新・人間革命  師子吼 四十一 (3217)  山本伸一は、聖教の記者たちが、いわゆる「順世外道」に堕していくことを最も憂慮し  ていた。 「順世外道」とは、世俗的な価値にのみとらわれて、唯物的な快楽を追求する、古代イン ドの哲学の一派である。  すべては、死とともに無になるとし、善業・善果も悪業・悪果も存在しないとして、現  世の享楽を説いたのである。  記者たちも、社会の現象面にのみ目を奪われ、世間に迎合していけば、仏法の生命の法  理を見失い、まさに「順世外道」の過ちを犯しかねない。  そうなれば精神の崩壊であり、人間の進むべき道を示す羅針盤としての、聖教新聞の使  命を果たすことはできない。  伸一は、断じて、そうさせないために、御書の研鑽を訴えたのである。  この日、伸一は、何人かの職員と共に、本社の屋上で懇談した。  屋上からは、間近に創価文化会館が見え、神宮の森が広がっていた。  また、彼方には、富士の雄姿が光り、眼下には、道に沿って家々の屋根が並んでいた。  下を覗き込みながら、伸一は言った。 「家並みは路地裏から見てもわからないが、高いところから見ると、一目瞭然だろう。こ うして上から見下ろしていくような、境涯を確立していく道が仏法なんだよ」  先哲は訴える。 「人間について論ずる者は、高処から望むがごとく地上のことを見渡さなくてはいけない」 (注) 伸一は言葉をついだ。 「揺れ動く社会の波に翻弄されていたのでは、時代の行方を正しく見極め、変革していく ことはできない。しかし、信心の眼を開き、自分の境涯を高めれば、すべてが手に取るよ うにわかる。  それが仏法で説く『出世間』の重要な一つの意義でもある。『出世間』といっても、た  だ、『世間』から隔絶するということではないはずだ。  ともあれ、信心による境涯革命があってこそ、生々流転する、千差万別の世間の事柄に、  柔軟に対処していくことができる。  そのためには、御書を根本にして、信心で立つことだ。皆が自分を磨くことだ……」  こうした伸一の指導を受けて、聖教新聞社では、朝礼などで、御書を研鑽していくこと  になったのである。  引用文献  注 プラトンの言葉とされる。アウレーリウス著『自省録』神谷美恵子訳、岩波書店か  ら。 名字の言 2005.11.28 ▼「この世には四つのタイプの人がいる」と釈尊は言った ▼@自分のためにも他人のためにも奮闘しない人A人のために奮闘するが自分のためには しない人B自分のためには奮闘するが他人のためにはしない人C自分のためにも他人のた めにも奮闘する人――もちろん、最後の自他のために戦う人こそ、「最高にして至高の人 である」(アンベードカル著『ブッダとそのダンマ』山際素男訳) ▼任用試験に合格した女子高等部員。当初は学校も遅刻、休みがちだったが、勉強会への 参加で変わった。毎朝、御本尊に向かい元気に登校。「何を祈っているの?」との母親の 問いに「学校に行けない子のこと」と ▼女子部の先輩の温かさに触れ、深遠な仏法を学ぶ中、努力の大切さや深き使命、そして 何より人への思いやりの心を胸に刻んだ ▼自分なんか……″という卑屈さをはねのけ、自分こそは!″と向上心に燃える姿も 尊い。だが、仏法を求める人は、そこにとどまらない。あの人、この人のために″と他 者に尽くす生き方を志す▼御書には「教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にて候けるぞ」 (1174ページ)と。人格を磨き、人としての最高の「振る舞い」を通し、自他共の幸 福へ奮闘″していきたい。 (杏) 北斗七星 2005.11.28 ◆出資法に違反して超高金利で貸し付けを行うのをヤミ金融という。先日も、そのヤミ金 融業者が逮捕される事件が起きている ◆2年前、あまりにも衝撃的で忘れられない出来事があった。大阪府八尾市で高齢の夫婦 と、妻の兄の3人が線路に座り込み、電車にはねられ死亡した。業者の執拗な取り立てを 苦にした自殺だった ◆妻がヤミ金融から借りたのは3万円。最初に利息分を先取りされ受け取ったのは半額の 1万5000円。ところが業者には毎月10万円以上返済していた。年利に換算した金利 は8000%にもなるという ◆大変な暴利だ。悩んだ妻は警察に相談し、署員が業者に電話してくれた。「完済されて います。勘違いでしょう」との答えに、警察ではそれ以上対応できなかったそうだ。しか し妻はその後も取り立てを受け、ついに死を選んだ ◆人の命は地球よりも重い。わずか3万円を借りただけで死につながるようなことがあっ ていいはずはない。弁護士の宇都宮健児氏は、著書『ヤミ金・サラ金問題と多重債務者の 救済』で、これは日本社会における重大な人権問題の一つだ、と嘆く ◆同弁護士は、返さなくてもよい借金があり、借金整理の方法も任意整理、特定調停、個 人再生手続き、自己破産などいろいろある。一日も早く弁護士や司法書士、被害者の会に 相談して、と訴えている。(和) ☆「わが友に贈る」☆ リーダーは 極悪の本質を 明快に語れ! わが同志を護る 責任感に立て! ―11月28日― ★今週のことば★ 個人指導こそ 発展の原動力。 よく耳を傾けて 誠実な対話を! 温かな激励を!     11月28日