2004.12.7SP 婦人部・女子部最高協議会での池田名誉会長のスピーチ〔上〕 2004.12.8SP 婦人部・女子部最高協議会での池田名誉会長のスピーチ〔下〕 2004.12.7SP 婦人部・女子部最高協議会での池田名誉会長のスピーチ〔上〕 ◆◆◆武器を捨てよ! 対話こそ平和の最強の力!(オーストリアの女性の叫 び) ―― 前進は「勝利の道」安逸は「敗北の道」 ―― ◆◆希望は戦う心に輝く ―― 妙法とともに進人には大宇宙の無間の活力が湧現 ―― 【名誉会長のスピーチ〔上〕】  一、婦人部・女子部の最高協議会の開催、おめでとう!  きょうは、東京、第2総東京、そして神奈川、東海道、埼玉、千葉、関東か らも代表が参加してくださった。遠方から、ご苦労さまです。  全国の婦人部、女子部の皆さま方のおかげで、わが学会は、名実ともに日本 一、世界一の平和の大連帯を築くことができました。本当にありがとう(大拍 手)。  今、私は「次の50年」の勝利へ、あらゆる手を打っている。これからが、 いよいよ本格的な戦いである。  仏意仏勅(ぶついぶっちょく)の学会の恒久的な発展のため、そして世界の 平和と人類の幸福のために、万代(ばんだい)に輝き光る広宣流布の基盤をつ くってまいりたい(大拍手)。 ■良心に目覚めた女性の団結こそ  一、「幸福は精神が最大限に活動するとき生まれる」(小野寺信・小野寺百 合子訳)  これは、創価の父・牧口先生も評価されていた、北欧・スウェーデンの女性 教育者エレン・ケイ(1849?1926年)の有名な言葉である。  まさしく、わが婦人部、わが女子部の崇高な活動の姿といってよい。  この一年も、最高最大の「精神の闘争」に奔走(ほんそう)され、永遠に崩 れざる幸福を創造してこられた皆さま方を、私は、妻とともに、心から讃嘆申 し上げたい。  複雑化しゆく社会の諸問題を打開していくためには一体、何が必要か。  エレン・ケイは、「社会的良心に目覚めた女性」の「新しい力」を結集し、 団結させていくことであると展望していた。  その模範の中の模範こそ、わが創価の女性のスクラムなのである。 ■3日は「妻の日」  一、あまり知られていない記念日であるが、きょう12月の3日は「妻の日」 である。  つまり、1年間にわたる「妻」の労をねぎらい、感謝する日である。  一年の締めくくりの12月にあたり、感謝を表す英語の「サンクス」の響き (「サン」と「3」のごろ合わせ)から、この日が選ばれた。  日本の活字文化を大きく担われる「凸版(とっぱん)印刷株式会社」によっ て制定されたものである。  その意味からも、きょうは、全国の"夫一同"を代表して(笑い)、"微笑 みの妻"の皆さまに、心からの感謝を捧げたい(大拍手)。 ■世界女性会館に来れば気づく!  一、今年、お迎えしたインドの名門ラビンドラ・バラティ大学の気高き女性 教育者ムカジー副総長は、しみじみと述懐(じゅっかい)しておられた。  <ムカジー副総長は、今年2月、同大学から、池田名誉会長に「名誉文学博 士号」を授与するために来日。その折、東京・信濃町の創価世界女性会館を訪 問した>  「世界女性会館に来ることができて、本当に幸せです。世の女性は、いつも たくさんの苦労をかかえています。しかし、ここに来れば、皆、ほっとして、 心を和(なご)ませるに違いありません。  そして『人類の文明を向上させるのは女性だ。私自身の中に、その力と強さ があるんだ』ということを、ここに来れば、皆、必ず気づくことでしょう」と。  婦人部、女子部の皆さん方の存在それ自体が、21世紀文明の希望の光明と なっていることを確信し、心広々と、また心晴れ晴れと進んでいっていただき たい。 ■大宇宙に合致(がっち)し常に前へ前へ!  一、妙法は、大宇宙を貫く法則である。  ゆえに、南無妙法蓮華経と唱えゆく私どもの色心(心と体)は、自然のうち に大宇宙の根本のリズムに合致していく。  