037 浮かれ三亀松    吉川潮著     平成16年12月28日

 忘年会で、知人から面白いよと薦められて読んだ本ですが、推薦どおり
面白い本でした。柳家三亀松という芸人が、昭和40年に66歳でガンで
亡なるまでの人生を描いた本です。
 三亀松は、元加賀町の生まれで、父親が木場の川並ということもあって、
当方の地元が生んだ明治生まれの、一大、道楽芸人と評すべき人物です。

 三味線で「さのさ」や「ドドイツ」、「小唄」、「新内」、などを十八番にしていた
様ですが、当方が12歳頃に亡くなっているので、どんな芸人だったのか実際
には全く記憶がありませんが、父親から聞いたところでは、大変唄がうまい芸
人で良く聞きに行ったと言っていました。

 なにが面白いかと言うと、人生を派手に生き抜いたといった点です。
川並みから始まって、幇間、新内流しを経験して、人気の芸人になったのですが、
稼いだお金もかなりなもののようでしたが、使ったお金も半端でなく、稼ぐ,使う,稼ぐ
使うで、人生を浮かれ遊びまくったという感じがなんともうらやましい限りです。

 当方は、「粋で、いなせで、気っ風が良い」などという言葉に多少のあこがれみたいな
ものを感じるのですが、着物を着て三味線を弾きながら小唄を謡うという場面を想像す
るだけでも、「粋」で乙なものだと思います。小唄でも聴きに行ってみたくなりました。

 この本の中で、「三亀松は人一倍見栄っ張りで、芸人仲間や客の手前、格好をつけたい
だけのために大金を使う。これは、三亀松の主義である。」というくだりがあります。
これは一見無駄遣いに思えますが、あらゆるところに心付けをばら撒いたおかげで、弟子
が得をしたようです。使いに行くと相手先から結構な額の心付けを弟子が相手から頂くこ
とがあったようです。弟子がその使い道を師匠に聞いたところ、半分を姐やと婆やに
やれば、いろいろ身の回りの世話をしてもらえると言われ実行したら、本当に洗濯と部屋の
掃除をしてくれて、おかずがよくなったそうです。お金というものは、こういう使い方は、二重丸
だと思いました。