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      黒髪の、むすばれたる思いをば(合)とけてねた夜の枕こそ、ひとり寝る夜のあだまくら(合) 
            袖はかたしく、つまじゃと云うて(合)愚痴な女子の心としらで、しんと更けたる鐘の声(合) 
            ゆうべの夢の今調さめて、ゆかし懐かしやるせなや、積ると知らで積る白雪。 
             
             十八世紀中頃からは、芝居の流行とともに、芝居歌や、はやり歌などとして、現在の地唄端唄ものが形 
            作られていきました。湖出市十郎は、江戸の長唄の唄方の名手として、独吟を得意としていました。 
            1779年大阪に出向き、1784年には「黒髪」を作曲、初演し、上方の劇場音楽に江戸長唄の影響をおとしまし 
            た。この後、大阪では文人の作詞活動が盛んになるとともに、峰崎勾当らの名作曲家が出て、端唄物の芸 
            術性は高められていったのです。 
             私の三絃における思いの原点がここにあります。黒髪は、地唄の入門曲として扱われてはいますが、 
            三絃の素朴な旋律と、感情の盛り上がりを堪える歌は、音楽の最も基本的な部分を捉らえていて、私も幾 
            度と無く演奏してまいりました。昔、地域やジャンルを越えて作り上げられた「黒髪」は、今、過去と現在 
            を通り抜けて生きつづけていく名曲の一つであると思います。               (柳井美加奈) |