大宇宙を動かす究極の力を、無限の活力を、わが身に湧現することができる のである。  しかし、一次元から見れば、凡夫の世界であるから、当然、悩みも苦しみも ある。きまざまに矛盾もある。  だが、そのなかで断じて負けないで、信心を貫いていくならば、必ず、確か なる「幸福の軌道(きどう)」へ、「勝利の軌道」へと進んでいくことができ る。これが仏法の真髄(しんずい)の力である。  大宇宙は瞬時も止まることなく動いている。あらゆるものが変化してやまな い。  信心も、絶対に立ち止まってはいけない。  安逸(あんいつ)に流されれば、魂(たましい)はすぐに老いる。それは人 間として「敗北の道」である。  日蓮大聖人は「心こそ大切なれ」 (御書1192ページ)と仰せである。  いかなるときも、広宣流布へ「戦う心」を燃やしていくことだ。  ひたぶるな唱題によって、心を勇気で満たし、希望で光らせていくことだ。  そして、一つ勝利すれば、また次の闘争へ。そしてまた次の闘争へ。  常に前へ前へ! ―― そのたゆみなき前進の心によって「勝利の道」が開か れていく。栄光の人生が輝く。  信心の世界は、頑張れば頑張るほど、福運がつく。生命力がつく。  友の幸福のため、あの家へ、この家へ、歩きに歩き、正義の仏法を語り広げ ていく ―― まさしく仏の使いである。菩薩の振る舞いである。これ以上の尊 い行動はない。  学会活動は、自分が幸福になるのはもちろん、人も幸福にする。一家一族を も無量の福徳に包んでいける。  自身を変革し、地域を変革し、社会を変革し、ひいては、世界を変革してい けるのである。  広布の活動には一切、ムダはない。これほど素晴らしい意義ある人生はない (大拍手)。 ■胸襟(きょうきん)を開いて世界と対話を  一、これまで、私は、世界の識者と1600回を超える対話を重ねてきた。  イギリスの大歴史学者トインビー博士と対談したのは、私が40代のころで あった。  じつは、博士のほうから、「人類が直面する基本的な諸問題について語り合 いたい」とお手紙をいただき、私がイギリスへ飛んだのである。  イギリスと言えば、バッキンガム宮殿にアン王女を表敬し、難民問題など喫 緊(きっきん)の課題について意見を交わしたことも懐かしい。チャールズ皇 太子とは私邸にお招きを受けて親しく語り合った。サッチャー首相とも2度、 お会いした。  さらに、ドイツの哲人政治家ヴァイツゼッカー大統領、キューバのカストロ 国家評議会議長、南アフリカのマンデラ大統領など ―― 世界各国の指導者と、 立場を超え、同じ人間として、胸襟を開いて語り合った。人々の幸福を願い、 懸命(けんめい)に信頼の橋を架けてきた。ただ「誠実の心」で!  対話こそが、世界平和のための最強の力であると信ずるからである。 ■先見性のゆえに誹謗中傷された  一、私は現在、ヨーロッパ科学芸術アカデミー会長で、オーストリアの世界 的な心臓外科医であるウンガー博士と対談を進めている。  このオーストリアの女性作家で、名高い平和運動の指導者に、ベルタ・フォ ン・ズットナー女史(1843?1914年)がいる。  ズットナー女史は、あのアルフレッド・ノーベル氏の平和への熱意を深く啓 発し、「ノーベル平和賞」の設立の原動力になったともいわれる女性である。 <彼女自身、1905年、「ノーベル平和賞」を受賞した>  19世紀末に出版され、世界的なベストセラーになった、彼女の著書『武器 を捨てよ』は、あまりにも有名である。  「人類よ、武器を捨てよ!」 ―― 人間を絶対に殺してはならない。生命は、 かけがえのない尊厳なものである。  ズットナー女史は、戦争へ傾斜していく世界にあって、この非暴力の思想を 人類の頭脳に叩き込もうと、徹底して訴え続けたのである。  その先見性のゆえに、多くの人々から、嘲笑され、侮辱され、無視され、中 傷された。