沖縄に国立劇場!

 3月10、11、一泊2日で沖縄へ行ってきた。「沖縄に国立劇場を!」という声に、故、小渕恵三氏がこたえて国立劇場建設委員会が発足して以来、ずっと座長をつとめていた。

 何度かの委員会を経て、いよいよ来年の1月には開場を迎えることになった。

 建設委員会であるから、まずは入れ物の話から始まって常設の国立劇場はどうあるべきか、歴史的、伝統的なだし物から積極的な創造舞台に至る迄数多くの問題をつめて行った。開場を1年あとに控えて、現地での委員会だった。すでに建設委員会は終って今、仕事は新しく設立された国立劇場「おきなわ」運営財団が計画をたてているのだ。

 私も評議員の一人としてこれに参加した。

 沖縄の西にある浦添市に劇場は建設された。沖縄の建築材料を使った劇場は一部の仕上げを残してほぼその形を見せた。

 600人のメインホ−ルと200人の小ホ−ルをもつ優雅な劇場である。

 沖縄に古来伝わる「組踊」や民俗的舞踊、沖縄芝居を中心にプログラムは構成されるが、これに本土の能、狂言、舞踊劇、人形芝居が加わり、更にアジア各地に今なお残るすぐれた芸能を紹介しようということにきまった。

 「こけらおとし」は来年の1月18日、それから記念公演が8週続く。多様な多彩な芸能の数数である。

 昭和20年の沖縄戦はこの美しい国土をめちゃくちゃにした。無数の沖縄県民を巻き込んで惨澹たる戦場になった。

 あの時、海をへだてて、鹿児島の枕崎海岸に本土防衛の陣地を構えていた私にとっても胸痛くなる思いである。その想いをなんとか「国立おきなわ劇場」構想に結び付けたいと私も思った。

 3月10、11日の両日は、沖縄の気温は18度前後、あたたかい風が吹いていた。海はコバルト色だった。湘南のあのドス黒い海と比べて、何という明るさ、そして何という暖かさ!

 会議ではトントン拍子に記念行事がきまっていった。委員として参加された沖縄の芸術家たちもとてもうれしそうだった。

 一度こわした風土を元にかえすのはむつかしい。だが、ここに国立劇場を建てることによって昔よりはるかに豊かな沖縄の風土が再構築され、沖縄の人たちも心から喜んでくれるだろう。

 私にはうれしい一日だった。

 夜、自宅へ帰った。妹の顔を見て思い出した。3月10日、昨日は妹の誕生日だった。おめでとう!妹。

 そしてもっともっとおめでとう!沖縄!!