を澄まして感じ取り、その一瞬を掴み取り、自分なりに最善のアクションをおこせるよう「そなえよつねに」の心を持ち続けましょう。