しかし、彼女は、誹謗中傷など恐れない勇気に満ちあふれていた。  作家のツヴァイクは「彼女がもの笑いの種にされてもけっして行動を思いと どまろうとしなかったというこの事実は、銘記すべき彼女の偉大さとして、現 下の時局にたいして示された彼女の手本として、のこるものであります」(『ツ ヴァィク全集15』所収「世界大戦中の発言」藤本淳雄訳、みすず書房)と讃 (たた)えている。 ■平和の組織を!  一、ズットナー女史は、一人ひとりと対話を積み重ね、皆の良心を奮い立た せていった。  また、社会を平和の方向へと変革していくには、組織が必要である、連帯が 不可欠であると知っていたがゆえに、オーストリアやハンガリーに、"平和の ための組織"をつくった。  さらに、この聡明な女性の真剣な大情熱が、アルフレッド・ノーベルや鉄鋼 王カーネギーなど、力ある人物の心をつかみ、がっちりと味方にしながら、時 代を揺り動かす大波を起こしていったのである。  思想の戦いは、たしかに地味である。言論の戦いは、まことに地道である。 しかし、それは、人の心から心へ、そしてまた、世代から世代へと、決して消 えることのない影響をもたらしていくものだ。  彼女の魂の名著は「全世界を征服した」と謳(うた)われた。今もなお、不 滅の光彩を放っている。  良書こそ「平和への力」である。 「正義の光」である。 「希望の源泉」 なのである。 ■母は「解決策は必ずある!」と  一、女性の勇気の持つ力について、私は、ウンガー博士とも、さまざまに語 り合った。  博士は、両親の思い出を振り返りながら言われている。  「私は家族から、 『金がすべてではない。正義に生きることが大事だ』と いうことを学びました。母は明るい、心の広い女性でした。母から学んだのは、  『恐れない』ということです。母は非常に楽天的な女性でした。どんな問題に 突き当たっても『こんなことは何でもない!』、『解決策は必ずある! 』と言 うのが常でした」  ともあれ、人生のいかなる戦いにあっても、勢いがあるほうが勝つ。  これが鉄則である。  皆さん方の生命の勢いで、また皆さんの勇気と智慧の励ましで、さらに異体 同心の絶妙なるチームワークで、わが家の勝ち戦を、わが地域の勝ち戦を、そ して、わが学会の勝ち戦を、明年も断固としてお願いしたい(大拍手)。 ◆◆◆世界一の女性の連帯、万歳!! ◆《ウンガー博士》母から学んだのは『恐れない心』 ■あの国この国で婦人部が大活躍  一、世界の婦人部は、はつらつたる息吹(いぶき)で、希望と幸福のスクラ ムを広げている。  そうした様子を、私と妻は、多くの手紙や報告で日々、拝見している。  本当に、うれしい限りだ。  アメリカSGI(創価学会インタナショナル)は明年の5月3日を大きな目 標としている。婦人部を中心に、題目の渦を全米に巻き起こし、意気軒高(い きけんこう)に進んでいる。  アメリカは世界広布の先頭である。大事な天地である。  私も、いよいよ全力を注いで、アメリカの総仕上げをしていく決心である。 ともどもに、楽しく前進したい。  アメリカSGIの機関誌「リビンダ・ブディズム(生きた仏法)」の新年号 では、婦人部の特集記事で、新しい一年のスタートを切る。  アメリカの婦人部は、リンダ・ジョンソン婦人部長をはじめ、社会での活躍 も目覚ましい。  ジョンソン婦人部長はカリフォルア州の司法局次長として、幾多の法律家を 統括する法曹(ほうそう)界のリーダーでもある。  州内で起きる最も悪質な刑事犯罪を扱うチームの最高責任者として、指揮を 執(と)ってきた。  一、また、女性の地区部長のジーン・オーコンネルさんは、アメリカを代表 する大病院・サンフランシスコ総合病院の最高経営責任者(CEO)を務めて いる。  オーコンネルさんは、看護師として活躍されてきた。日本でいえば、白樺会 (しらかばかい)である。そして、アメリカで女性として初めて、しかも看護 師出身で、大病院のトップに抜擢(ばってき)されたのである。