ファンタジーのページだよ☆

-目次-
本のタイトル作者出版社・その他備考点数
ドラキュラ戦記キム・ニューマン創元推理文庫60点
鳥玄坊 ゼロから零へ明石 散人講談社ノベルズ0点
修羅の跫富樫 倫太郎学研(新書判)85点
鬼を斬る(NEW!)藤木 凛祥伝社文庫90点



ホームへ




































『ドラキュラ戦記』
 ひとことで言えば、よくある仮想戦記物+吸血鬼物である。しかも、続き物なので、この本を読む前に前作「ドラキュラ紀元」を読んでおく必要がある。ちなみに両方ともけっこうブ厚く、しかもかなり退屈なストーリーである。しかし、この小説のすごいところは、20世紀初頭(前作では19世紀末)の(実在・架空を問わず)名士がずらりと出てくる点である。はっきりいって、この量はすごすぎる。ちょっと、パラノイアじみているほどだ。巻末の辞典だけで34ページもとるなよ(笑)。
 ドイツ空軍リヒトホーフェン対イギリス空軍のパイロット、の話なのだが、随所に吸血鬼の陰惨で不健康な「食餌」シーンが盛り込まれ、ただでさえ鬱屈とした19世紀末〜20世紀初頭の雰囲気が、さらに陰気あふれるものに描かれている。菊池ファンとかにはいいかも。












ホームへ  このページの目次へ

『鳥玄坊 ゼロから零へ』
 やはりそうか。京極夏彦が「文京区で一番いい男」と作中で誉める男のモデルはこの作者か。まあ、一作目は(かなり右翼っぽい)問題小説としてそれなりに楽しく読めた。文章力は優れているので、内容はともかく愉しめたのである。だが、それも3冊(しかも巻を追うごとにトンデモ度を増して)続くといいかげん飽きる。私の先輩のK氏は「確信犯だろう」と笑っていたが……。  内容は……まあ、わかる人にはこの一言でわかるだろう。「エヴァ劇場版完結編」のパクリ、である。今までのものを壊してはいおしまい。クトゥルーの昔ならいざ知らず、現代の作家がこれを書いてはあかんだろう。作中で登場人物たちがやけくそのように「ヤッて」いるのもいただけない。なんか、それもあいまって本当にこいつ「エヴァ」パクったんじゃなかろうかと呆れさせられる。最初SFのジャンルに入れようとしたが、SFが穢れると思ったのでやめた。科学的に無茶なことを書くのは、決してSFではない。「神代文字はひらがなのことである」というような主張が一作目でなされていたときは大いに笑わせてもらったものだが、彼と高橋克彦の対談集「日本史鑑定」を見て仰天。この作品はフィクションであるが、ところところにちりばめられたネタについて、実は彼は本気で(つまりノンフィクションとして)主張しているのだろうか?
 まあ、日本殲滅作戦についても、なんか隣国に対する敵愾心をあおっているだけのような気がするし……そもそも、生物兵器を持ち出してきた時点で話が破綻する。「バイオハザード」という言葉を彼は御存知ないらしい。日本全国で子供が数百万人単位で死ぬような程度にウイルス兵器をばら撒いたら、事前に日本を完全封鎖でもしない限り、確実に全世界にそのウイルスが拡散する。彼がそのシナリオを徹底しようと思えば思うほど無理が出てくる……それこそ失笑物の。私はこの作戦を、かの「サラマンダー殲滅」にちなんで「ゲリマンダー殲滅」と呼びたい(笑)。そもそも、この作品世界で「鳥玄坊一派」ほど力のある勢力はいないのだから、そもそもがこの作戦自体が無効だと思うのだが。
 評価は……みごと0点である。最後に来てすばらしいハイブローの三振を見せてくれた彼に敬意を表して、おもいっきり気持ちのいい点数をつけてみた。かの「三本の矢」ですら私はまともに評価点をつけてみたのだが。うん。逆の意味で読む価値はあるかもしれない。






ホームへ  このページの目次へ

『修羅の跫』
 ん〜とねえ、陰陽師対「白面の者」の戦い(笑)。やべ、ネタバレっぽいな、今の台詞。忘れてください(笑)。話の前半は魔術の入る隙間もなく、純粋に政治的に展開する。もともとが雑誌「歴史群像」の小説部門投稿作品である。そのへんのむちゃくちゃなリアルさに支えられて、後半の伝奇パートに突入する。私としては、郷土足柄山の金太郎・坂田金時の猪突ぶりが大好きである。
 但し! ここで忠告。この平安末期、という時代設定は、高校時代、日本史を選択した者にとって、最大の関所であるはずである。大抵の人間は、鎌倉時代を見ることなく、あまりに瑣末な「日本史」という授業に倦んでいた頃だと思う。……そのころの記憶が蘇っても私は感知しない(笑)。
 その続編というか前編、「陰陽道<壱><弐>」に行くと、その歴史的リアリズム志向はぐっと薄れる。伝奇趣向が前面に出てくるのである。おまけに……なんだその主人公・杏奈の君という名前は(笑)。相手が羽賀の蔵人だったらもっと笑ったのだが(笑)。






ホームへ  このページの目次へ

『鬼を斬る』
 藤木作品は当たりのときは物凄く面白いのだが、ハズレのときは物凄くつまらない。冒頭でどきどきしたが(笑)、予想を大幅に良いほうに裏切ってくれて、文字通り佳作、佳い作品に仕上がっている。
 言うなれば日本版『バスカヴィル家の犬』であろうか。伝承と近代化のはざまで揺れつ戻りつする寒村の姿を、酷薄なまでにえぐりだしている。濡れ場がないのもよい。この作者、ものすごく濡れ場が下手なのである(笑)。
 ついでに言うと、朱雀十五の曽祖父も出ている。読後に扉を読み返すと、しっかり書いてあった(笑)。ファンには嬉しいかもしれない……(笑)。







ホームへ  このページの目次へ