日本共産党第20回大会の4つの決定

(丸山眞男批判部分)

 〔目次〕

   1、中央委員会の報告…志位書記局長

   2、綱領一部改訂の報告…不破委員長

   (注)、不破氏による『論点すりかえ』の詭弁……ヨーロッパ・レジスタンスとの比較

   3、第20回大会決議

   4、一部改訂の綱領          健一MENUに戻る

 

1、中央委員会の報告……中央委員会書記局長 志位和夫

三、3)、歴史にたいする前衛党の責任とは何か…(1)

 討論のなかでは、決議案が、丸山眞男氏の日本共産党論とその理論的基礎への批判の意義についてのべていることについて、「どうして丸山氏の日本共産党論批判を重視するのか」という疑問もだされました。

 丸山氏の日本共産党論とは、日本共産党が侵略戦争に反対してたたかったことは事実だが、「侵略戦争の防止に失敗した」という点において、「ファシズムとのたたかいに負けた」のであって、日本共産党にも「戦争責任」がある、「結果責任」があるというものです。わが党が、これをあらためて重視したのは、いまだに学界に大きな影響をもった研究者からの、わが党にたいする不当な批判への反撃ということにとどまらない、大きな意義があります。それは、こうした議論をめぐって、前衛党が歴史にどういう根本姿勢でたちむかうかという、大きな歴史観が問われているからであります。

 歴史にたいする前衛党の責任とは何か。それは、ときどきの歴史が提起した諸問題に正面からたちむかい、社会進歩の促進のために、真理をかかげてたたかうことであります。丸山氏は、前衛党の「責任」論ということを提起したわけですが、われわれからの責任論の回答は、ここにあります。その真理は、もちろん実践によって検証されますが、人間が真理を認識できること、真理への無限の接近が可能であるという確信のうえに、われわれの事業は立脚しています。

 真理は、さまざまな客観的な政治的力関係のもとで、そのときどきの歴史的局面・断面では、実らないこともあります。方針さえ正しければ、どんな場合でもその方針はかならず実現するはずだとするのは幼稚な観念論ですし、それなら革命運動ばひどく楽です(笑い)。しかしその局面ではたとえ実らなくても、真理はかならず未来に生きる。真理は未来においては、いろいろなジグザグはあったとしてもかならず多数派になる。それをかかげて、できるかぎり賢明に、そして不屈にたたかうことこそ、歴史にたいするわれわれ前衛党の責任があるのであります。

 戦前のわが党の不屈のたたかいの意義も、この見地からとらえる必要があります。歴史のある一断面・一局面だけをみれば、絶対主義的天皇制権力の野蛮な弾圧によって、党の中央委員会の統一的機能が破壊されたことは事実です。しかし、獄中や獄外での党の旗をまもっての不屈の活動は継続され、やがて戦後のたたかいにそれは豊かな形で生かされることになりました。

 戦後、日本の新しい進路をどう選ぶかが問われたときに、他の政党がおしなべて天皇制中心の「国体護持」をかかげるなかで、主権在民をはじめとする民主的諸原理を正面から主張しえた政党は日本共産党だけでした。戦前の不屈の戦いがあったからこそ、わが党はこの主張を堂々と展開できたのであります。

 そして、その主張の多くは、日本国憲法の平和的・民主的原則に、刻みこまれることになりました。もしも戦前の日本共産党のたたかいがなかったならば、それは日本国民が侵略戦争からの教訓を自主的にくみだすことを、不可能としたでしょう。日本民族の良心の灯をかかげつづけることで、民族全体を大きく救ったのが、日本共産党のたたかいでした。歴史を局視的でない長い視野でみれば、軍国主義とファシズムにたいする勝利者がだれであったかは、あまりにも明りょうではないでしょうか。(拍手

 わが党が、丸山氏の日本共産党論について、歴史のこうした生きた弁証法をみることのできない局視的な観念論であり、傍観者の立場からの議論であると批判してきたことは、まったく正当であったと思います。

以上

 
2、日本共産党綱領の一部改訂についての報告 幹部会委員長不破哲三

二、日本共産党の戦前の闘争の歴史的意義(第一章)

  「侵略戦争を阻止しえなかったから…」は反動的俗論

 いま問題になっている「侵略戦争を阻止しえなかったから、日本共産党にも戦争責任がある」といった議論は、その提案者がだれであれ、学問の名に値しない反動的俗論であります。これをヨーロッパにおきかえてみたら、ことの筋道は明白でしょう。ヒトラー・ドイツは、最終的には連合軍の軍事的勝利によって打倒されました。しかし、戦争で決着がつく以前にファシズムを打倒できなかったからといって、ヨーロッパでレジスタンスの戦争責任を問題にする論者がいるとしたら、民主主義とファシズムにたいするその論者の立場そのものが問題にされ、非難されるでしょう。ところが日本では、この種の反動的俗論が、「政治学」的なかざりたてをもって一部にもてはやされているのであります。そのこと自体が日本の後進性のあらわれであること、そしてこういう論調が、自分では言いたくても言えない反動的支配層の願望にかなっているということを、私たちは、直視する必要があります。(拍手