社会的に大き な話題となった。  彼女が、この仏法に巡りあったのは、30年前。場所は、現在、最高経営責 任者を務めている病院の待合室であった。  当時は、2人の幼子を抱え、経済苦に泣き暮らす毎日。子どもを診(み)て もらいに来ていた彼女に、温かく声をかけてくれたのが、アメリカSGI婦人 部の方だったのである。  信心によって希望を見いだした彼女は、子どものころからの夢であった看護 師を目指し、新たな人生を歩み始める。  向学の志に燃え、大学にも入学した。<当時、授業料が無料だったサンフラ ンシスコ市立大学で看護学を専攻>  私が彼女と初めてお会いしたのは1975年。ハワイで行われた全米総会で、 彼女がメンバーの救護を担当する役員をされていたときのことである。  その翌年、見事、大学を首席で卒業。病院での仕事が始まった。  彼女は、患者一人ひとりの回復を心から願い、真剣に唱題を重ねて、献身的 に働いた。  困難な仕事を頼まれても、決して「ノー」とは言わない。どんなに苦しいと きも、笑顔を絶やさなかった。  その慈愛(じあい)の振る舞いに、患者や看護師仲間、さらに医師からも、 絶大な信頼が集まった。  彼女は、学会活動のなかで、相手の悩みに耳を傾け、真心をこめて激励する ―― そういう姿勢を身につけていった。  だから、病院でも皆が相談にきた。そして"なくてはならない人"と頼られ るようになっていったのである。  彼女が初めに勤めたのは大学病院だったが、実績を買われて、この信仰に巡 (めぐ)りあったサンフランシスコ総合病院に移る。  推薦(すいせん)を受けて「婦長」 に。さらに、看護師局の全責任を担(にな)う「総婦長」を経て、全部局を統 括する「事務総長」となった。  権威や格式を重んじる大病院としては、異例ずくめの昇進であった。  その都度、推薦された理由の一つは、「この人(オーコンネルさん)が、こ の病院のことを、一番よく知っているから」であったという。  大誠実の対話に徹し、皆の話に耳を傾け、励まし続けたオーコンネルさん。 その日々の振る舞いが、美しい信頼の花を咲き薫らせていったのだと私は思う。  そして彼女は、5年前、巨大な病院全体を代表するトップに就任したのであ る。  彼女は先日も、信心の喜びと学会への感謝を、生き生きと語っていたそうで ある。  「私は、病院の仕事がどんなに忙しくても、地区部長として、学会活動でき ることが、うれしくてなりません。  いつも学会の組織で、元気をいただいて、それを仕事へのエネルギーにして いるのです」  一、妙法を持つ人は、必ず永遠の幸福に包まれる。「もし、このことが嘘で あるならば、釈迦仏・多宝仏・十方分身の諸仏は嘘つきの人・大嘘つきの人・ 悪人である」「太陽と月は地に落ち、大地はくつがえる」(御書1405ペー ジ、通解)と大聖人は断言しておられる。  仏は決して嘘をつかない。妙法の力は絶対である。広宣流布のために、祈り、 語り、動いた分、大功徳を受けることは間違いないのである。  一、ともあれ、創価の女性の活躍は、世界中で枚挙にいとまがない。  南米ベネズエラの婦人部員であるディリア・パーラ博士は、検察庁の高等学 院の学院長である。  先日は、中南米はじめ11カ国200入の代表が参加し、ベネズエラの首都 カラカスで行われた国際会議を主催する責任者として尽力された。〈社会と司 法の現状をめぐる第1回「イベロアメリカ国際会議」〉  この会議では、地区婦人部長であるマリア・ピラール・キンテーロ教授(ロ ス・アンデス大学)も講演を行っている。 ■21世紀は女性が輝く団体が勝つ  一、有名なヲラジルの教育者パウロ・フレイレは、"民衆こそが世界の変革 にかかわるべきだ"と呼びかけた。  彼は「(民衆が)自信をもつということは、世界をよりよいものにしていく たたかいにおいて不可欠なもの」(里見実訳『希望の教育学』太郎次郎社)と 述べている。  