中国のレストランに始めて入った時の話
中国語の研究に生涯を費やした倉石武四郎が、若かりし時始めて中国の山東省のあるレストランに入って、昼食を注文しようとした。ところが何をオ−ダ−してよいやら、皆目判らなかった。すると、レストランのボ−イがそばにやって来て、「キ−」とか「ヒヤ」とか言う。
倉石武四郎は何だかわからないので、何でもいいわと思ったので、「キ−」と「ヒヤ」をくれと注文した。とは言ったものの一体何が出て来るやら見当もつかなかった。
一体何が出てくるだろうと思っていたら、皿にもって出てきたのは鶏であった。それでやっと判ったのである。北京語では
ji[チ]は鶏であるが、山東語では「き−」と聞こえたのである。それから「ヒヤ」というのは何かと言うとエビであった。北京語では、エビは
xia[シア]と発音するが、「ヒヤ」と聞こえたのである。ビックリして食べたが、鶏の混じったご飯とエビの入ったご飯が二つの大きな皿、到底食べきれる量ではない。過半は残してレストランを後にした。
倉石武四郎は晩年、それを面白い経験だったと回想している。