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一歌 もとむれど 得がたきは 色になんありける
さりとては 楊家のこそ 妙なるものぞかし
ニ歌 雲のびんずら 花の顔 げに海棠の眠りや
大君の 離れもやらで 眺めあかしぬ
三歌 翠の華の 行きつ戻りつ如何にせむ
今日九重に 引き換えて 旅寝の空の秋風
四歌 霓裳羽衣の仙楽も 馬嵬の夕べに
蹄の塵を吹く 風の音のみ残る悲しさ
五歌 西の宮 南の園は 秋草の露繁く
おつる木の葉のきざはしに 積もれども たれか掃はむ
六歌 鴛鴦の瓦は 霜の花にほふらし
翡翠の衾独り着て などか夢を結ばむ
筝曲復興の精神に基づき、古い形式の中にも新鮮な息吹を吹き込んだ近代的な作品であ
る。前奏の部分は、段物の形式をふみ、六段からなっている。歌詞は白楽天の長恨歌を
元に作られたもので組歌の形式で作曲されている。全体に秋風調子と呼ばれる独特の調
絃法が使われ、八橋検校の筝曲創世当初の組歌に残る品格の高さをよみがえらせ、洗練
された手法と感性とが織りあって、傑出した作品となっている。
この曲も、柳井の最も愛する曲の一つである。古曲から、現代曲までを演奏し、また、
自らも曲作りを続けつつ、新境地にかけた光崎検校のこの曲にいかなる思いを載せるで
あろうか。
(解説 守山 偕子) |