山川静夫アナウンサ−

 紅白といえば、最近では山川静夫アナウンサ−が長い。又、新年になってからの番組でも「歌舞伎」をはじめとする古典的なものによく出ている。何しろNHKでは他に真似手のいない邦楽、古典についての大専門家なのだ。

 山川静夫は静岡の出身だ。静岡、浅間神社の神主の家に生まれた。学校は国学院大学に進んだ。

 その在学中から芝居に通った。

 今でも有名なのは、学生時代から中村勘三郎に愛されて、勘三郎の舞台では早替りの時など、見えぬところで山川が勘三郎の声色をつかって、その間に御本人は別人に早替りしたことが何回もあるという。

 山川の声色のうまいのは、単なる物真似ではなくて、例えば「やる気のない時の勘三郎」とか「風邪ひいた梅幸」とか特別の状態の俳優の声色だった。

 我々はその声色の度にひっくりかえって拍手したものだ。

 山川君は停年になってから体をこわした。幸いにたいしたことはなくて今はもうすっかり元に返っている。この人のもっている古典に対する造詣の深さ。人情の機微をわきまえた表現力。彼は昭和9年生れだから、まだまだ若い。好漢、益々磨きをかけてもらいたい。