1990年にCDとして再発された折りの小川隆夫さんのライナーによれば、 オリジナルアルバムの発売当時、山下さんが「チュニジアの夜」や「枯葉」を演奏する というのは晴天の霹靂であり、新境地か軟弱化かという物議をかもしたそうな。
軟弱化というのはあんまりな。今の山下さんの活躍を思えば、1つの転機で あったのだと分かるわけですが、ようするに時代が変わったのですね。 何しろ、初期の頃は山下さんにはピアノを貸さない、というホールも多かった というのに、今や各地の公立ホールがこぞって山下さんを招聘し、その上カザルス ホールでソロコンサートが開かれるご時世です。
で、現在のファンであるミミズの耳からしてみると、大好きな山下さんの 「チュニジア」や「枯葉」の初期の形が聞けるのが嬉しい。「枯葉」なんて 一見フリーそのものの演奏ですが、所々かすかに枯葉の匂いがして、あ、これはちゃんと 計算しているな、と思えるわけです。面白いですよ。「バンスリカーナ」や「キアズマ」 は山下洋輔トリオ25周年を記念して録音された、 THE WAYS OF TIME にも収録されていて、 聞き比べるのもまた一興。
あともう一つ。Ko's Day Dream というタイトルが興味深いですね。 コウと言えば、山下さんの一人っ子康輔さんのことに違いないんですが、そういえば この曲についてのコメントは読んだことがないです。
(1997年5月6日)