どうか婦人部、女子部の皆さまは、「世界一の女性の平和の大連帯」として、 誇りも高く、自信満々と前進していただきたい。  信心利用の輩(やから)や、人間の道をはずれた策略家に対しては、断じて 容赦してはならない。学会を利用する悪人を、厳しく見抜いて、正さねばなら ない。  事実無根の悪口や中傷に対しては、悠然と跳(は)ね返していくことだ。  その本質は「嫉妬」であるからだ。  オランダの大哲学者スピノザが、「ねたみ屋にとっては他人の不幸ほど愉快 なものはなく、また他人の幸福ほど不快なものはない」(畠中尚志訳『エチカ (上)』岩波書店)と喝破(かっぱ)した通りである。  21世紀は「女性の時代」である。  「女性の力」が社会に輝きわたる時代だ。いかなる団体であれ、国家であれ、 「女性の力」を、生き生きと発揮させるところが発展していく。  反対に、女性を軽んじ、侮辱するようなリーダーがいるところは、衰退し、 滅びていく。  その意味で、創価の女性 ―― なかんずく婦人部が盤石なところが勝つ。繁 栄していく。それが勝利の方程式なのである。      (〔下〕に続く) 2004.12.8SP 婦人部・女子部最高協議会での池田名誉会長のスピーチ〔下〕 ―― 新たなる生命(いのち)の革命! ―― ◆◆◆広布の母の勝利の曲を 【池田名誉会長のスピーチ〔下〕】  一、今年の12月5日は、私が中国の周恩来総理とお会いしてから、ちょう ど30年である。<1974年、第2次訪中の際に、北京で会見>  会見の思い出は、今も鮮(あざ)やかである。  あれは、私が日本に帰国する前夜だった。答礼宴(とうれいえん)の席で、 中日友好協会の寥承志(りょうしょうし)会長が、「総埋が待っておられます」 と私に伝えてこられた。私は、総理の病状が重いことを聞いていたので、一旦 は辞(じ)したが、どうしてもとの強い要望を受け、会見の場へ向かった。  寒い夜だった。通訳の林麗(りんれい)ウン(★韋+〔慍-りっしんべん〕)さ んが、私の妻の体を案じて、「そんな薄いコートじゃいけません」と、厚手の コートを掛けてくださった。温かな心づかいに、今も感謝は尽きない。 ―― 1947年12月5日 歴史的会見から30周年 ―― ◆《周総理》青年は自分の一生だけでなく遙かな未来を考えて生きよ ■後世(こうせい)のために! ―― 周総理の気迫  一、着いた場所は質素な建物だった。病院だったのである。  周総理は、立って私たちを待っていてくださった。  会見が始まると、総理の態度は、真剣そのものであった。  途中でメモが回ってきたが、総理がすぐにそれを脇に置かれたのを覚えてい る。そのメモは、医師団が総理の容体を心配し、早く会見を終えるようにお願 いする内容だったようである。林麗ウン(★韋+〔慍-りっしんべん〕)さんから 後にうかがった。  日中友好のため、世界の平和のため、自分が生きているうちに、確固たる軌 道を敷いておきたい ―― 総理の姿は気迫に満ち、重い病気であることなど、 微塵(みじん)も感じさせなかった。本当に偉大な総理である。  会見に、こちらからは、私の妻だけが同席した。総理のお体を考え、できる だけ少人数にしたかったのである。妻は臨時の"記者"となって、会見の内容 をメモしてくれた。  総理との会見の意義は、年を重ねるほどに、いよいよ大きさを増している。  一、本日(3日)、周総理の母校である南開(なんかい)大学の「周恩来研 究センター」から、孔繁豊(こうはんほう)所長、紀亜光(きあこう)秘書長 が創価大学に来学された。  孔所長は、30年の記念の意義をこめ、特別講演を行ってくださった。<講 演は「周恩来総理と池田大作会長の歴史的会見」と題して。南開大学「周恩来 研究センター」は総理に関する研究書を多数発刊。