 綱領の一部改定案は、そういう問題にも正面からこたえたものであります。

以上

(注)、不破氏による『論点すりかえ』の詭弁……ヨーロッパのレジスタンスとの比較

 水田洋名古屋大学名誉教授は『象』26号、「編集のあとで」において、『不破報告は、「レジスタンスの戦争責任」に論点をすりかえている』と批判しています。

 ここには、二種類の論点すりかえがあります。

 第一は、侵略戦争を起こす国の側での戦争阻止運動の戦争責任と、侵略された国の側での反侵略・抵抗運動の戦争責任とを並べて、前者の戦争責任論を後者のそれに『すりかえ』て、免責を図ろうとする論理です。

 第二は、侵略国における前衛党の戦争責任と、被侵略国における市民的な対独抵抗運動の戦争責任とを並べて、政党の政治責任を大衆運動のそれに『すりかえ』て、自己の免責を証明しようとする論理です。

 ヨーロッパのレジスタンスは、侵略された国の側での運動です。しかも政党ではなく、大衆的反ナチス抵抗運動です。それと同質なものとして、比較できるのは、中国における抗日統一戦線運動、朝鮮での抗日パルチザン活動、ベトナムの反仏・反日ゲリラ闘争などでしょう。これらの反侵略・抵抗運動が、裏切り、内通行為を除いて、その『戦争責任』を問われることはありえません。

 それに対して、1922年結成から1935年コミンテルン日本支部壊滅に至る13年間の日本支部の活動は、侵略戦争を起こす側の国での戦争阻止運動です。これと比較しうるのは、ナチスの侵略戦争を阻止しようと活動した、コミンテルン・ドイツ支部としてのドイツ共産党による運動しかありません。侵略国の側だからこそ、天皇・軍部・財閥等の戦争推進者の戦争責任は絶対的なものとして、同時にその国民および各階層、各政党の『戦争責任』『加害責任』の有無や軽重も問われるのです。

 もし、あえてヨーロッパを持ち出すとすれば、レジスタンスという市民運動との比較ではなく、被侵略国の前衛党としてのコミンテルン・フランス支部の戦争責任とを比較すべきです。

 その中で、科学的真理の、日本における唯一の認識者、体現者であると自己規定し、天皇制の対極にあった前衛党は、自国の侵略戦争に一貫して反対していたが故に、政党の政治責任としての戦争責任を『免責される』のか、コミンテルン日本支部は日本国内における唯一の『免責団体』になるのか、というテーマを丸山氏は突き付けたのです。戦争に一貫して反対したということが、上記の自己規定をし、前衛党を名乗る政党にとっての『絶対的免責事由』になるのかという疑問を、丸山氏は投げかけたのです。

 このようにまるで性質の異なった、比較できようもない二つの運動を、比較して見せて自己主張の論証とするレトリックは、水田氏の言うように『論点すりかえ』の詭弁術そのものです。しかも二種類の詭弁を併用するというテクニックを用いています。

 宮本氏が,丸山氏の論旨を『共産党戦犯論』と歪曲・誇張して、それに批判を加えたという論争のやり方と並んで、不破氏の『論点すりかえ』の技法も、共産党が論争において多用する詭弁術です。しかも重要なことは、この詭弁が第20回大会という最高決議機関において承認、決定されたということです。そして36万党員が、この『論点すりかえ』を何の異論も出さずに受け入れたことです。

 

3、日本共産党第20回大会決議

 (18)、歴史の法則と人間の主体的たたかい

 わが党は、この間の重要なイデオロギー活動として、丸山眞男氏の日本共産党論とその理論的基礎への批判をおこなってきた。丸山氏の日本共産党論は、侵略戦争に反対してたたかった日本共産党にも戦争責任がある、さらには絶対主義的天皇制の精神構造が日本共産党にも「転移」しているなどというものであるが、こうした議論の根本には、だれが真理の旗をかかげて歴史にたちむかったか、それが歴史によってどう検証されたかをまじめにみようとせず、冷笑をもってとらえようとする観念論的・傍観者的歴史観がある。

 歴史の進歩は、大局的には正義と道理にたつものが、さまざまなジグザグをへながらも、最後には勝利することを教えている。

以上

 

4、日本共産党綱領 (一九九四年七月二十三日一部改訂) (一)

  また、第二次大戦全体のこうした結末そのものが、侵略戦争を阻止しえなかったから日本共産党にも戦争責任があるとするたぐいの攻撃の、根拠のなさをあきらかにしている。

以上

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