建築士

■仕事の内容

 建物は日常的にそこで生活をする家族が生活する住宅や不特定多数の人が利用するデパートや駅、空港、病院など、更に生徒や学生が勉学に励む学校など目的によって様々な建築物があります。いずれも人間が生活する為に必要な器が建築物です。その為には、人間が安心して生活でき、快適で安全な物でなくてはなりません。その為に建築物の設計や施工にあたる人に建設大臣又は知事が許可を与えた資格を建築士と呼びます。建築士の他に建築に関わる資格には、施工士や設備士、消防設備士、インテリアプランナー等があります。その中で建築士は建築設計と施工にとって最も重要な資格といえます。

■なるには(資格や適正)

 建築士には木造建築士、2級建築士、1級建築士の三つの資格があります。設計業務(建築相談、設計図書の作成、設計書の申請、現場の監理など)を行う場合、その規模や用途によって設計業務がおこなえる範囲を法律(建築基準法、建築士法)で定めています。木造建築士の場合は主に住宅など柱、梁と云った構造が木造の場合に限定されていますが、1級又は2級建築士は建物用途と構造に限定がありません。
ある一定の規模以上(高さが13m以上又は面積が500u以上の学校、病院、デパート、劇場等)が1級建築士でないと設計業務が出来ないように定められています。
一級建築士の資格をとるには、二つの道がありますがいずれも国家試験に合格する必要があります。一つは大学の建築学科を卒業して2年間の建築関係の経験をした人が受験出来ます。もう一つの方法は2級建築士の資格を得てから2年間の経験を経た人が同じく受験出来ます。工業高校の建築科卒業の場合は2級建築士の資格を得てから受験する事になります。建築関連の仕事は進路によって意匠系(デザイン)と技術系(構造や設備)に分かれますので早い時期に準備をすることが大切です。

■私の進路選択,今の職業について

 建築家はいろいろな場所と場面で活躍していますが、私は昭和40年代の高度成長期時代に首都圏の住宅不足が深刻になり始めた頃、社会人に成りましたので、鉄道沿線の地域開発を主な事業とするデベロッパーで商業施設や住宅、幼稚園等の計画と設計をしてきました。新しい街が出来て、都心から引っ越して来た人々が、そこを子供達の故郷にすべく地域活動を重ねます。街らしくなるのに物理的には早いのですが、コミュニテイを形成するには、10年以上かかります。そして20年すると世代交代が始まります。親の世代は私のように地方出身の人が居ますので、そこには全国各地の文化が少しずつ入り込みます。首都圏の場合は、東京より北の出身の人が多い為にその影響を少なからず受けます。新しい街がどんどん出来、多くの人々が活発な活動をする反面、地方はどんどん過疎化が進んで来ましたが、これは決して誉められた現象ではありません。地方での生活の素晴らしさを、そして自然と温かい真心を持った人々がたくさん居ることを都会に向けて情報発信する事が大切だと考えます。
 建築家の仕事は、建物や都市を創るだけではありません。造った街や建物が使われる人達に喜んでもらっているのか、安全であるのか、時代が替わっても役に立つか、更に使い方も最初はお知らせする必要があります。良い街や良い建物は歴史を重ね長い年月を生き続けます。それはその街に住んでる人々が、自分の街を、建物をそして自然を誇りに思う強い気持ちがあるからです。21世紀の大きな課題は、人間が自然と融合して、いつまでも生き残る街造りだと考えられます。

解説:樋口清剛さん

■質問と回答

Q 1級建築士になってよかったと思ったことがあれば教えてください。もし、よかったら収入を教えてください。また,収入は安定しているのですか。

A □一級建築士になって良かった事進路学習で建築士の職業について調査しているようですが、私の仕事を通した経験を主体にお応えします。まず私の仕事ですが、私鉄沿線の宅地開発や観光地開発、更に駅前の開発を通じて商業施設や宿泊・レジャー施設、マンションや戸建住宅等の建設計画を進めてきました。それらの仕事を通じて自ら建築の計画、設計・施工をする場合もありますが多くは建築設計事務所と建築施工会社と共同又は協力で街を造ったり施設を建設していきます。分かり易く言えば山間部だったり海岸だったところを宅地開発して、多くの人が活用できるような住居や商業施設、観光施設を建設します。一人や一社ではこの仕事を進めていけませんから建築の技術者集団の英知を結集して進める事になります。この様な仕事の進め方をしている人の事を建築士の中でも建築プロデューサーとかコンストラクションマネージャーと呼んでいます。施設の計画から完成するまでに短いものでも2年、長期になると街がある程度の完成をみるまでに最低でも7年くらいはかかります。ご質問の建築士になって良かった事は、多くの人に巡り会えることと、その人達が持ち合わせている考え方や技術に触れることにつきます。その考え方や技術は様々ですが歴史を積み重ねたものもあったり、全くの新しい考えと先端の技術のものもあります。建物は人が使用する全ての物を作ったり収容する器でもあり、その為に他の職業では到底見ることも出来ないような物に触れる事もこの仕事をしていて良かった事です。
 □一級建築士の収入
 一級建築士の場合、その職場はかなり広範囲に及んでますから一概にいえません。一級建築士の資格を有する建築に関連した職業にある人は、その知識や技術力さらに感性が求められるますので、おのずから建物のデザインや性能、更に限られたコストの中でより優れた建築が出来る人ほど収入は多くなります。収入は個人経営型の建築事務所の場合と会社員の場合でも違ってきます。これまでは会社員の場合は安定した収入が得られていましたが、これからの時代は個人の能力によって個人差が出てきます。建築家やデザイナーの場合はその差が大きい傾向にあります。

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