やっぱり馬も好き


第4話
追悼ライスシャワー

宝塚記念、その日僕は、東京競馬場のターフビジョンで
悲しい場面を目撃することになった。
その出来事は、京都競馬場でのことであったが、
府中の曇天にもファンの悲鳴がどよめきとなって響いた。

“ライスシャワー”この馬のことをいつの間に好きになっていたのだろう。

ミホノブルボンが無敗で3冠に挑んだH4年の菊花賞、
ライスは逃げるブルボンをかわし、3冠を阻んだ。
まさに憎まれ役である。
相手が人気馬で、強ければ強いほど燃える、
そして、ライバルの記録がかかったレースを無惨にも打ち砕く、
それがライスだった。

メジロマックイーンが3年連続制覇をかけたH5年春の天皇賞、
やはり直線でマックを抜き去り、ライスはまたまた嫌われ者になった。
何を隠そう、僕もライスが憎かった。

しかし、その後ライスは、勝ちから見放されてしまう。
あれほど強い相手には燃えたライスが、
マークする相手のいないレースでは全く勝てないのである。
まるで目標を失ったかのように・・・。
そのうちライバルたちは、次々と故障などで引退。
ブルボン・マックらはターフを去り、
ライス自身競走馬としての力のピークは過ぎていった。

7才でむかえた今年の春の天皇賞、一昨年マックを敗ったこのレース。
今までのようにマークする相手はいない。
5才の春以来どうしても勝てないライス、
僕はいつの間にかブルボン・マックの分まで彼を応援するようになっていた。
もちろんライスの馬券を握りしめて。

ライスは、4コーナー手前で先頭に立ち、
今までになかった、自ら勝ちにいく積極的なレースを見せた。
そして、後続場をハナ差振り切り、ゴールを駆け抜けた。
感激に目頭が熱くなるような、ぎりぎりの力をふりしぼっての復活であった。
僕には、引退したブルボン・マックが遠く北海道から、
「こんな奴らに負けるな、お前は俺たちに勝ったんだぞ!」と、
応援しているかのように思えた。

そして、人気ファン投票で1位に選ばれた“宝塚記念”、
何の因果か、菊花賞・天皇賞と同じ京都競馬場で悲劇は起こった。

430kgそこそこの小さな体で、3000m以上のGTを3つも勝ったライス。
彼は自分が人気になることが苦手だった。
人気になると勝てなかった。
評論家に「あの馬はもともとそんなに強くない」と云われるまでに負け続けた彼。
でも、そんなライスだから好きになったのかも知れない。

馬は知る由もないことだが・・・。


このエッセイは、みみきち特派員がH7年にある紙面に載せていただいた時のものを、
そのまま掲載してあります。


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