その一つ、『周恩来と池田 大作』の日本語版は朝日ソノラマから出版されている>  また光栄にも、私に「『周恩来学』特別貢献賞」を授与してくださった。心 より、厚く、厚く、御礼申し上げたい。大いなる励ましと受け止め、総理から 託された、日中の永遠の友好のために、さらに尽力してまいる決心である。  一、総理夫人の?頴超(とうえいちょう)先生とも、私たち夫婦は親しくさせ ていただいた。周総理も、そしてまた、?頴超先生も、一生涯、ただただ人民の ために、命を磨(す)り減らして戦われた。未来のことを常に考え、将来の世 代のために、人知れず手を打たれていた。  若き周総理が、抗日(こうにち)闘争のさなか叫ばれた言葉がある。  「われわれ青年には、今日があるばかりでなく、はてしない未来がある。青 年は自分の一生のことを考えるだけでなく、自分の子々孫々のことまで考えな ければならない」 (高橋強・川崎高志著『周恩来 ―― 人民の宰相』第三文 明社)  壮大なる未来を見つめながら、一つ、また一つ、眼前の試練に挑(いど)む ことだ。そして、断じて勝ち越えることだ。それこそ、青年の使命である。  一、きょうは、女子部の代表も出席されている。  女子部は、本当によく頑張っている。成長ぶりが目覚ましい。  井桁(いげた)総含女子部長、館野女子部長、今成書記長、田代女子学生部 長をはじめ、仲のよいスクラムが光っている。  次の50年の「広宣流布」と「世界平和」の道を開きゆく女子部の連帯を、 さらに一段と拡大し、充実させてまいりたい。 ■文豪ユゴーの励ましの手紙  一、現在、東京富士美術館で「ヴィクトル・ユゴーとロマン派展」が開催さ れている。<明年1月15日(土)まで>  ユゴーは偉大な芸術家であった。偉大な芸術とは、精進を重ね、自分を磨き、 苦労し抜いて完成されていくものだ。今回の展示では、そうしたユゴーの精神 の闘争を、目(ま)の当たりにすることができる。  貴重な展示品の中に、ユゴーが、女性作家ジョルジュ・サンドにあてた直筆 書簡(じきひつしょかん)がある。  これは、サンドが愛する孫を亡くして悲しみに沈んでいることを知り、なん とか励ましたいと、文豪が真心込めて書き贈った手紙である。  その中でユゴーは、亡くなったかわいいお孫さんは今、優しくサンドを見守 っていると語りかけ、こう綴っている。  「死というものはありません。すべてが生であり、愛であり、光なのです」 と。  仏法の生死不二(しょうじふに)の哲理にも通ずる洞察(どうさつ)である。  ともあれ、ユゴーのごとく、その人が最も大変なときにこそ、「時」を逃(の が)さず、励ましの手を差し伸べることが大切である。 ■自分の偉大な力に目覚めよ  一、「生と死」は、人生の根本問題である。私とともに対談集を発刊した、 "アメリカの良心"ノーマン・カズンズ博士は、こう記していた。  「何人(なんびと)も死を恐れる必要はない。人間はただ、自分の偉大な力 ―― 自分の生活を他人のために捧げるという自由意志の力 ―― を知らずに死ぬか も知れないということを恐れる必要がある」(鮎川信夫訳『人間みな同胞』荒 地出版社)  その通りである。  「自分中心」の利己的な生き方を越えて、人のため、社会のために行動する。 そのとき、人間は真の生命の充実を味わうことができる。  命ある限り、最も偉大な広宣流布の大願のために、最も偉大な自分自身の力 を出し切っていくことだ。最も偉大な力とは、内なる仏界の生命の力である。 ◆◆◆明日のために今を勝て! ◆《イギリスの作家》人生を停滞させるな 動きが止まれば濁(にご)る ◆◆ピンチはチャンス! 変毒為薬の大仏法 ■ 一、本年2004年は、ジョルジュ・サンド,の生誕200周年でもある。  サンドは、庶民の味方、女性の味方となって、理想を求めて生き抜いた。  彼女の作品に、次のような一節がある。  