黒髪 作曲 八橋検校
2001年12月7日二人会
黒髪の、むすばれたる思いをば(合)とけてねた夜の枕こそ、ひとり寝る夜のあだまくら(合)
袖はかたしく、つまじゃと云うて(合)愚痴な女子の心としらで、しんと更けたる鐘の声(合)
ゆうべの夢の今調さめて、ゆかし懐かしやるせなや、積ると知らで積る白雪。

 十八世紀中頃からは、芝居の流行とともに、芝居歌や、はやり歌などとして、現在の地唄端唄ものが形
作られていきました。湖出市十郎は、江戸の長唄の唄方の名手として、独吟を得意としていました。
1779年大阪に出向き、1784年には「黒髪」を作曲、初演し、上方の劇場音楽に江戸長唄の影響をおとしまし
た。この後、大阪では文人の作詞活動が盛んになるとともに、峰崎勾当らの名作曲家が出て、端唄物の芸
術性は高められていったのです。
 私の三絃における思いの原点がここにあります。黒髪は、地唄の入門曲として扱われてはいますが、
三絃の素朴な旋律と、感情の盛り上がりを堪える歌は、音楽の最も基本的な部分を捉らえていて、私も幾
度と無く演奏してまいりました。昔、地域やジャンルを越えて作り上げられた「黒髪」は、今、過去と現在
を通り抜けて生きつづけていく名曲の一つであると思います。               (柳井美加奈)

黒髪 作曲 八橋検校
2003年6月8日あづみ野コンサート
 黒髪のむすぼれたる思ひをば、とけて寝た夜の枕こそ、ひとり寝る夜は仇枕。
袖はかたしく、つまじゃといふて、愚痴なをなごの心は知らず、しんと更けたる鐘の声。
ゆうべの夢の今朝さめて、ゆかしなつかしやるせなや。積る知らで、積る白雪。