気づかれた話二題

 ペットで最も人気を二分しているのは、犬と猫であろうが近年はワニ、カラス、熊、獰猛なトラやライオンさえ愛玩動物として飼われている。

 某氏は、部屋の中が臭気で充満して、嫌がる人が多いのにもかかわらず、サルをペットとして「家族一員」のように可愛がって来た。

 ある日のこと家族全員で外出しなければならないことになった。サルを家に残して出かけるのは、かわいそうだがやむを得ない。えさを十分与えて、カギを掛けて玄関を出て、五、六歩歩きかけて「待てよ、家族全員で出かけて、サルはどうしているかな」と気になりだした。

「そうだ、こっそり見てこよう」とそっと足をしのばせて、玄関の鍵穴から中を覗くと、むこうでもサルがその鍵穴からこちらを覗いていた。

 この話をしたのは、随筆家で、豊富な話題の持ち主の渋沢秀雄だが、或る時知人とお茶を飲みながら、話を交していた時どうも渋沢秀雄の様子がおかしい。時々ポケットに手を入れてはもぞもぞとしている。それがあまり頻繁なので知人が不思議に思って訊ねた。

「あのウ、、、、失礼ですが、ポケットに手を突っ込んで何をしていらっしゃるんですか」

「いやあ、気がつかれました?お恥かしい。実はあなたのお話が面白いので、ポケットの中の手帳に、こっそりメモを書いていたところです」