「心穏やかに生きようとして悪を許容するのは卑怯なのだ」  「(私たちの)義務は悪を打ち倒し、善を勝利させるよう努めることである」 (大野一道訳『スピリディオン』藤原書店)  悪との戦いから逃げてはいけない。戦いを避け、安楽な生活を願う生き方は、 結局自分を不幸にしてしまうとの、サンドの叫びである。  一、仏法は勝負である。  悪と戦い、断固として勝ち抜くなかにこそ、「一生成仏」があり、「広宣流 布」がある。  勝ちゆく力は、正義の言論である。強き信心である。  学会は、どこまでも清らかな信心の団体である。それが、牧口先生、戸田先 生以来の峻厳(しゅんげん)な伝統である。ゆえに学会は、どんな激流も乗り 越え、あらゆる障魔(しょうま)を勝ち抜いてきたのである。この伝統を、断 じて永遠に守り抜かなければならない。 ■失望の底に落ちこんだ時こそ!   一、カズンズ博士は、著書の中で、アフリカで医療活動を行ったシュバイツ ァーの「真理はそれ自身の特別な時機を持たない」との言葉に触れながら、こ う記している。  「行動すべき適切な時機は? その時機は間違いなく、今である。今でしか あり得ない」 「環境がもっとも順調でないように見える時機、それが正しい 時機なのである」(前掲『人間みな同胞』)  困難な時だからこそ、勇んで行動し、道を切り開いていく ―― 世界の一流 の人物に共通する哲学といえよう。  1932年、女性として初めて「大西洋単独横断飛行」を成し遂げたアメリ ア・イヤハートは、こう綴っている。  「わたしは、長年の間に万事順調、申し分なしと見えた時こそ、必ずトラブ ルが出てくるものだということを悟るようになった。  そしてまた、その逆に、声も出ないほどの失望落胆の底に落ちこんだ時に、 往々(おうおう)にしてすばらしい『チャンス』が目の前に迫っているものだ ということも、実際に嬉しい経験から習いおぼえた」(松田銑訳『ラスト・フ ライト』作品社)  いわんや、仏法は「変毒為薬(へんどくいやく=毒を変じて薬と為す)」の 法理を教えている。  信心を根本とすれば、いかなる困難や労苦も乗り越えることができる。一切 を意味あるものとして、生かしていける。功徳へと転じていくことができるの である。  大きな壁が立ちはだかったときこそ、より大きな境涯を開き、より大きな福 運を積んでいくチャンスなのである。  何があろうと、「月月・日日」に、水の流れるがごとく、大河の流れるがご とく、前進しゆくことだ。  18世紀のイギリスの作家サミュエル・ジョンソンは、小説の中で登場人物 に語らせている。  「人生を停滞させてにいけません。動きが止まれば濁って来るのです」(朱 牟田夏雄訳『幸福の探求』吾妻書房)  行動こそが、新たな道を開くのである。 ■「自分は大丈夫」と油断するな  一、同時に、順調なときこそ、「油断は大敵」である。  日蓮大聖人は、主君の信頼を勝ち得て、苦境を脱しつつあった四条金吾に対 して、「心に深く用心しなさい」(御書1176ページ、通解)等と、このよ うなときこそ心を引き締めていくべきだと教えておられる。  また、別の門下に対して、「冬は、火事で家が焼亡(しょうぼう)すること が多い」(同1101ページ、通解)と厳しく注意を促されている。  時代は、ますます複雑な悪世である。凶悪な事件も多い。悪質な詐欺も横行 している。火事や交通事故はもちろんのこと、こうした事件にも、十分に注意 していただきたい。  賢く、鋭く、「善と悪」「正と邪」を見極めていくことである。悪人にだま されるような、愚かなことがあってはならない。  古代ローマの哲学者キケロは記している。  「特に注意しなければならないのは、美徳(びとく)の振りをした悪徳に欺 (あざむ)かれないようにすることである」(片山英男訳『キケロー選集6』 岩波書店)  「自分だけは平気」「信心しているから大丈夫」といった過信があってはな らない。  信心をしているからこそ、油断なく、賢明に生きていくのである。