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      18世紀後半から19世紀中頃にかけて、地唄三弦と筝の組み合わせで、いわゆる地唄手 
      事物が、充実期をむかえる。「残月」はこの中で名曲の一つに数えられる大曲である。 
       峰崎勾当の門下の松屋某の息女が夭折したのを追善した曲とされ、曲題は、その法名 
      (残月信女)にちなんだものといわれている。前歌は手数も少なく、肉親を失った気 
      持ちを、淡々とした飾付けでうたっている。手事五段の妙を尽くした各々の手法に、 
      残された者の心理の起伏を織り込んだように思われる。 
       本日は筝と尺八のみの合奏である。 
       
      (前弾)磯辺の松に葉隠れて (合)沖の方へと入る月の、光や夢の世を早う (合) 
      覚めて真如の明らけき (合)月の都に住むやらん (手事五段) 
      今は伝てだにおぼろ夜の (合)月日ばかりや巡り来て |