漢字の読み方に自信をなくした話

誰でも読み方の違った漢字や、誤字をかいたりするものがいくつかある。高名な人物が間違って読んだりすると、自分ではそれまで、正しいと思っていた読み方に急に自信が持てなくなったりすることがままあるものだ。

ある時芝居の本読みの際に、さる有名な女優が「断食」を「だんしょく」と読んだ。そばでそれを聞いた演出家が、自分の耳を疑った。まさか日本を代表するような女優が、間違った読み方をする筈がない。すると、これまで「だんじき」と覚え、読んでいたのが間違いなのだろうか、と疑心暗鬼になってしまった。

そこで意を決して、恐る恐るその演出家はその女優に「だんじきでなくて、だんしょくと読むのでしょうか。」と尋ねた。すると、その女優はあっけらかんと「あら、それ、だんじきと読むの?」と反対に質問された。

最近のタレントや歌手の想像もつかない誤読は、ごまんとあって驚くに値しないのは言うまでもない。著名な女優だから、まさかこんな誤読はすまいと思っていたのがかえって誤解のもとだった。