愚かでは 不幸である。「負け戦」の人生となってしまう。  仏とは、最高の賢者である。勝者である。信心は最高に価値ある人生を生き る原動力であり、勝利の推進力なのである。  ともあれ、絶対に無事故で、健康で、「年末年始を、朗らかに有意義に飾っ ていただきたい。 ■「原点」に返れ  一、フランスの哲学者パスカル。その著作集に次のような言葉があった。  「宗教の真理は、どんなに小さいものでも、死を賭して守られてきたもので した」(田辺保訳『パスカル著作集V』教文館)  パスカルは、聖職者の堕落を許さなかった。  どんな世界的な宗教も、原点に返り、創始者の精神を守り抜く断固たる闘争 がなければ、形骸化(けいがいか)し、腐敗していく。  歴史をひもとけば明らかなように「弟子たちの、命を賭した熾烈(しれつ) な戦いがあってこそ、宗祖の教えは「生きた宗教」として、時代精神へと発展 を遂げることができるのである。  創立75周年へ、創価学会は堂々と進んでいる。その勝利の歴史は、日蓮大 聖人直結の信心で「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」「死身弘法(ししんぐ ほう)」を貫いた師弟不二の大闘争によって、築き上げられてきたものである。 このことを、どうか胸に刻んでいただきたい。 ■広布へと行動する人が偉大  一、ここで、日眼女(にちげんにょ=四条金吾夫人)への御聖訓を拝したい。 大聖人は、こう仰せである。  「法華経を持たれる人は一切衆生の主であると、仏は御覧になっているであ ろう。また梵天・帝釈も、この人を尊敬されるであろうと思えば、うれしさは 言いようもない」「この法華経だけには、『この経を受持する女性は、他の一 切の女性にすぐれるだけでなく、一切の男性にも超えている』と説かれている」 (御書1134ページ、通解)  御本尊を受持し、広宣流布のために行動する皆さまこそ、最高に尊貴(そん き)な、最も偉大な存在である。  仕事がなんであれ、社会的地位がどうであれ、学会の中で、広布のリーダー として戦う人が一番、尊い。  一婦人が、大学教授に向かって、「幸福になるためには題目を上げることで す!」と確信をもって指導する。すごいことである。"世間の位"でなく、"信 心の位"が最も尊いのである。  学会は、庶民が、世間の肩書や地位など関係なく、広布の指導者として指揮 を執っている。だから強い。だから、いかなる波浪にも、びくともしない。 ■「創価の母」を諸天は厳然と守護  一、大聖人は、続けて仰せである。  「一切の人が僧むならば僧むがよい。釈迦仏・多宝仏・十方の諸仏をはじめ として、梵天・帝釈・日天・月天等にさえ、いとおしく思っていただけるなら ば、何が苦しいことがあるでしょうか。法華経(御本尊)にさえ、ほめていた だけるならば、何が苦しいことがあるでしょうか」 (同1135ページ、通 解)  御聖訓通りの難を乗り越え、勝ち越えてきた、わが創価学会を、なかんずく 創価の女性たちを、ありとあらゆる仏菩薩が、諸天善神が、護りに護り、讃え に讃えている。  この大確信に燃えて、「勝利! 勝利! 」の広布の母の曲を、そして、創価 の女性の讃歌を、21世紀に高らかに奏(かな)でてまいりたい。  結びに、各地域で行われる婦人部総会の大成功を、心よりお祈り申し上げた い。  そして、三首の歌を贈り、私の御礼のスピーチとさせていただきたい。  尊くも   涙と汗を     流しつつ   妙法広布に    生き抜く貴女(あなた)よ  新たなる   生命(いのち)の革命     純粋に    不幸を倒さむ     幸福博士と  最高に   貴く強く     美しき   母の心に    敵(かな)うものなし  どうか、お元気で! それぞれの地域の皆さまにも、どうかよろしくお伝えく ださい。本当にありがとう!(大拍手)        (2004・12・3)