ア−トの森のこと(2)

 ことしの冬は殊更に寒い冬だった。私の住んでいる湘南鵠沼海岸でも10度以下の気温はザラだったが、霧島は殊の他寒かった。道路が凍ったり雪が降ったりした。海抜800メ−トルの高地にあるア−トの森も寒波に襲われた。

 何より困ったのは下からここまで上ってくる車が上れないことだった。急坂が続いて800メ−トルまで上ってくるのだから完全装備の車でないととても無理だ。一月には降雪と路面凍結の両方が重なって、とうとう入場者ゼロの日があった。

 もっともその代りに春になって一斉に緑が芽吹き、ミヤマキリシマ(つつじ)が満山をいろどり、小鳥がさえずり、小鹿が走り廻るのはすばらしい景観である。その時は一月の入場ゼロの日は、春とともにきれいに忘れ去られるだろう。

 ことしの「ア−トの森」は又いろいろな企画で多くのお客様を招こうと思っている。

 4月から5月にかけては「スケッチコンク−ル」自然の中のア−トを、子供たちの目でたのしく描いて貰うのだ。4月29日から6月8日まで、中川幸夫展がある。生花を用いた前衛芸術で知られる中川さん。

 ア−トの森では、一、青竹を使ったインスタレ−ション 二、鳥の羽がかすかに風で動くインスタレ−ション、三、10メ−トルにもなる巨大な書の制作、四、代表作品の大型写真パネルの四つの分野の作品を展示する。

 中川さんがお元気なら書のパフオ−マンスも予定したい。

 7月18日から8月31日までは「河口洋一郎原始の宇宙」展だ。

 ベネチアでも好評を博した河口さんのコンピュ−タ−グラフイックを中心とした作品をはじめとして、自然界の造型をテ−マにして独創的なイマジネ−ションが展開する。

 期間中には前衛舞踏のパフオ−マンスや携帯電話による情報交換プログラム、といった催しもある。

「今いちばん新しい!」をキャッチフレ−ズにした河口洋一郎展にしたいと思っている。去年の特別展二つの入場者合計5万人を何とか追い越したい。

 2月の末に館に行ってきた。学芸員をはじめとして一人一人が張り切っている。

 県立の野外美術館という条件の中で最大の努力を払おうと思うのだ。努力に結果がついてくるように!心から願わずにはいられない。