編集者

■仕事の内容

 雑誌や本を作る仕事。といっても、実際に本の形にするのは「製本業」や「印刷業」の人の仕事で、編集者は印刷する中身(内容)を作ります。どんな内容をどんな風に表現するのか、どんな人に読んでもらうのか、いつ頃出版するのか、本の型(A4とかB6とか)やページ数なども決め、次いで、著者を決めて交渉したり、取材者、カメラマン、誌面をデザインするデザイナーなどのスタッフを集めたりします。内容とスタッフが定まったら、あとは、発売日に合わせて印刷所と決めたスケジュールや予算に沿うようにすすめることと、より良い内容にするために時間とお金をかけたい気持ちとのせめぎ合いの中で、あらゆる場面で「調整」を行うのが主な仕事になります。実際には、著者のお尻をたたいたり、必要な資料を集めたり、取材のための許可を取ったり各種の手配をしたり、雑用係と言えなくもありません。もちろん、企画によっては自分で取材をしたり、文章を書く場合もあります。

■なるには(資格や適正)

適性:編集者の仕事は、さまざまな「才能」を運用して人々を惹きつける本を作ること。最大の適性は、他人の才能や世の中の事象に人並み以上の好奇心を持てることだと思います。あとは、対象にのめり込むだけでなく客観的な目を養うこと、たくさんの表現(本や雑誌、映画、Webサイト、絵画、何でも)にどっぷり触れること、などが思い浮かびます。

なるには:出版社や編集プロダクションに入るのが一番の近道でしょう。大手出版社は大卒以上が条件で応募者も多いため狭き門ですが、会社によっては編集希望だったのに営業や販売に回されたというケースもあるようです。中小の出版社は非常にたくさんあり、また、他業種(IT業、旅行業、不動産業、イベント業、コンサルティング業など)が出版部を持っていることもあります。編集プロダクションはおおむね小・零細企業であり、身分は不安定ですが、その分入り込みやすく、すぐに現場に出られ、仕事を任される利点があります。エディタースクールでは編集のテクニックを教えてくれますが、本当に役立つテクニックは現場で覚えるしかないものがほとんど。あまり意味はないでしょう。ただ、スクールの卒業生を積極的に雇用する編集プロダクションや出版社もあるようなので、就職チャンスの拡大には役立ちます。

■その他

[体験談]
 さまざまな表現手段の中で「活字」をもっとも信じていたので、活字で表現をする仕事を選ぼうと思いました。文章を書くのはそれほど好きでも得意でもなかったので、小説家などは思い浮かびませんでした。両親はサラリーマンと専業主婦でしたが、市民運動に関わったり、政治や社会的な話題で盛り上がったりするのが好きな人たちで、自然と私も社会全般のさまざまな事象に興味を持つようになり、編集者やジャーナリストという職業を、高校生くらいからぼんやり意識するようになりました。大学を留年し成績も悪かった私は、大手・中小いずれの出版社にも入れず、新聞広告でみつけた編集プロダクションに入りました。幸い、社長が「理念」を持った人で、表現とは何か、何のために本を作るのか、といった大事なことも考えつつ編集の仕事を覚えていくことができました。この最初の「仕事との出会い方」は、その後の自分と仕事のいい関係のために非常に重要だったと思います。出産や育児の修羅場も越えて仕事を続けてこられたのは、この「いい関係」のおかげも大きいと思えるからです。

[アドバイス]
 いま、紙の本は徐々に淘汰の時代に向かっている、などと言われます。Web配信の小説がヒットするなど、数年前までは夢にしか思えなかったことが現実になりつつあり、本や雑誌の編集者の顔色はどこか冴えません。でも、仮に紙の代わりにモニターで本や雑誌を読む時代になろうと、「中身」を企画し、「才能」をアレンジする人間は必要です。編集は、人や物事を「集めて編む」仕事。紙でもモニターでもかまわない、編み目模様のすばらしさで人々を惹きつける「編集者」をめざしてください。たくさんの表現に触れ、自分の身の回りのいろいろなことに興味を持って、観察し、考え、調べて、そこからまた新たな自分自身を発見する過程を、たくさん経験してください。

(解説協力:黄金虫さん)

 

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