古ざらし 深草検校作曲
2000年12月1日二人会
槙の鳥には さらす麻布 賤が仕業や 宇治川の 波か雪かと白妙に いざ立ち出でて エー布さらそう
かささぎの 渡せる橋の霜よりも 晒せる布に白み在り候 のうのう山が見え候 朝日山に霞みたなびく
景色は たとえ駿河の富士はものかは 富士はものかは
見渡せば 見渡せば 伏見 竹田に淀 鳥羽も いずれ劣らぬ名所かな いずれ劣らぬ名所かな
立波は 立波は 瀬々の網代にさへられて 流るる水を堰き止めよ 流るる水を堰き止めよ
所からとてな 所からとてな 布を手毎に 槙の里人打ち連れて 戻ろうやれ 賤が家へ

 「さらし」という曲名をお聞きになって、邦楽に関心のある方ならきっと思い出される曲がお有りと思います。山田流では「さらし」「新ざらし」、中能島欣一師の「さらし幻想曲」、「さらしに寄せる合奏曲」。生田流では、三絃の「早ざらし」宮城道雄師の「さらし風手事」、これらの曲の中には、この「古ざらしの」フレーズが、余す所なく、また巧みに取り入れられています。他に曲の一部に使われている曲として「名所土産」「玉川」、長唄の「越後獅子」、「晒女」等々・・・・・・・・・。この曲を元にして技倆の限りを尽くした、独特の編曲をした物が色々出てきたのにつけてもっとも古いこの曲を「古ざらし」と言っております。
 元禄時代の深草剣校の作曲となっています。地唄の中でも、手事物の原型として、貴重な曲の一つですが、本来の地唄ではなぜかあまり弾く人がいなくなりました。昔の人にこんなに好まれた節を持つこの曲を、もう少し皆様に知っていただきたく思い、本日の会に演奏させていただくことにいたしました。本来は、地を入れて演奏いたしますが、本日は一人弾きのため、少し寂しいかもしれませんが、この曲の持つ節の面白さをお分かり頂けたら、と願っております。
(芦垣美穂)