鉱物についての書籍紹介〜「人生を豊かにする 鉱物の博物誌」



序文

 “鉱物学”を学んだ者にとって結晶系・構造・軸率・面記号などと聞くと、異口同音に難しかったなあという印象を語る人が多い。筆者もその一人であるが、一方では自然の美や造形そのものに感激を覚える鉱物の愛好家や研究者も多い。ところが巷で出版されている『○○鉱物学』となると、どうも一歩足を踏み込めないし、『○○宝石の話』となると物足りないと思う読者も多いようである。

 本書の出版目的である“鉱物と人との関わり”を主題として種々の話題を集め、一人でも多くの人が鉱物に親しめる著作物を意図したものである。筆者はこれまでに考古学の人から、発掘物の石材について度々鑑定を依頼された。中でもヒスイ・硬玉・軟玉・オパール・メノウ・玉髄・碧玉等となると、よほど頭の中で整理しておかないと困難を極める。特に発裾物ぱ“傷つけない”“薬品は使えない”という条件下の肉眼鑑定であるから。今は亡き益富者之助博士すら、第1回目の正倉院薬物鑑定では2点間違ったと語っていた。

そこで考古学をはじめ専門外の読者でも、ある程度のヒントと興味を抱くような内容とした。
 本文の6割以上は『フォトぶらり』(ミユキフォト)という季刊誌(毎回1万邦発行)に6年余り連載し、好評を得たものである。その間、故益富者之助博士・故桜井欽一博士の両氏には度々激励の言葉をいただき、今日に至った。

 読者の皆様が本書によって少しでも日々の生活や人生に潤いを感じられたら、望外の喜びとするものである。

1996年9月

磯部 克


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