新・人間革命  開花 二十九 (2756)  三浦市三崎は、マグロ漁船の基地として知られているが、地元の人びとの多くは、半農 半漁で、沿岸漁業に従事している人が多かった。  神社仏閣の祭事も盛んで、三十人ほどが集まり、大きな数珠を回す念仏講の儀式なども 行われていた。  旧習の深い地域であったが、草創の同志は勇んで折伏に歩いた。  しかし、創価学会と聞くと拒否反応が激しく、時には水を撒かれたり、天秤棒を振りか ざして追われることもあった。  それでも同志は御聖訓の通りの難と受け止め、粘り強く仏法対話を続けていった。  マグロ漁船が帰港すると、親しくなった乗組員にも弘教の手は伸びた。  仏法の話をすると、こう語る人もいた。 「俺は、北海道でさんざん信心をするように言われ、それがいやで、逃げようと思って北 海道を離れたんだ。それなのに、なんで、ここまで来て、また学会の話を聞かなければな らんのだ」  すると、すかさず、学会員は切り返した。 「それを仏縁というんです。もう、腹を決めるしかない。あなたは、この信心をして、幸 せになるために生まれてきたんですよ」  その乗組員は、仏法対話の末に、入会を決意した。「三崎に来た人には、一人残らず、 仏法を教えて幸福にしたい」というのが、メンバーの決意であった。  ボルテールは言った。 「徳とはなんであるか。隣人にたいする善行である」(注)。その姿が学会にあった。  一九六五年(昭和四十年)には、三崎支部が誕生。その後、城ケ島支部も結成され、ブ ロック制に移行していった。  伸一は、三浦半島の先端である三崎の広宣流布に、重要な意味を見いだしていた。  初代会長の牧口常三郎は、半島について『人生地理学』のなかで、「初代の文化の転送 は、半島の一天職にはあらざるか」と述べている。  つまり、半島には新しい文化を伝える天職″があるというのだ。  さらに、半島に住む人びとの先駆性にも着目している。大陸に先んじて半島の人びとが 覚醒することから、半島の国民は「文化の起発点」として賞讃されてきたことを述べてい るのである。  小説『新・人間革命』 の引用文献  注 ヴォルテール著『哲学辞典』高橋安光訳、法政大学出版局 名字の言 2004.4.24 ▼テレビゲームに熱中する子どもたちに、心を痛める大人は少なくないだろう。この遊び の、健全な成長に及ぼす影響について、このところ医学的な解明が進んでいる ▼理性や創造性をはぐくみ、人間らしさを保つための「前頭前野」といわれる脳の場所が ある。川島隆太・東北大学教授は、テレビゲームは「前頭前野」の血流を低下させ、働き も衰えさせるという(「パンプキン」5月号) ▼森昭雄・日本大学大学院教授も、脳波解析から指摘する。小学校に入るころから前頭前 野の働きは活発化するが、テレビゲームはそれを劇的に低下させる。ゲームは、せめて中 学生以降からが望ましいという(『ゲーム脳の恐怖』) ▼本来、脳はすべての可能性をもって生まれてくるが、学習、教育、環境によって差異が 生じるといわれる。もし大人側のゲーム任せ″が子どもの脳の未発達を招いているとし たら、見過ごしにはできない問題であろう ▼「戸田先生と接していると、触れると火傷しそうな、子どもを思う熱い思いに打たれた」 とは、時習学館に学んだ人たちの述懐。今こそ、子どもたちが学ぶ喜びと人間性にあふれ、 幸福を満喫できるように戸田会長のような全人格をかけての熱い関わりを心掛けたい。 (登) 北斗七星 2004.4.24 ◆「知られざるロバート・キャパの世界」展(5月16日まで東京都写真美術館)を見た ◆1954年、新緑の浅草、京都、大阪を駆け抜け、5月1日のメーデー取材直後に離日。 25日にはベトナムで地雷に触れ、40年の短すぎる生涯を閉じた彼の没後50年を偲ぶ ◆キャパが取材した主な戦争はスペイン内戦、日中戦争、第二次世界大戦、中東戦争、イ ンドシナ戦争の5つ。端緒となるスペイン内戦では36年9月5日、共和国兵士が撃たれ た瞬間を撮った「崩れ落ちる兵士」により、22歳のキャパは「世界で最も偉大な戦争カ メラマン」(38年英誌「ピクチャー・ポスト」)への道を歩む ◆44年6月6日、連合国軍第一陣とともにノルマンディーに上陸した彼は、8月25日 のパリ解放まで同行。30歳にして英誌が予言した栄誉に浴した ◆血しぶきと硝煙渦巻く戦場に体当たりするようにして写真を撮り続けた彼の口癖は、 「戦争カメラマンとして食えなくなる日を楽しみにしている」(13日付「毎日」川成洋 ・法政大教授)だった ◆スペイン内戦から来日時の写真を軸とする本展を貫く信念は「人々を好きになり、相手 にその好意を伝えろ」(リチャード・ウェーラン)との人間愛だ。恋人ゲルダ・タローを 戦場で失い、銀幕の名花イングリッド・バーグマンとの結婚も拒み、財産も家族もなし。 無私に徹してのメッセージは熱い。(芙) ☆「わが友に贈る」☆ 使命の旅路に 勝利また勝利の 足跡を残せ! 勝つために 我らは生まれた!